19 記憶
「休んでなくて大丈夫?」
自然とリンの方へ向かい、枝を拾ってる彼女に心配される。
「全然。疲れてないから。」
「…ほんとだ…。それ。どうやってるの?」
「…どれ?」
「魔力…外から吸ってるやつ。」
自分の魔力に集中する。体感はあまり感じていなかったが、実際どうなのであろうか。宙に浮いた時以来、魔力は使っていない。あの時は確かに減った感覚くらいはあったが、特に問題はなかった。
「あ、止まった。」
魔力に集中し、少し動かそうとした瞬間、おそらく外からの魔力の吸収?が止まったようだ。
集中を止め、できるだけ自然体に戻す。
「また、始まった。すごい。自由に使えるの?やり方を教えてほしい。」
赤い彼女の瞳は私を一点に視て、手に抱えた枝をぽろぽろ落としながら私の周りを歩いて観察する。
自分でも視たいが、魔力を意識しないといけないので確認することができない。
「…やり方は分からない。けど、魔力を使おうとしなければできるみたい。リンはできないの?」
「魔力は自分の中で生み出されるから。ご飯食べたり、いっぱい寝たり。そうすると元に戻る。」
「じゃあ、私のは普通じゃない?」
「うーん。エルフに近い。あいつら、『森から魔力をもらってる。』っていってたから。」
しかめ面をして恐らくエルフという人のマネをしながら教えてくれる。
「その人とは会える?」
「会える。けど、あんまり行きたくない。それに人にはできんって言ってたし。多分別の方法な気がする。」
「???エルフは人じゃないの?」
「?…エルフだよ?」
「え?」
「あー…。エルフは種族名。人間とは別で森にいるやつら。こんな耳してるの。」
片手で耳を引っ張る。随分と長い耳をしているようだ。
「ドワーフとか、獣人とかと一緒?」
「そう。…?どうしてエルフだけ覚えてないの?他の種族は知ってるのに。」
エルフという種族に関して何も知らないが、ドワーフや、獣人。天使族。魚人族。などの存在は、私は知っている。そこだけ知識が抜け落ちているようだ。
本当に私は謎が多い。産まれたばかりならば何も知らないはずだが、基本的なことは、大体なんでも分かる。かと思いきや、部分的に抜け落ちた知識も存在するようで難しい。
思えば、魔法の知識を私が一切知らなかったのも、今回のエルフと似ている。
魔法。エルフ。
思考の海に沈もうかとしていたその時、リンがハッとして、「枝、やらなきゃ。」と落とした枝を拾い始めたので、私もそれを手伝い、みんなの場所へと戻った。
「遅かったな。なにかあったか?」
石組みでかまどを作っていたエイルから心配の声がかかるが、話し込んでた。ごめん。といって枝を渡す。
「かまわん。火。頼めるか?」
「…種火。」
エイルが素早く組んだ枝にリンの指先から出た小さな炎が吸いこまれる。炎を出した逆の手で、ゆったり風を送るような仕草をすると、枝の中の炎が燃え上がり、安定した炎が産まれた。
「…わぁ。」
小さく漏れてしまった声を咳のふりをして誤魔化す。私も真似をして試してみたい衝動に駆られるが、苦い思い出を思い出してすぐ思い直した。
しばらくして、首と羽の落とされた鳥を担いだガルンと、キノコや植物を持ってきたイースが戻ってきた。今晩は豪華な食卓になりそうだ。
夕飯を食べ終わるころには日はすっかりと落ちていた。焼いた鳥に塩を振っただけの簡単な焼き鳥に、いろんな具材を煮詰めた暖かい香草スープ。両者とも大変美味だったが、パンは相変わらずの強度だった。
特になんの問題が起きるわけでもなく、寝る時間となる。明日は昼頃には町に着くらしい。火の番は交代制で、病み上がりのエイルを除いた三人で回すらしい。客人扱いだからと、私もハブられた。
女性陣側のテントで、リンとイースにならい、身体を拭いて、横になった。明日はいよいよ街に出向くことになる。
緊張と興奮を胸に目を閉じた。




