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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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16/55

16 決断


「…言うの…怖くなった?」


急に意見を変えた私に、リンが不思議そうに聞いてくる。

私は懐から、封のされた手紙を取りだし、リンに見せる。 


「これ。私が起きた時、側にあった手紙。

 あと、ここに飛んできた時、この陣に反応してた。」


リンは手紙に近づき、手紙の封をまじまじと見つめる。

「刺繍と同じ模様…あなた、やっぱり知り合いだった?」

探るような瞳でこちらを見るリンに、私は首を横に振り、少し間を置いて答えた。


「分からない。けど、無関係ではない…と思う。リンは…これが何の術式か分かる?」


「…多分、何かあるとしたら…独自魔法。どの属性にも該当してないし、模様自体に効果はないと思ってた。一部の人は、それが魔女の証って認識だけ持ってる。」


「これは、魔法式じゃないの?」


「多分…?そんな魔法は聞いたことないから。…何かあるとしたら……うん。対象を絞るための…認証装置?」


リンが唸りながらなんとか自分の回答を絞り出す。認証装置と言われた手紙の封を見るが、知識のない私にはあまり良く分からない。解決しなかった疑問とともに手紙を懐にしまい、自分のこれからしよう思いついたことを相談する。


「もし、これ着て街に行ったら…どうなる?」


「魔女以外の人がそれを着てるのがバレると、犯罪。最悪、死刑。」


恐る恐る聞いた私の問いは、バッサリと、無情な答えに切り捨てられた。あまりにも容赦のない話に、動揺する。


「…えっと…どうして?」


「たまにいるの。そのローブを真似て作って、自分は魔女だって嘘つく人。子供は親に叱られるとかそれくらいだけど…大の大人がそれで好き放題して捕まってる。本当に魔女だったときにたちが悪いから、皆。迂闊に手が出せない。」


「魔女ってそんなにすごいの?」


「魔女には関わるな。近づくな。金の刺繍の入ったローブをみたらすぐ逃げろ。って、貴族の間だと教わるらしい。多少教養のある人なら、だいたい知ってる。正直、それを着て街に入るのも、少し難しいかも。」


思った以上に、このローブの存在は大きいようだ。計画通りではあるのだが、多少問題のほうが大きいのかもしれない…。それでも…。一番の近道だと思うから…。

自分のローブの袖をギュッと掴み、勢い任せに、リンに質問する。


「でも!みんな注目するはずだし、多分噂になる…このローブ自体も、本物っぽいし…」


詰め寄る私にほんの少し驚いたリンは、私の質問の意図を探るように考え込み、数秒後。推測がたったのか、口を開いた。

「それは…なるだろうけど……もしかして本物を呼ぼうとしてるの?」


「自分のニセモノがいるってなったら気になって見にこないかな?」


「多分、目もくれず殺されて終わる。」


「…うーん。」


そう言われて肩を落とした私は、いそいそとローブを脱ぐ。会える可能性は高いが、リンがここまでいうのだ。魔女のことを何も知らない状態でやるべきことではないのだろう。


「ちょ、ちょっと。何してるの!」


リンが手を伸ばしてくるので、脱いだローブをその手に渡した。明け方だからか、風が冷たい。腕で自身の身体を抱くようにして、リンにお願いする。

「寒い…服、代わりの貸してほしい。」


「な、ないよ。冒険者は荷物は最小限だから。…それ以外ないの?」


大きな白布ぐらいしか持っていない私は黙って頷く。リンは呆れ顔を浮かべて、ローブを突き返してきた。

「とりあえずそれ、着てて。」


もぞもぞとローブを被りなおすなか、可能性に思い当たる。もしかしたら、他にも服があるかもしれない。

「タンスのなかを見てくる」


私はそれだけ伝えてトテトテと小走りで部屋を後にした。


「ない…。私より。ぺったんこ…。」

部屋に取り残されたリンは一人、呆然と呟いた。


✽✽✽

「ない…。」


私はごそごそとローブのあったタンスを探る。中には全く同じローブが何着も入っており、他には何もない。

…どうしようか。このまま魔女のフリして街に入り、ばれて捕まるか。素っ裸に布一枚で街に入り、変質者として捕まるか。

どちらに転んでも結末としては余りにもよろしくない。


…リンたちに服を持ってきてもらう?

ここからどれだけ距離があるのかも分からないのに申し訳なさすぎる。


とりあえず、部屋に戻る。その途中でガルンにそろそろ出るぞ!と声をかけられたので、分かったとだけ返事を返した。


服はこれ以外にはなかったことを伝えると、リンは、大きな布を私のローブの上から被せた。野営用の何かだろうか。


「これならぱっと見は分からないから、多分、大丈夫。検問はわたしが何とかしてあげる。街に入ったら服飾屋で良い洋服を買おう。」


「ありがとう」

そう伝えると、彼女はニコリと笑った。


「いいよ。あと、もし話すならだけど、ガルンには魔女のフリって話さない方がいい。

たぶん余計なボロをだす。」


「分かった。じゃあ二人にもまだ内緒にしとく。」

リンに頷き、喉を整えるように咳をして、演技する。

「…君たちと過ごしているうちに、どうしても今の街が気になってね!ただ、すぐ騒ぎになるのは困るから、できるだけ、魔女ってことは隠して入りたいんだ。…どう?」


リンは私をみてパチパチと拍手して感想を述べた。

「…悪くないと思う。」


方針が固まった。 

いよいよここから大きな旅がはじまる。

期待に胸を膨らませた。











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