12 正体
上手く声が出ない。首を強く捕まれているような錯覚に陥る。
すぐにこの場を離れたいが、身体が反応してくれない。
目を閉じたまま彼女は続ける。
「昔ね、わたしを拾って、育ててくれたひとがいたの。
…その人に、魔女の知り合いがいたみたいで、色々教えてくれた。多分私の瞳のせいもあったと思う。
そこで聞いた。西の森の魔女は燃えるような赤い髪をした女だって。」
いつからだったか、深くかぶったフードはいつの間にか脱げていて、黒い髪が露わとなっていた。
「…でも、私たちを助けようとしてるのは分かった。なぜか必死で魔女のふりをしていたけど。悪い人ではないと思った。」
「あなたはだれ?とんでもない魔力に、技術。かといって知識はあまりないみたい。
それにずっと魔女の瞳を開きっぱなしで。…疲れない?」
疑問と動揺であたまが正常に働かない。
どこからなにを話すべきか。
全部いってしまっていいのだろうか。
数秒の沈黙のあと、考える。
自分のことを打ち明けるのはここかもしれない。
白状しようと心に決めたとき、
「…話せない理由があるんだ。いいよ。内緒にしてあげる。
エイルを助けてくれてありがとう。きれいな黒髪の魔女さん。」
彼女からの感謝を受ける。言い出すタイミングを見失ってしまった私は、なにも言えずに、目をつぶっている相手にうなずくことしかできなかった。
しばらく無言でいるしかなかったが、当初の自分の目的を思い出す。
「こんな私を信じてくれるか分からないが、試してみてもいいだろうか。
もしかしたら少しは楽にさせてあげられるかもしれない。」
リンにそう告げると彼女は「いいよ、任せる。」と笑顔で許してくれた。
先ほどから考えていたことを実行する。彼女の魔力と密度を合わせた魔力の糸を彼女の中に入れる。
「ふふっ…少しくすぐったい…」
そんな声に私は申し訳ない。とだけいって作業を続ける。
魔力の糸を彼女の魔力に織り合わせるように少しずつ混ぜていく。
少しずつ私の魔力を彼女へ注いでいく。
随分少なくなっていた彼女の魔力をはじめて見たときと同じくらいまで戻す。
「…どうかな?」
突発的な思いつきだが、魔力の流れを補助し、欠けていた魔力を補充することで少しは楽になるのでないか。瞳の魔力のほうも解決したかったが、迂闊に触ってはいけない気がしてやめておいた。
「…すごい…魔力が増えてる。本当に凄い技術。普通他人にこんな量の魔力、人に流したら大爆発。なのにほぼ純粋な魔力だけを分け与えるなんて…。」
青い目を開き、驚いた様子で確認している彼女をしり目に、私は聞き捨てならない言葉に恐怖した。
私の思いつきはたまたま成功したが、本来であれば彼女を爆発させていたことになる。
「問題ないのならよかったよ。」
自分の心情を隠すよう、魔力の糸をくるくる回しながら返事を返した。




