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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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41 冒険者登録


 全員同意ということで、クロの書類にジェイルがサインを出した。書類を受け取ったクロは窓を空け、こちらを向いた。


「早朝。日の昇る前に」


それだけ言うと、彼は窓から飛び去った。先ほど言っていた男の尋問に向かうのだろうか。仕事熱心なことだ。


残ったメンバーは一度解散の雰囲気となり、ガルンが一時解散の号令をかけ、各々部屋を出る。ガヤガヤと話しながら退出していたところにジェイルから声がかかった。


「分かってると思うが、今回の仕事は極秘中の極秘だ。くれぐれも頼むぞ。それと、魔女のお嬢さん。君は残ってくれ」

皆に続いて退出しようとしていた私だけが、呼び戻される。


何か話があるのだろうか。一度リンの方を見ると、「1階で待ってるね。」とだけ言って先に行ってしまった。


全員が外へ出ていったことで部屋には私とジェイルだけが残った。少しの緊張の残る空気のなか、ジェイルが話し始める。


「今回の依頼を受けるにあたって、お嬢さんの許可をオレが出したんだ。つまり、冒険者として依頼には参加してもらうことになる。問題はないか?」


私は短く「問題ないよ」と返事を返す。


正直、冒険者という制度事態あまり把握していない。強いていうなら、私の知る冒険者は皆、空が得意なことぐらいだ。


返答を聞いて、ジェイルは続ける。

「そういう訳で冒険者の制度と、ルールの軽い説明。そして終わったら冒険者証を渡すつもりだ。軽く必要そうなことだけ説明させて貰うぞ」


そういって、冒険者の短い説明がなされた。


***


 冒険者とは、冒険者ギルドに所属する者である。彼らはギルドに来る依頼を受け、無事達成すれば依頼報酬の8割を受け取る。

依頼内容は様々であり、人探しから護衛まで、多様の依頼があるらしい。ジェイルは冒険者は何でも屋だと表現していた。

ルールとしては、注意するべきことは3点。

 依頼を達成した際、報告と達成の証明できるものの提出義務。

 ギルド内での私闘の禁止。

 そして金貨1枚の登録料の支払いが年に一度必要であるということらしい。


最後に質問があるかを問われたので、気になっていたことを聞く。

「何で冒険者っていう名前なんだい?冒険は依頼にはないそうだけど…」


そういうと、ジェイルは頷きながら答える。


「オレもそれはよく考えていた。オレが名付けるならまさしく何でも屋だからな。

実際は昔の名残りらしい。昔のこの組織は、未発見の大陸や森、海なんかを調査して、地図やらにまとめて世界を知る。そんな組織だったそうだ。その旅の資金集めとして、協力して各地で色んな人の手助けをして金を稼いでいたら、そっちが主目的になったらしい。結局地図や調査書は今にあんまり残っていない。

残ったのは、冒険者って名前と、協力して小遣いを稼ぐ制度だったってわけだ。

他に質問がなければ冒険者証を作ろうと思うが、名前をもらってもいいか?」



「もう一つだけ。リンたちって、冒険者の中だとどれくらいの立場にいるのかな?」


質問を聞いたジェイルはニヤリと嬉しそうに笑う。


「アイツらはこの街で一番優秀だ。素行も良いし、最低限の礼儀もある。どの依頼を出してもなんとかする。頼れる奴らだ」


想定外のベタ褒めに少し驚いたが、やはりリン達は相当優秀なようだ。あの報酬の額にも納得した。聞きたいことはまだ何点かあるが、リンを待たせているのでここまでにする。


「質問は以上だよ。それと、さっき聞かれた名前だけど、私の名前はアイリだ。それで登録をしてほしい」


「分かった。アイリで登録をしておく、役職は…魔法使いだろう。一階で待っていてくれ。すぐに冒険者証を届ける」


そう言ってジェイルは書類に書き込みを始めた。用事は終わったようなので、部屋を出て、ゆっくりとドアを閉めた。


階段を降りると、手すりにもたれかかり、何かを飲んでいるリンがいた。

目が合うと「おかえり」といって飲んでいたグラスを渡してくる。


受け取って一口。今回もフルーツジュースだった。


さっぱりとした後味に、ほんのり口に残る甘さが身体に染み渡るようだった。


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