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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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4 邂逅


 玄関のドアが強く叩かれる。

たった3度のノックだったが、頭の中で心臓の音と同期して、永遠に鳴り響いてるような錯覚をおこす。想定していなかった出来事に、呼吸が荒くなる。私は、音をたてないように扉から手を放し、数歩後ろに下がった。

バクバクと鳴り続ける心音を聞きながらも、努めて冷静に状況を確認する。


この家に人がやってきた。

私とは別の方法、外からこの建物まで来たのだろう。私のように、飛ばされた訳ではないはずだ。手紙を懐にしまい、ゆっくりと本棚に本を戻す。

今、家の中には私以外誰もいない。その私は、この家の家主などではない。にもかかわらず、勝手に蔵書を読み漁っていたのだ。

家主が帰った来た場合、絶対に無事では済まされない。

非常にまずい状況だ。…今私にできることは。


懐の手紙を握りしめ、魔法陣の上に立つ。私をここに連れてきた魔法陣。どうか、私をここから元居た場所に戻して。目をつぶってしゃがみ込み、魔力を手紙に込めた。ぼんやり光を持った手紙をぎゅっと握り、心の中で強く念じた。


どこでもいいから、ここから連れ出して!おねがい…!


数秒後、ゆっくりと瞳を開けるが、そこには見慣れてしまった景色が変わらずそこにあった。それでも目を閉じて願い続けた私に待っていたのは、絶望の音だけだった。


『ドンドンドンドン!!』


身体が小さくはねる。目を開き、周囲を確認するが、相変わらず、景色には何も変わりがない。先ほどより明らかに強い音を響かせるノック音が、まるで、迫りくる足音のように思えた。

このままでは無理矢理にでも入ってきてしまうかもしれない。最悪の事態を想定し、手足がすっと冷え込み、フラフラと扉から離れるように後ろに下がる。


どうするべきか…


このまま、出ていかなかったらどうだろうか。嵐が過ぎるのをただじっと待つように、部屋の隅で静かに蹲るのだ。家主がいないと分かったなら、ここから離れていくかもしれない。それが一番平和で安全な解決策だ。

それでも、もし無理やり入って来てしまったら…。嫌な可能性が頭から離れない。もしかすると、家主がいないことを確認して、悪事を働くような奴かもしれない。

そうだった時、私はただ、何もできずに終わってしまうのだろうか。


ちゃんと出て対応するべき…?


だとしたら、どう接するべきだろうか。誰がやってきているのか分からないと、どう対応していいかも分からない。家主なのか、その知り合いか、はたまた偶然訪れた他人なのか。…それとも。

身震いする身体を抑え込み、ゆっくり重い足を持ちあげる。扉の前まで歩み寄り、そっと扉を開けてリビングへ向かった。

どうするにしても、相手が誰なのかしっかりと見極めなくては…。


『誰か!いないのか!』 


リビングに出た瞬間、まっすぐ見える玄関から大きな男性の声が響きわたる。

驚愕で歩き出そうとしていた身体が硬直し、足がもつれた。

急速で地面が近づいてくる。


ダン!


肩から床に、身体を打ち付けた。

最悪だ。じんわりと痛む肩を抑え、すぐに起き上がる。案の定、扉の向こうにも聞こえてしまっていたその音は、私がここにいることをしっかりと証明してしまっていた。扉から、より一層強いノックと声が家中に響く。


『いるんだろ!!助けてくれ!!』


居留守という道は完全に断たれる。覚悟を決めるしかない。

私は扉のむこうの誰かに、声をかける。


「わかったよ!いま開ける!」


初めて張り上げた声は、すこし震えていた。それでも届いた私の声は、鋭く鳴り響くノックの音をピタリと止めた。


やるしかないのだ。

バタバタと足音を響かせながら、目的のものを探す。

今の私は、布を一枚身体に巻き付けただけの状態だ。誰に応対するにしても、あまりに相応しくない。リビングの壁際にあった私の腰くらいの高さの棚見つけ、一段目をガタっと開ける。

そこには、真っ黒な衣類が数着。丁寧にたたんでしまわれていた。

一番上の服を取り出し、袖を通した。だいぶ大きめではあるが全身を余裕を持って隠せるローブ。生地はしっかりとしており、肌触りが心地よい。相当に高価なものかもしれない。所有者には申し訳ないが、借りさせてもらう。

これで変質者扱いは最低でも避けられる。少し大きくて肩がずれ落ちそうになるが気にしていられない。


『頼む!早く開けてくれ!』


扉の方からは男の大きな声が今にも扉を破りそうな剣幕で聴こえてくる。

助けを求めていたのだ。少なくとも、敵対するつもりはないものだと信じたい。

願わくば、この家主と知り合いではありませんように。


震える手でドアノブに手をかける。鍵のようなものは見たところ見つからない。どうやって彼らの押し入りを防いでいたのだろうか、そんな疑問の答えを示すかのように、ドアノブを捻ると、その周りが淡い光に包まれ、ゆっくりと扉が開いた。


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