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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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21 検問


「もう着くよ。」

リンから声をかけられ前を見れば、少し先に大きな壁が見えた。これで大きな壁を見たのは二度目となる。

一度目は私のいた城の城壁だ。ほぼ半壊状態だったのもあるかもしれないが、こちらの方がより大きく見えた。ずっと足元に気を取られていたせいか、気づいたら街が目前だった。


「一応聞くけど。瞳、閉じれる?」

リンに言われた通り、立ち止まり目を閉じる。そしてすぐにそういうことではないなと気づき目を開ける。


呆れてような顔をしたリンに質問する。

「どうすればリンみたいに色、変えられる?」

とりあえずゆっくりまばたきをしてみたり、ぱちぱちと高速で試したりするが、変化はないようだと、リンの表情が告げている。


「やっぱり、元からなんだ。私の場合は瞳に魔力を集めなかったら勝手に戻る。」


 試しにやっては見るが、そもそも魔力を集める意識もしていないのだから、変化はない。

瞳回りの魔力を極力別の場所へと動かしてみる。その際、魔力が外へ溢れないようにだけ警戒する。二度も同じ失敗をするのは避けなくては。


瞳回りから魔力を抜いていると、瞼が閉じるように視界が急に暗くなる。

「あ、透明だ。」

どうやら色の変化には成功したようだが、これでは歩行すらままならない。

「青い目のとき周りは見える?」

一応聞いてみるが、平常時がそれなのだ。逆に、今、見えてないのかを問われる。


「目を閉じてるみたい。」

「…盲目の妹。同情は引けるか…それ、辛いくない?」

「全然。このままいく?」


「そうだね。手、掴まってて。」


そこからは何も見えないままリンを頼りに歩いていく。


立ち止まり、検問の順番待ちとなったことを知らされる。少し前からしていたが、前後から、知らない人の話し声が聴こえてくる。心臓の鼓動が早い。じわじわと前に進む。そういえば、リンと打ち合わせも何もしてない。

私が決まっている役は、盲目な妹を演じることだけ。

いつぞやの即興劇を思い出す。未だに続く長い劇で、まだ舞台を降りていない。


今度の私は、魔女である自分を隠し、盲目な妹を演じる魔女の役だ。


改めて整理する自分の現状に苦笑する。


演じるのはそろそろ慣れてきたのだ。今回も問題なく行けるだろう。




「お疲れ様です。冒険者ですね。身分証の提示をお願いします。」


「西の森での依頼の帰りだ。4人パーティで一人は客人だ。」

ガルンがそういいながら何かやり取りをしている。

やり取りをしている人とは別の人間が寄ってくる。

「…客人の身分証は。」

無愛想な態度だ。低く、腹に響くような声が頭上から聞こえてくる。


「私の妹。盗賊の被害者で助け出した。何も持ってない。」

そう言ってリンが私の背後に周りローブの刺繍を、隠すように立つ。小さく舌打ちが聞こえた。


「…似てるようには見えないが。」


…疑われている。私とリンとでは髪色があまりにもかけ離れている。

肩に回されている手を掴み、緊張しながらも口を開く。


「お姉ちゃん…?帰ってこれたの?」


わざと透明な目を開け周囲を確認する素振りを見せる。自分の肩にあるリンの手を強く握り、虚空に呟いた。


「…。目が見えないのか?」


「…今は見えてない。…おそらく治る。」


「…おい、名前は?」


「…。」


…名前。そういえば初めて聞かれた。今までは、魔女様、魔女さんと呼ばれていたから考えていなかった。記憶の欠けた私は、自分の名前を持っていない。


「お前だ。黒いの。」

そういって目の前まで男が迫るのを感じる。


私の、名前。


「…アイリ。」


 目が覚めたとき見た、私へ送られたであろう花。ボロボロで、花びらが一枚も残っていない、

アイリスの花。全てが欠けた。私と同じ。欠けたアイリス。


「…アイリだな。」

そういって男は背を向け、数十秒後戻ってくる。


「これを首から下げておけ、有効期限は三日。それ以内に身分登録か別の街へ行くか決めろ。」


そういって私の手を無理やり引っ張り手のひらに木製の何かを押し付けられる。握ったことを確認すると、男はリンの方へ顔を向けた。


「責任はお前がとるんだな。」


「お姉ちゃんだから当たり前。」


そんな会話が交わされ、手続きは無事完了した。



「お待たせしました。お帰りなさい。」

丁寧な門番によって、街の中へ誘導された。周りの喧騒が一気に大きくなった。


「目、戻していい?」


「いいよ、お疲れ様。」


せき止めていた魔力を戻す。目の前が明るくなり、視覚が戻る。


「ようこそ、アールイへ。…アイリ。」


私の初めての街アールイ。未知の世界だ。人がごった返し、どこを見ても誰かが何かをしている。

建物は高く、色とりどりの建物が並び立つ。情報量に圧倒される。


私の手がかりを探し求めてきた、最初の街。期待、感動、衝撃そして不安という感情が入り混じる。


私が、魔女のアイリが街へやってきた!















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