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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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15 選択


 食事が終わり、彼らが出発のための荷支度を始めるなか、私は一人悩んでいた。


みんなにはもう、自分の正体を明かしてしまっても良いのではないだろうか。

これからの計画を考えると、そちらの方が絶対に都合がいい。

食事を囲って分かったが皆いい人達だ。 もう、下手に警戒することはないのかもしれない。事実リンは、笑って許してくれた。

残りの三人も治療を手伝ったり、同じ飯を囲んだ仲だ。今ならきっと、笑って許してくれる。


「リン。ちょっといいかな?」


荷物をまとめる彼女だけを呼びつけ書庫へ一緒に入る。扉を閉めるとき、


「内緒話かぁ?仲良くなったなぁ!」


と茶化すようにガルンが話しかけてくるが、

「魔法に関してじっくり話そうと思ったが、君も興味があるかい?」

と盛大にホラを吹くと、俺には分かりそうもねぇやと興味を無くし、剣の手入れを始めた。


 二人で書庫に入る。

床には私がここに来た時に発動したであろう魔法陣が、足元でぼんやりと光っていた。


「…これ、多分…転移の術式…?使えるの?」


「わからない。けど、別の場所で似たようなのに触ったらここに来た」


二人になったので、口調を楽にする。

そんなことを気にもせず、リンは魔法陣に夢中になっていた。陣に近づきすぎない距離でしゃがみ込み、観察しながら何かを呟くリン。その背中にむけてさらっと告げる。


「私ね、記憶がないの」


急な私の言葉にリンは立ち上がり、私の方へ振り向いた。青い瞳と目が合った。

黙ったままの彼女が、続きを促すように頷く。私はここまでに体験したすべてを彼女に打ち明けた。短い私の生涯の記録を、話し終えるまで、静かに聞いてくれた。


 すべてを話し終えたあと、黙っていたリンがゆっくりと話す。


「……なるほど。それで…転移の陣にのって。…ここに?」


「そう…だと思う。それで、魔法の本を読んでたら、リンたちがきた。」


「ふふっ。それで魔女のふり?面白い。」


「それしかないと思ったから…それに、リン以外にはバレてない。」


「うん。上手だった。話し方とか。」


「そう?なら良かった」


「でも、本当に魔法は使えないの?」


「これのやつは試したけどだめだった」

初めて読んだ本を見せる。最後の魔法式のページを見せたが、式には問題がないとのことだった。

彼女は、本を私に返したあと、懐から小さな本を取り出し、ページを開いて私へ向ける。


「じゃあこれは?昨日の浄化の魔法。」


彼女の本に手を伸ばし、試してみる。

がそれもやはり、発動しなかった。


「不思議。魔力量も、扱いもすごいのに?」

首を傾げながら、彼女は唸りだした。

もしかしたら…。でも、扱いは完璧だし…綺麗すぎる…?と、一人で考え出したので、話しかける。


「皆はこれは難しい?」


意識を引くために、魔力の糸を伸ばせるだけ伸ばしてみる。それをそのまま自分の身体にぐるぐる巻きにしてみた。芋虫のような見た目だが、ほのかに温かい。謎の心地よさすら感じる。

そんな私を視て、目の色を変えた彼女は、ぐるぐる巻きになる私を感心するように見ていた。

「そもそも、魔力を可視化できる者もすくない。わたしたちのような瞳がないと。見えないものをそんな上手く扱えるわけが無い。…見えてもわたしにはできないけど。」


赤い瞳になった彼女がつんつんと私の周りの糸をつつきながら話す。


「その瞳のこと?多分、私も同じなんだよね?」

ずっと気になっていたことをリンに質問する。

「うん。あなたのほうが綺麗な赤だけど。似たようなものだとは思う。」


「魔法使いは皆持ってるの?」


「まさか。特別な何人かだけ…例外はあるけど。」


「魔女の瞳って言うの?」


「そう。だから皆魔女ってこと、信じたんじゃないかな?」

ちょうどいい話題が来たので、本題を切り出す。

「…皆にも話してもいいと思う?」


少し俯いて話す私に、小さく笑顔を浮かべた彼女は、優しく答える。


「うん。皆優しいから。もし、当てがないなら。…一緒に来る?」 


「いいのかな?」


「だいじょうぶ。わたしが保証する。」


彼女の言葉で、私は決めた。全てを話して皆についていく。そして、一人で生きていけるようになったら、お世話なった恩を返して、自分を探す旅に出る。


そうと決まれば、出発の準備だ。

家主には申し訳ないが、リンにお願いする。


「…魔法に関して学べる本を一緒にここから探してほしい。持てる分だけ」


「…良いけど。持っていくの?」


「どうせ1日自由に使った。怒られるのは同じ。」


「分かった。じゃあ服も着替えないと。」


「このままじゃだめ?」


「うん。その背中の刺繍。本物の魔女しかつけちゃだめだから。」


「…ん?刺繍?」


言われてローブを着たまま背中側を前に持ってくる。

指摘された通り、美しい金の刺繍がされていた。それを見た私は、目を見開いて固まる。


「どうしたの?」


声をかけられて数秒後、私は、決めた選択を翻す。


「…やっぱ私、皆に話さない。」


…金の刺繍は、手紙の封と同じ模様が施されていた。




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― 新着の感想 ―
主人公の話し方が途中変わっているように感じたけれど心情の変化?「そうなのか?」とかだったのが「そうなの?」って女性と気づいたから?
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