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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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43 帰宅



首からぶら下がった冒険者証をしばらく眺めていたが、ふと我に返る。

報告するべく急いでリンの方へ向かった。


「私、冒険者なった。皆とおなじだね」


そう伝えると、リンはふふっと笑いながら頷いてくれた。


「ちゃんと見てたよ。おめでとう。お祝いしよっか。」


お祝いの言葉とリンの笑顔で、自分が随分浮かれてしまっていた事に気づく。

気恥ずかしさで、すぐに話題を変えた。


「そ、それより明日。クロが私たちの瞳が必要って言ってたけど、何するんだろう」


「…うん。魔法関連であることは間違いない。あとは多分、また戦う。今度はやられない。」


リンは胸の前で拳を握る。戦う準備は万全だとばかりにファイティングポーズをとる彼女のお腹から、くぅ。と小さな音が聞こえた。


「そういえば、何も食べてない…あ、串焼き行こう?」


リンの提案に乗って外へ出た。説明会で随分と長居したみたいだ。赤い日が街の向こう側に落ちかけていた。


「…急ごう。」


そう言って私の手を掴み宙に浮く。私はすぐに彼女の魔力と同期した。慣れたものだ。


「大丈夫そう?」


リンに聞かれて自分を視る。

魔力は完全にもとに戻っていた。身体にも、不調はないようだ。問題ないよと告げてそのまま、空飛ぶ買い出しを決行した。


***

「きたく。」


 お互いに、戦利品である串焼きを腕いっぱいに抱えて着陸する。

もう日は落ちて、あたりはうっすらと暗くなってきていた。

店じまいの直前だったからか、串焼き屋の店主は気前が良かった。買った分以外の残りも炙り直して無料でくれた。

また絶対、お礼に立ち寄ろうと思う。


串焼き一本袋から取り出して頬張る。肉汁が溢れて、ソースと絡み合う。

美味しい。

スパイスが効いているのか、すこしピリッとした刺激がより食欲を誘った。


串焼きを食べながら到着した目的地を見る。

また、リンの宿に戻ってきた。

今日一日、荷物をまとめて過ごした意味はなかったようだ。

少しの気まずさを感じながら、同様に串焼きを手に取って食べるリンに串焼きを食べる手を止めてお願いした。


「今日もお世話になっていい?」


「そのつもり。ちゃんとわたしがお世話する。だから勝手に出てっちゃダメだよ。」


フンと鼻を鳴らし、拗ねたようにリンが宿に入っていく。

今朝、勝手に出ていったことを根に持っているようだ。私はまだしばらく、リンにお世話になるんだろう。情けない気持ちと、嬉しさとが混在する。返しきれないほどの恩が積み重なっている。

このままだと、離れるときが辛くなってしまいそうだ。


宿の受付にリンが支払いを済ませて部屋に戻る。串焼きをテーブルに置いて、背中に背負ったリュックも床に置いた。ドスッと鈍い音が響く。もう少し丁寧に下ろせば良かった。


「…アイリって身体強化は使えるの?」

リンがローブを椅子にかけながら質問してくるが、私は素直に「分からない」と伝えた。確かに、リンはリュックを重そうにしていたなと思い出す。


「そっか。」とだけ返したリンは椅子に座り、私にも着席を促した。

串焼きを囲んで向かい合う。改めて、随分といっぱいもらってきたものだ。多量の串から一本を手に取ってリンは続けた。


「じゃあ。それから話そっか。」


串焼きを挟んでの魔法の講義が始まる。リンは私のお願いを、しっかり叶えようとしてくれる。その事実がたまらなく嬉しい。淡々と説明が始まるなか、自然と笑みがこぼれてしまった。


本当にリンには頭が上がらない。











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