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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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11/55

11 成功?


 彼の身体に意識を集中する。


魔力の密度。


リンが先ほどくれたアドバイスを思い出し、自分の魔力を手のひらに出して見比べる。


彼のと私のでは確かに色の濃さが違うようだ。量ばかりに気を取られてあまり気にしていなかった。


要は私の魔力はエイルの身体の許容できる濃度の魔力ではなかったのだろう。


自分の身体から手のひらの魔力を切り離し、これ以上量が増えないようにする。


出来上がった小さな球体を薄く引き伸ばすイメージで細い糸のように引き伸ばす。


色の濃さに違いがないことを確かめて、出来上がった糸を指先に巻いて彼の身体に垂らすように向ける。


不思議だ。

この魔力という物質は、自分の思い通りに形を形成でき、それを物体とすることすらできる。もっと調べてみたいという気持ちを収めて彼に向き直る。


今度は先ほどよりも慎重に、水面を揺らさず釣り糸を垂らすようにエイルの身体に魔力をおくる。


身体に魔力が入る。

先ほどのような拒絶反応は発生しない。

溶けるように身体の内側に入り込む。


あとは、魔力を操作して異なる魔力を引っ張り出す。糸の先を静かに動かし、目標の真上に持ってくる。


「少し痛むかもしれないが、我慢してくれ。」


聞こえていないであろう彼に断りを入れて魔力の糸を操作する。


先端を大きく引きのばし、袋のようにして異物となる魔力を包み込んだ。


もごもごと、魔力が袋の内側で動きまわるのが振動で伝わってくる。


あとは取り出せば終わりだ。一気に引き抜くように糸を引き上げる。


「んっ!」

勢いで行く。

エイルの身体から魔力の糸が完全に抜ける。


無事取り出すことに成功した。


 その瞬間エイルが目をゆっくりとあけた。焦点の合わない、深い緑の目が姿を見せる。


「「エイル!」」


一番傍にいたガルンが真っ先に駆け寄る。


リンを介抱していたイースも駆け寄った。


リンはまだ動けないようだ。目を閉じて壁にもたれかかっている。


重大な一仕事を成功させた私は彼らが駆け寄るのと入れ違いで後ろへ引いた。


そのままリンの傍へと向かい隣に腰を下ろした。


「…迷惑をかけたようだ…すまなかった。」


起きたエイルは喉が渇いているようなカサついた声で謝罪する。


「…全くだバカ野郎が!」


とても嬉しそうな声で笑顔のガルンが答える。目の端には涙が浮かんでいた。


「感謝しなさいよね!特にリン!それと…」


イースがこちらを見て、それに合わせるように男二人も顔を向ける。


「えっと、今回きみを助けた魔女だ。…よろしく?」

小さく手をふり反応する。隣で小さく噴き出すような笑いが聞こえたような気がした。


注目がおさまらないようなので話を続ける。


「私のことは気にしないで、彼を看病してあげてくれ。私は、ついでに彼女の方も見ておくとするよ」


彼らに背を向けてリンの方をみる。


後ろからガルンが

「魔女さん!疑ってすまなかった!ありがとうな!」

と豪快な笑い声とともに感謝を告げる。


私は顔を向けず手を振るだけで反応した。


ここまでさんざん痛めつけられた胸が少し温まるのを感じた。


気を取り直してリンの方へ意識を向ける。

ここまでなりながらも仲間のために尽くしてくれていた彼女だ。

ついでに私のことも盛大に助けてくれた。

彼女のためになにかできないだろうか。


「少し身体を触るよ、痛かったら言ってくれ。」

そう言って彼女に手を伸ばすと、彼女に手を捕まれ強くはない力だが少し引っ張られる。


予想だにしていない行動に身体が反応せずに、そのまま前かがみに彼女の方へバランスを崩す。


顔が至近距離に近づいた。


ふふっ、と彼女の口から笑い声が漏れる。


そして


 「あなた、魔女じゃないでしょう。だれなの?」


一瞬温まった心臓が氷のように固まった。







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