17 報酬
旅の準備が終わり、全員が玄関の外で集結する。私も外に出て、みんなと対面する。
「改めて。本当に世話になった。これは少ないかもしれないがお礼だ。」
エイルから小さい革袋手渡される。中には、金色の大きな貨幣が5枚入っているのを確認する。
「何か困ったことがあればいつでも助けよう。あなたは命の恩人だ。」
「こちらこそ、とても有意義な時間だったよ。ここを訪れてくれてありがとう。」
差し出された手を握り握手をかわす。
ガルンやイースとも握手をかわし、リンと握手をかわしたあと、リンが私の横に来て、皆に告げる。
「…魔女様、街に行きたいんだって」
「あ、あぁ!そうなんだ!君等と話してるうちに今の街の様子が気になってね!旅にご一緒させてはくれないだろうか?」
練習していたように同行の希望を伝える。突然のことで少しどもってしまったが、予め何を話すか決めていて正解だった。
「魔女さんが?一緒に来るのはいいけどよ、あんまり市井に降りないって聞いたぞ?身分証とかちゃんとあるのか?」
ガルンからの質問に、私に変わりリンが答える。
「魔女ってバレたら面倒だから、わたしの妹って事にして一緒に通る。保証金もわたし持ち。で、いいよね。魔女様。」
「そうだね。魔女であることは秘密にしてくれるとありがたいかな。ただ、私が妹かい?」
「私のほうが大きいから。」
そう言って胸を張る彼女と背の高さを比べると、確かに少し高い。
しかし、こちらは裸足であるためそれを考慮したら私のほうが少しばかり高いようにも思える。
「まぁ、穏便に入れる提案なら構わないよ。
よろしくね。リン。」
「お姉ちゃん。」
「え?」
「あなたは私の妹。だから、お姉ちゃん。」
「…よろしくねお姉ちゃん。」
満足そうな顔を浮かべ仲間たちの方へ歩いていく。
「…あなた、たまに凄いことするわね。」
イースに突っ込まれながらも本人はなにが?と受け流す。
呼び方1つで喜ばれるなら安いものだ。
お姉ちゃん。便利な言葉を覚えた。
濃密な一日を過ごした家を出た。
荷物はリンが選んだ本を4冊。手紙とアイリスの花の茎。小さな鍵は魔力の糸を使い首に通した。本当に魔力とは便利である。
数時間後。
旅の一行として彼らと森を歩く。森を抜けると平原へと出られる。そこまでが今日の目標とのことらしい。
初めての森だ。うっそうと茂る森のなかをガルンが先頭に立ち、少し離れた後ろにイース。エイル。私とリン。と隊列を組んで進む。本来はエイルが先行してるようらしいが、病み上がりの為なしとのことだ。
あちこちから生き物の声や
小さな魔力が蠢いているのが視える。つい目で追ってしまって目の前の倒木に気づかず躓きかける。前につんのめる形になったところをイースがすっと手を差し伸べて私を支えてくれる。
「森は歩き慣れてませんか?」
「長らく外には出てなくてね。ありがとう。」
「魔女様、歩くの疲れた?」
イースに感謝を伝え隊列に戻ったとき、リンに心配される。
「疲れはないけど、足がボロボロ。外って大変」
小声でそう伝えると、リンも小声で会話する。
「…ちょっと飛ぶ?」
「…魔法?」
「うん。魔力使うからあんまり使うべきじゃないけど、あなたが貸してくれるなら。」
「…やってみたい。」
「待ってて……浮遊。」
私の肩にマントのようにかけてた布を片手に握ってそう唱えると。マントが不自然に空中で静止した。
「…魔術式は?」
「覚えると省略できる。適性もあるけど。
乗ってみて?」
言われるがままにマントを肩から外し、二人で布の上に腰を落とすと、落ちるはずの布は、私たちを乗せたまま空中でたなびいている。…すごい。布の周りを少し緑色の魔力が覆っている。
「すごい…風属性?」
「正解。魔力頂戴?」
そう言って小声のまま手を差し出してくる。
「…前回はうまくいったけど、失敗したら爆発するんでしょ?あれ」
「そう、ヤバかったら言うからそのときは止めて。」
手をぐっと突き出し早くしろと急かしてくるので手を握り、自分の魔力を彼女と同じ濃度に合わせる。
そのまま繋がっている手を通して彼女の中に流していく。
「…ふふっやっぱり少しくすぐったいね。」
リンは笑顔で指を回すと、浮かんでいた布が私たちごと前進する。
「すごい贅沢。魔力、限界きたら言ってね。」
「…すごい。すごい!」
我を忘れ少し大きな声を出してしまう。
私は今、魔法に間接的にだが触れているのだ。嬉しさが身体中から込み上げてくる。
長年追い求めていたものを手にしたような達成感に包まれる。
我に返った時には隣でニヤけ顔のリンと、不思議なものを見るような顔をした3人と目が合った。




