1 誕生?
初投稿です。よろしくお願いします。
気づいたときには、私はここにいた。
私の誕生は普通ではなかった。誰かに祝福された訳でもない。周囲に人の気配もない。ただ独り、目を覚ました。
最初の景色は、無骨な壁だった。
それが天井だと認識するのに時間はかからなかった。
倒れた身体を起こし、周囲を確認する。
そこで世界と、私を認識した。
薄暗い部屋。足元の仄かな光に照らされて、辛うじて部屋の全貌を確認できる。
小さな部屋だった。
部屋は殺風景で、家具などの類は一切ない。
足元の方にある扉。そして、私の下にある棺のような何か。それが、この部屋の全てだった。
次に自分を見た。
真っ白な生気のない肌に、肩から見える黒い髪。そして、自分の身体を覆う白い布。
それ以外、何も身に着けてはいない。
棺ようなものの中、布1枚で横たわっていた。
私は死んでしまっていたのだろうか。
棺から降り、地面に足をつけた。
ひんやりとした硬く、無機質な感触が裸足の足から伝わってくる。
起き上がったひずみに、布と一緒に何かが落ちた。
…手紙と、花のようだ。
どちらも相当古いものようで、手紙は色褪せ、花は、花びらが千切れ、散った花びらも粉々になっていた。
原型のない花だったなにか。
なぜだろう。私はこれが何の花であるかをしっている。
……アイリスの花。
自分の両目何かが込み上げる。とっさに目を手で覆うが、特に何も出ず、なぜそ自分がそうなったのかは分からなかった。
色褪せた手紙を手に取った。封蝋のされた手紙の外側には、愛するあなたへ。と書いてある。その一文だけでとても胸が暖かくなるのを感じた。
早く読みたい。
何処からか湧き出た感情を抑えることができない。それでも、できるだけ丁寧に封を開けて中身を取り出す。
折りたたまれた一枚の便箋だ。破れないようにゆっくりと広げる。
ごめんなさい。
どうか、全てを忘れて幸せになって、あなたのやりたい事を為しなさい。
愛しています。
その文とともに小さな鍵が挟まっていた。
胸のあたりが急速に縮こまるような痛みを感じた。正体不明の痛みは、手紙を胸に抱きしめるように抱えると、少しだけマシになった気がした。
この、手紙の主は誰だろう。
私の知り合いなのだろうか。
ずいぶん古い手紙だ。手紙の主はもう、亡くなっているのかもしれない。
それでも、会ってみたい。そんな感情が私の内から溢れ出る。
知りたい。
この手紙の主が誰で、どんな人なのか。
私は誰で、どうしてここにいるのかを。
無意識に手紙に入っていた鍵を握りしめた。
私の持つ。小さな手がかり。
右手に握る小さな鍵に希望を抱き、
唯一の扉に手をかけた。
私が、私を探す旅。
長く壮大な旅の一歩を踏み出した。




