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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

戦争に巻き込まれたメイドの日記

作者: シャチ

1839年11月5日

ついに戦争が始まった。

ヌワラ帝国が東の隣国、キャンディ連邦へ宣戦布告をしたのが9月1日。

我が国は中立を貫いていたが、ヌワラ帝国の西の大国ディンブラ共和国との先端が開かれたことに端を発し、我がルフナ王国を軍が通る許可を求めてきたヌワラ帝国に対して、我が国はディンブラ共和国側について宣戦布告をした。

仕えている伯爵様は軍務につくため前線となる国境地帯へ出兵された。

私たちには避難するよう指示をされたが、お嬢様は否定なされて首都の屋敷に残っている。

専属メイドである私もお嬢様と付き合うことになっている。

出来れば逃げたいが、お嬢様には孤児である私を拾っていただいた恩もある。

なるべく最後までお仕えしたいと思っている。


11月9日

ついに首都にもヌワラ帝国の空爆が開始された。

すでに市街地の一部は瓦礫の山になっていると聞く。

我が国の空軍は何をしているのだろうか?みすみす空爆を許すほど弱いのだろうか?

お嬢様はそれでもここに居続けると主張されている。

歴史あるルフナ王国の貴族が、国民を置いて逃げるなど許されないとおっしゃられている。

立派だとは思うが、できれば一緒に逃げていただきたい。

美しいお嬢様が戦争お怪我をされるなど、私には耐えられない。


11月不明

夜中に空爆があり、お嬢様のもとへ行こうとした瞬間、体が吹き飛ばされものすごい音がして、私は瓦礫の下に埋まってしまったようだ。

私が気が付がつくまでどれぐらいたったかわからない。

すでに外は明るかった。

体中に擦り傷ができているし、左足をひねってしまったようだが、何とか生きていた私は瓦礫から這い出て、現状に絶望した。

お屋敷は半壊。お嬢様がいたあたりは瓦礫の山になっていた。

すでに市民は逃げてしまったのか、救助に当たる人も兵士も見当たらない。

私だけ生き残ってしまった。

屋敷の中で使えるものを探す。

11月であり暖を取れなければ、私もすぐに死んでしまう。

せっかく生き残ったのに死ぬのは嫌だ。


11月∔2日

調理場跡からジャガイモなどの食料品を見つけることができ、久しぶりに胃にものを入れることができた。

屋敷内の毛布などを見つけることができたため、何とか凍えずに済んでいる。

外気温が寒いおかげか、死臭はしない。

私一人では屋敷の大きな瓦礫をどかすことは出来なかった。

それに、連日飛行機が飛び回り、けたたましいエンジン音を上げながら爆弾を投下していた。

すでに町中で壊すものなどないのではないだろうか?

このまま屋敷跡にとどまっていてもいいが、帝国が攻め込んで来ると、一般人の私など、どのような扱いを受けるかわからない。

できる事なら首都から逃げ出すべきだろう。たしか、隣街に旦那様の御爺様がいらっしゃったはずだ。

足の痛みも引いた。捻ったと思っていたが、大したケガではなかったらしい。

運だけは良いようだ…

最後に今一度屋敷を探索したところ、ご主人様の机から護身用の拳銃を見つけた。

だけど、使い方がわからない。

私はカバンに保存がきく食料と拳銃、弾を詰め込み、夜に屋敷を出た。


11月14日

夜のうちに首都を抜け、幹線道路を少し進んだところで、王国軍にであった。

木々に囲まれ、上空からはわかりにくいところに駐屯地を作って、反撃に備えているのだそうだ。

おかげで日付もわかった。結果的に私は丸1日ほど気を失っていたらしい。

伯爵家に仕えていた証明書のおかげで、身分がはっきりしたとのことで、不当な扱いは受けずにすみ、入手した銃の使い方も教えてもらった。

初めて発砲したが、反動がすごかった。思い込みで扱わずによかったと思う。

ただ、兵士を相手にこの拳銃では、役に立たないだろうといわれた。

護身用には十分だろうから、持っていることを勧められ、女性士官の方からホルダーをいただいた。腰に着けるようで、私の持つ小さい銃にサイズがあっていた。

また、軍医から痛み止めとシップをいただけた。

歩く分には問題ないが、まだ押すと左足首は痛いので助かった。

ここの場所はあと2日もすれば前線になる可能性があるので、隣国のディンブラ共和国へ逃げるよう勧められたが、今日はここで一泊することにした。

男性が多いのは心配ではあるが、他にも一般市民がいるし、軍人に守ってもらえるなら安心だ。

今日は早めに寝ることにしよう。


11月15日

早朝には起きて、軍の人から朝食をいただいた。

久しぶりにパンをたべた。温かいスープの味もよく、体が温まった。

昨日、銃の扱い方などを教えていただけた女性士官の方から、一食分の軍用食をいただいた。

缶詰とクラッカーだそうだ。

また、水を補給できたことも大きい。水筒の水はすぐに使い切ってしまう。

宿泊している間に空爆などはなかったが、何時そのような危険にさらされるかわからないという。

すでに我が国の空軍は壊滅しており、対空砲でしか対応できないと聞いた。

首都からの避難民の中には、軍と一緒に戦うと志願した人たちも多いという。

私を含め、女子供は逃げるよう勧められていた。

私は、軍の駐屯地を後にした。

幹線道路は使わずに、わき道にそれる。

それでも木々の下など、あまり空から目立つところを歩くなと言われた。

ほかの人たちも思い思いに逃げるようで、私はまた一人になった。

まとまって行動するのは発見されるリスクがあり危険だという。

伯爵さまは、まだ生きているだろうか?

駐屯地では、戦死されたということは聞かなかった。

きっとまだ前線で帝国軍を食い止めてくださっているのだろう。

キャンディ連邦はわずか1ヶ月で帝国軍に占領されたと言われている。

ものすごい速度で進軍してくるのだそうだ。

そんな恐ろしい軍につかまりたくはない。


11月16日

今日は野宿をする。

茂みを見つけて、風を遮れる場所を見つける。

屋敷から持ってきた毛布が役に立っている。

軍から、夜に火を起こすと、空からよくわかり狙われる可能性があると聞いており、日没後は火が使えない。

夜に食事がとれないが、食欲もあまりない。

おとなしく寝ることにする。


11月17日

今日も野宿。

軍からもらった缶詰の肉の煮物は温めるととてもおいしかった。


11月18日

ようやく街に到着した。

首都と共和国国境の間にある街で、伯爵さまのお父様、大旦那様がお住まいになられている街だ。

町の検問で身分証明を見せ、大旦那様のお屋敷へ向かう。

すでに被災から1週間が立とうかというタイミング。

着替えも出来ずの状態であり、私の姿はかなりみすぼらしくなっている。

屋敷に仕えていた時のメイド服のままなため、臭っていると思われる。

お屋敷の裏口に到着し、事情を説明したところ、執事の方が来てくださり、首都の状況とお屋敷での生存者の報告をした。

着替えとして、この屋敷での御仕着せとお湯を持ってきてもらえた。

久々に温かいお湯で体を拭くことができた。

大旦那様が直接話を聞きたいとのことで、髪も洗い、綺麗に着替えて赴いた。

お嬢様が亡くなられたこと、私が生き残ってしまったことをわびたところ、一筋涙を流されながらも、許していただけた。

私のせいではないから気を病むなとおっしゃっていただけ、私の心も少しは落ち着いたと思う。

ラジオにて毎日戦況報告がされているそうだが、前線は日々後退を余儀なくされており、首都に迫っているという。

塹壕なども戦車で乗り越えて進軍してくる帝国の進行速度は速いとのこと。

大旦那様も明日には共和国へ向け避難する予定だったという。

今日はゆっくり体を休めなさいとのことで、久しぶりにベッドで眠ることができた。

明日からは王旦那さまたちと行動を共にするほうがよいだろうか?


11月19日

朝、新聞を見せてもらうことができた。

ルフナ王国はもう瀬戸際の状態らしい。

首都は持ちこたえているが、首都から東側は帝国に占領されている状態とのことだ。

市民の犠牲者も増えているそうで、逃げ遅れた市民などが帝国本国へ強制移送されているらしい。

帝国内でどのような扱いを受けるか不明だが、まともな扱いは受けないだろう。

午後には大旦那様たちが用意した車で共和国へ向かうことになった。

家財道具などはほとんど置いていき、親類に助けを乞うとのことだ。

屋敷にはほとんど人は残っていなかった。

私が孤児であったことを説明したところ、乾パンや干し肉などを渡され、大旦那様の一筆と金一封をいただいた。

これがあれば、他国でもメイドとして就職しやすいだろうとのことだ。

本文でっち上げの私の経歴が記載されていた。

でも助かる。これがあれば仕事に就けるだろう。車には乗せてもらえなかったが、ここまでおぜん立てしてもらえたなら、とりあえず隣国へ向かうしかない。

乗り合いバスなどはもう満席で、空きはないとのこと。

私はまた徒歩で移動することを決めた。

隣国国境まではここから4日もあれば着く。


11月20日

農家を見つける。

声をかけてみたが誰も居ないようだ。既に避難したのかもしれない。

申し訳ないが、今日はここで一夜を過ごさせてもらう事にする。

今日は、戴いた保存食を使わずに済みそうだ。


11月21日

街についた。

すでに軍が駐留していた。

検問の軍人さんから、首都が陥落したと聞いた。

国王陛下は海外領に逃げ臨時政府を立ち上げたそうだ。

すでに国家としての体は成していないとのこと。

残っている国軍は、共和国軍に再編されるらしい。

戦闘に巻き込まれないよう、早めに逃げる事。

なるべく他の街には近づかないほうが良いと教えられた。

治安の維持ができなくなってきており、暴力沙汰や略奪も起き始めているとのこと。

検問周りには逃げてきた市民がテントを張っていたが、みなやつれた顔をしている。

私も似たようなものだろう。

衣服が多少綺麗なだけ、ましかもしれない。

私は配給のパンと携帯マッチ箱をもらうことができた。

この街で一泊することなく、足早に通り過ぎた。

護衛用として携えている銃の出番は欲しくない。


11月22日

寒くて目が覚めた。

もうすぐ雪の季節になる。早いところ隣国へ行かなくては、凍死しかねない。

私が一人で持てる装備ではテントなどない。

キャンプで一泊すればよかったかもしれないが、あそこは身の危険を感じた。

大旦那様からもらった地図を出す。

共和国まであと20kmほどだろうか、今日中に越境できればいいが…

火をおこし、白湯と昨日もらえたパンを食べる。

乾パンと干し肉はまだ2食分ぐらいは残っている。大切に食べよう。

途中の農家の井戸で水を分けてもらえた。

この家の人たちは逃げる気はないとのこと。

代々守り抜いた土地なので、殺されるとしても残ると言っていた。

ご厚意に甘えて一泊することができる。

今日はゆっくり眠れそうだ。


11月23日

国境検問は人でごった返していた。

共和国側が受け入れ人数を絞っており、貴族や金持ちが優先的に通れているらしい。

すでに共和国とて戦争状態のはずだ。

安全なところなんてないのかもしれないが、ここにとどまるのが安全とは思えなかった。

中には森や山を使いこっそり越境する人たちも増えていると聞いた。

ただ、越境したところで行先がなければ、路頭に迷うだけだ。

大旦那様のでっち上げてくれた経歴書を見ると、共和国ではなく、海を越えたディンブラ連合国に知り合いがいると書いてもらっていた。

つまり、共和国から船に乗るということになる。

素直に検問に並んだほうがよさそうだ。

徹夜も覚悟で並ぶことにした。


11月24日

無事検問を通過させてもらえた。

共和国にとどまる予定でないものは通行許可が出るのだそうだ。

連合国に行くことを伝えると、輸送トラックに乗るよう指示をされた。

連合国行きの船が出る港まで運んでくれるとのこと。

チケットが買えるか聞いたが、現地で聞けと言われた。

トラックの荷台にはほかにもルフナ国民と思われる家族や老人などが乗っていた。

中には女性だけの方もおり、声をかけられた。

その女性も首都から命からがら逃げてきたという。

皆似たようなもののようだ。

私を乗せたトラックが旅客ターミナルについたのは日没後だった。

建屋はあるが、倉庫のような場所で一夜を明かすことになった。


11月25日

朝から船のチケットを買うために並んだ。

大旦那様の一筆がビザ代わりとなった。

泣きたくなるほどありがたい。

運よくチケットがすぐに取れたが、ひとり身で助かったかもしれない。

家族で移動しようとすると部屋がなく、別々の船で移動しなくてはならない人が多いのだという。

3等客室を取ることができた。1部屋に4つベッドがある相部屋とのこと。

女性だけだから安心してよいと言われた。

頂いた金一封で間に合ったが、持ち込める荷物は10kgまでと制限されていた。

危険物の持ち込みは禁止だという。

今はリュックの底に銃は隠してあるが持ち込めるだろうか?

船の出航は3日後、私は荷物を整理した。

着替えと、銃、毛布で5kgほどだった。持ってきていた保存食は取っておくことにする。

船での1週間は食事が出るそうだ。味の保証はできないとのことだが、ぜいたくが言える立場ではない。

あまりにも不味ければ、最悪、保存食を食べることにする。

ただし、芋などは寄付しよう。

調理が必要なものを保存しておく意味はなさそうだ。


11月26日

久しぶりに洗濯をして体を洗う。

一時的な難民受け入れ地のように港がなっているため、配給の一つとしてサービスを受けられた。

船に乗る前に身なりを整えることができて助かった。


11月27日

私の乗る予定の舩が入港した。

噂では帝国の潜水艦が無差別攻撃をしており、連合国から来たこの船の船団も輸送船が2隻沈没したらしい。

船の移動は、護衛の駆逐艦が付く形でまとまって移動するとのこと。

魚雷が当たらないことを祈ってるよと船乗りたちが話していた。

私の乗る船は大丈夫だろうか?


11月28日

乗船手続きをした。

同室は同じ年齢ぐらいの女性2人と、女の子が1人となった。

女の子は同室女性の娘だそうだ。

旦那はすでに連合国で働いており、共和国から避難するのだという。

ルフナ王国民ばかりが乗っているわけではないらしい。

本当は戦争が始まる前に逃げたかったと言っていた。

船は連合国の旗を立てるとのことだが、攻撃されない保証はないとのこと。

避難経路の紙を渡されている。

手荷物検査はなかった。計量だけ。

無事銃を持ち込めてしまった。

夜船が出航する。

ここから1週間は船旅となる。


11月29日

無事出航して1日が過ぎた。

船団として移動しているため、近くに船が見えるのが楽しい。

ご飯は普通だった。ただ、久々に食べた焼き立てのパンはおいしかった。

1日2食、パンと具が少し入ったスープが出るそうだ。

メイドとして洗濯や掃除などはお手の物であるので、船内で仕事をもらうことができた。

小銭稼ぎ程度だが、1等客室の清掃業務をもらう。

船の御仕着せを借用できるとのことで、着替え問題が一時解消した。

連合国で文無しは厳しい。少しでも小銭を稼ぐ。


11月30日

順調。

清掃業務のチップは馬鹿にならない。


12月1日

ルフナ王国の全土が占領されたそうだ。

亡命ルフナ政府との間で戦争は継続するそうだが、軍はすでに共和国軍に再編されており、帝国兵と共和国国境でのにらみ合いになっているという。


12月2日

雪が降った。

船の外は寒い。

船内で知り合ったルームメイドの話では、本来この船は3日で連合国へ行けるのだという。

安全の為、護衛船団と共に移動しているから、足の遅い軍艦に合わせているせいであと3日はかかるとのこと。

宝の持ち腐れだと嘆いていた。


12月3日

夜中に突然起こされた。

警笛がこだまし、軍艦がサーチライトで海を照らしている。

直後、客室の小さな窓から見える位置で、別の船から、火柱が上がった。

帝国軍の潜水艦攻撃らしい。

その後もしばらく警報はなっていた。寝ることは出来なかった。


12月4日

昨日沈んだのは輸送船だそうだ。

客船よりも輸送船が狙われるらしい。武器の運搬などがあるからだそうだ。

だから安全だというわけではないと思うが、同僚のルームメイドのおかげで少しだけ元気が出た。

チップもたまってきている。

中にはチップ以上の金を一等客室から巻き上げる商売もあるらしいが、私は遠慮しておく。


12月5日

船は、日が落ちてから港に入港した。

無事に新大陸の連合国へ入国できた。

大旦那様の紹介状を頼りに、駅へ行き列車に乗る。

シッキムという街へは2日ほどかかるそうだ。

資産家の家があるという。

頼れるものは頼るしかない。

小銭を稼いでおいてよかったと思う。この国の通貨も混ざっていたので本当に助かった。

ルフナ王国のお金は、貨幣の金属的価値以外ほぼなかった。

国が崩壊するとはこういうことなんだなと、改めて認識した。


12月6日

車内は快適だ。

雪が降っているが温かく過ごせている。


12月7日

目的のシッキムシティについた。

この郊外にお屋敷があるという。

既に夜が遅いので、今日は駅前のモーテルに一泊する。

何とか資金が尽きる前につけそうだ。

ホテルのロビーで話を聞くと、この街はあまり治安が良くないらしい。

街の郊外にはマフィアの屋敷があると聞いた。

行く先ではないだろうか?大丈夫だとよいが…


12月8日

目的お屋敷は嫌な予感がした通りだった。

郊外の一番デカい屋敷はマフィアの屋敷だと言われていたお屋敷だった。

門の前には小銃をもったスーツ姿の男たちがいたが、大旦那様の招待状を見せると、中へ通してくれた。

意外と気さくな人たちだった。

私の訛りある連合国語を聞いても笑われなかった。

屋敷の主人にあった。

恰幅がよいが気前もよい雰囲気の男性だった。

招待状を見て、私を娘の世話係にしてくれるという。

手荷物検査で銃が出てきたことについては、度胸があると笑っておられた。

もしかしたら、別の仕事も頼むかもしれないとのこと。

大丈夫だろうか?

とりあえずメイドとしての職務を全うすることにする。


12月23日

屋敷にもだいぶ慣れた。

こちらのお嬢様はわがままを言う方ではなく、大変淑女らしい方だった。

また、給金も非常に良くしていただいている。

使用人でもお風呂に入ることができるとは思わなかった。

普段はシャワーだが、それですらありがたい。

住み込みで働いているが、たびたび強面の男性たちとすれ違う。

ただ、お屋敷の中ではとても良い人たちだ。

明るく気さくである。

間違いなく裏社会に通じていそうな方々だが、お嬢様の前では普通のおじさんという感じである。

旦那様に言われた通り、お嬢様のお世話以外の仕事もするようなった。

主に配達と情報収集だ。

ご近所さんに言われたものを渡して、世間話をして帰ってくる。

それを報告する。

詳しい内容は知らない。たまに手紙も預かる。

あまりかかわるのは危ない気もするが、どうせ身一つの人間である。

大旦那様がつないでくれた縁なので、命ある限り生きようと思う。


12月25日

クリスマスでお嬢様はプレゼントに大喜びだった。

ほしかったぬいぐるみをもらえたそうだ。

この国は、禁酒法と呼ばれる法律でお酒の販売ができないと聞いていたが、このお屋敷では普通にクリスマスパーティーにお酒が出ていた。

私も一口もらえた。

普段のまないのでくらくらしてしまったが、これがお酒の味なのだなと初めて感じた。

旦那様はこのお酒の密売などで富を稼いでいるらしい。

お嬢様にはそういったことは見せないようされているようだし、良い父親をしているが、夜たまに怒鳴り声が聞こえることがある。

別の街のマフィアと覇権抗争があるらしい。

何かあれば私がお嬢様の身を守るよう強く厳命されている。

身を挺して守るなどしたくはないが、目の前で人が死ぬのも、もう見たくない。


1840年1月5日

夜間突然銃声が聞こえ、私は慌ててお嬢様の部屋へ駈け込んで、二人でベッドの下に隠れた。

手には王国から持ってきた護身用の銃を握っている。

しばらく銃声が聞こえ、静かになってから旦那様がお嬢様の部屋に入ってきてくださったことで、事なきを得たことを知った。

覇権抗争で相手側が直接乗り込んできたそうだ。

しばらく部屋から出るなと言われた。

犠牲者がいるらしく、娘に見せたくないそうだ。

私も見たくない。

その日はお嬢様と抱きしめあいながら寝ることになった。


1月21日

お嬢様はだいぶ私になついてきたと思う。

お母様もいらっしゃるが、私のほうが隠し事なく話しやすいようだ。

聞くと、すでにお嬢様のお母様はお亡くなりになっているという。

抗争で撃たれたそうだ。

今の旦那様の奥様は、二人目なんだという。

また、連合国が大陸の戦争に介入するという。

帝国の無差別商戦攻撃に流石に頭に来たそうだ。

お屋敷の人も何人か戦争へと駆り出されるそうだ。

そして、共和国がすでに半分ほど領土を食われているという。

ただ、帝国側も補給線が伸び切っており、戦線が膠着しているとのこと。

共和国側として連合国が参加すれば、戦況はひっくり返るだろう。

ルフナ王国は復活できるだろうか?


3月6日

連合国軍が共和国軍と共同で上陸作戦を決行した。

橋頭保を確保し、順次大陸へ物資を届け、前線へ送り込むという。

出来る事なら私も協力したい。


5月7日

帝国がついに降伏した。

ルフナ王国の臨時政府もそれに合わせ、本土に復帰したらしい。

結局私はこの戦争に何も関われなかったと思う。

ただ、使用人ネットワークの一人に成れた。

使用人として知りえた情報を共有する秘密ネットワークだ。

スパイのようなものだと思う。

これはご主人様も参加を認めてくださった。

自分の身を守る為にも必要だとのこと。

最近はあまり裏のお仕事はされていないようで、密造酒の売買からも手を引いたそうだ。

そろそろ法律が改正されるらしいから、そのせいだと思う。

今更国に戻っても何もできそうもない。

後ろ髪をひかれる思いである。


6月13日

大旦那様から手紙が届いた。

伯爵様も戦死成されたそうで、王国の再建を手伝うことになったので、戻ってほしいというものだ。

今のご主人様に話をしたら、許可してくれた。

大旦那様には、かなりの恩義があるのだそうだ。

伯爵家も意外と黒いことをしていたのかもしれない。

私は1ヶ月後に戻ると手紙を出した。

戦争のさなか逃げ出した私が、また王国の地を無事に踏むことができるだろうか?


7月10日

ルフナ王国へ戻ってきた。

王国とはつくが、国王の権限はほぼなくなったそうだ。

貴族も解体され、自由主義国となった。

2ヶ月後には選挙があり、女性にも参政権が与えられるという。

また、軍隊を放棄し永世中立を宣言するという。

領土を回復したとのことだが、街は荒廃しており、農地も荒れ放題となった。

戦争による犠牲者は20万人。国の人口の1/5にもなるという。

他にも帝国による虐殺や、不当な扱いでの犠牲者も合わせると人口の1/3は減ったような状態だという。

ただ、街には活気があった。

とはいえ、メイドを雇うような豪商などそれほどいない。

大旦那様の元へ向かったが、昔のようにメイドとして雇うことは出来ないと言われた。

そのかわり、新しく行う金融業の手伝いをしてくれと言われた。

連合国とのつながりを活用してくれとのことだ。


8月4日

私は大旦那様が始めた銀行業の手伝いとして行員として働いている。

特に外国株や投機などの窓口業務だ。

連合国のご主人様からも資金を預かっている。

預かった資金で王国の資産を購入し、別の会社に売却するという。

どういうことかよくわからないが、指示通りにとのことで協力している。

何か危ないことに足を踏み入れている気がする。

また、最近彼氏ができた。

とてもいい人だ。

上手くいくとよいと思う。


12月24日

彼から結婚しようと言われた。

もちろんその申し出を受ける。

やっと私にも幸せがやってきたかもしれない。


1841年1月

妊娠した。

そのため、会社を辞めることになった。

私の業務は別の者が引き継ぐとのこと。

旦那は転職して別の地方銀行に勤めるという。

危ない仕事から逃げることができたかもしれない。


1841年9月

娘が生まれた。

目元は旦那に似ていると思う。

旦那は、私に似て可愛くなるだろうと言っている。

この幸せが長く続くことを祈る。


日記はここで途切れている。

このメイドはこの出産後、もう一人男児を出産したという。

とても幸せな家庭を築いたとのことだ。

ちゃんと歴史を学んでいる人だと、あの戦争をギュってした感じだとわかっていただけると思います。

というか開始年でわかるかと。

終わる年がぜんぜん違いますがね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 開始年を100年ずらしてあるという解釈で良いのでしょうか…
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