第87話 ロシジア王国自治領
もう1話だけ書いてみました
『何もない・・・』
一面の荒野に立ち尽くす。旧ロンジン王国の面々。牛に引かせた荷車に積まれたジャガイモだけが食料であった。荒地と言いながら、ロシジアの西に広がる荒野の調度真ん中付近には、湖があったのである。土地が痩せていたことから開墾しても麦は実をつけなかった土地・・・。それが彼らに残された土地であった。
以前、ロシジア王国が開拓しようと、ここに拠点を作ったことがあった。その残骸・・・廃屋が唯一の建物であり、彼らはここで暮らす以外に方法が無かった。
『みんな聞いてくれ』
そう言ったのは、ローガス=フォン=ロイズ、旧ロンジン王国最後の国王の王弟である。そして、ロシジア王国国王、ロンガス=フォン=ロイズは彼の従兄弟でもあった。彼は、モスビスによって倒されたロンジン王国の残党を率いて、ロシジアに亡命。ロシジア王国国王、ロンガス=フォン=ロイズは、彼を自分の弟にすると宣言したため、つい最近まで、ロシジア王国の王弟と呼ばれていた男である。
『今は、ここにある廃屋に住むしかない。非常に厳しいが、ジャガイモをこの周辺に植えてみよう。それ以外の方法はない。明日から狩りの出来るものは、この先にある森に行って、魔物を探そう』
そう言って、廃屋の一つに歩いていった。
・・・
翌朝、ローガスは、狩りの出来そうな数人を率いて、大陸南西端の森に入っていた。乗り物はジャガイモを運んでいた牛と荷車である。ジャガイモを廃屋に置いて、動ける牛全てに荷車をつけて森に来ていた。
しばらく内部に入ると、ローガスは人のような何かが動くのを見つけた。
(あれはオーク!)
仕留められれば、皆が腹いっぱい食べることが出来るだけの肉が取れる。しかし、まともな剣を持っているのはローガスただ一人・・・。普通であれば勝ち目はなかった。たが、幸運にも、このオークは1体だけ、恐らく、遠くないどこかに仲間がいるのだろうが・・・。この森に生えていた竹のようなものをローガスは何本か切ると、切り口を斜めにカットした。
一緒に来ていた仲間に
『いいか。俺がオークを誘き出す。お前たちは隠れていて、オークが近づいてきたら、これで突き刺せ!』
ローガスの指示に皆黙って頷いた。他に方法がなかったのである。
・・・
ローガスは、オークに襲い掛かった。といっても、注意を引くためである。脚を切りつけられたオーク怒りの表情でオーガスを追い始めた。逃げながらも、オークを仲間の方に誘導していくローガス・・・。何とか、仲間が隠れているところまでオークを誘導すると、剣を構えて振り返った。怒り心頭のオークはかまわず突進してきたところ、左右から竹のような物で作った即席の槍がオークに突き刺さった。
『ブオー!』
オークは謎の雄たけびを上げた。
(ヤバイ。仲間が来る!)
ローガスは持っていた剣でオークの首を刎ねた。首と胴体の離れたオークは、ゆっくり地面に倒れたのである。
『早く荷車に運ぼう』
ローガスがそう言った次の瞬間、2体のオークが近づいてきたのを発見した。
(くそ!もう少しだったのに)
ローガスは心の中で舌打ちした。その直後、
『オークが来た、逃げるぞ!』
そう言って、荷車を置いていた方に駆けだしたのである。
・・・
『はあはあ・・・何とか戻ってこれた』
仕留めたオークは回収できなかったものの、犠牲者を出さずに荷車のところに戻ってこれたのである。だが、逃した獲物は大きかった。仲間の気持ちが沈んでいるのは明らかだったのである。
『えっ!あれ・・・』
仲間の一人が森の方を指さしながら、何か言っている。顔には、“絶望”と書いているようなくらいの悲壮感が溢れていた。ローガスが慌てて指さしている方を見ると、2体のオークがこちらに向かって走ってきているのが見えたのである。まさか、森の外まで追いかけてくると思っていなかった痛恨のミスであった。
(もはやこれまで・・・か)
剣を持って立ち上がったローガスは
『だれでもいい。廃屋まで戻ってこのことを伝えてくれ』
ローガスの言葉に仲間たちは一斉に駆けだした。何故か牛すら無視して。荒野を逃げ始めた仲間を見て
(誰か一人でも助かれば・・・)
ローガスはそう思いながら剣を握り直す。
(少しでも足止めするのだ)
・・・
(もはやこれまでか)
2体のオークに切り掛かったローガスは捨て身の攻撃で、オークを足止めすることに成功した。が、2体のオークは棍棒のようなものを持っていて、それを振り回した結果、オーガスの剣は根本から折れてしまったのである。もはや、戦うことなど不可能であった。襲い掛かってくる2体のオークに立ち尽くすローガス・・・その瞬間を待つようにそっと目を閉じた。
(???)
何時まで経ってもおローガス攻撃されなかった。おかしいことに気が付いたローガスが目を開けると、そこには、槍が刺さったオークが2体倒れていたのである。
『おい。諦めるな』
ローガスが声のした方を見ると、そこには、槍を持ったたくましい女性と、何か神々しいのだが、軟弱に見える男(?)がいたのである。
『間に合いましたね』
軟弱そうな男が言った。
『こいつらをどうするんだ』
たくましい女性が軟弱そうな男に言った。今にも口論を始めそうな2人に
『あの・・・どちら様で』
ローガスは理解出来ない事態に混乱していた。
・・・
『私は、ハイム村・・・じゃなかったロンジン国でモスビスの後継者になったシャールカだ』
その説明に軟弱そうな男は頷いている。
『何!モスビスの後継者だと!』
既に剣すらないローガスであるが、敵意むき出しでシャールカを睨んだ。
『そんな怖い顔をしないでください。あなた達を助けるために来たのですから』
軟弱そうな男が言った。
『お前は誰だ!』
ローガスが叫ぶと
『私は阿久津 翔大・・・君たちには初代アンクス王と言った方がいいのかな。訳あって、この世界の神を引き継ぐことなった』
軟弱そうな男の説明に驚くローガス。
『おい、ローガス。神様の前だぞ。解っているのか?』
シャールカが呆れたように言うと
『何故、神がモスビスの後継者と一緒にいる!やはり我々は見捨てられたのか!!』
ローガスが混乱していた。
『そんなことはしない・・・助けに来たんだよ』
阿久津は諭すように言った。
『ロンジンに帰れるのか?』
先程までの怒りはどこにいったのか、ローガスは呟くように言った。
『いや。それは出来ない。君たちには、ここに新しい国を作ってもらいたい』
『新しい国?』
阿久津の話に思わず言葉を返したローガスであった。
『そう・・・ロシジアから持ってきたジャガイモは食べてしまいなさい。ここでは、植えてもあまり育たない。代わりにこれを植えなさい』
そう言って阿久津が出したのは、サツマイモの蔓であった。
この蔓を湖の周辺に作った畑に植えなさい。そして、湖の水を与えるのです。半年もしないうちに、土の中に大きな芋が出来るでしょう。それで飢えをしのぎなさい。
そう言うと、阿久津はローガスたちが連れてきた荷車いっぱいにサツマイモの蔓を載せた。
『さあ、牛たちと集落に帰りなさい』
阿久津がそう言うと、牛たちは荷車を引いて湖を目指して歩き出した。
『あの廃屋の内、一番大きな建物の床を調べなさい。地下にあなた達が必要な生活物資があるでしょう』
阿久津はそう言うと、シャールカと共に消えてしまった。
(えっ!)
ローガスは消えてしまった阿久津のいた方向を呆然をながめていたが、
(牛!)
と慌てて振り向くと、誰も指示していないにも関わらず、牛たちは、湖に向かって一列になって移動していたのである。
(神は我々を見捨ててはいなかった!)
ローガスは心の中で叫んだ。
・・・
『おい、阿久津。あれでいいのか?』
モスビスに戻ったシャールカはそばにいた阿久津に言った。
『大丈夫でしょう・・・。シャールカさんももう少し、私を神だと思ってもらえると・・・』
『訳ないだろ!』
阿久津の話を遮るようにシャールカは言った。
『確かに、今、あいつ等まで助ける余裕はこの国にはないけどさ・・・あんまりじゃないのか?』
シャールカの言葉に
『彼らは国を捨てたのです。その責任は取ってもらいます。だけど、最低限の支援はしましたから・・・』
『まあな』
阿久津は、彼がアンクス王だった時代に蓄えておいた保存食、武器、生活用具などの入った収納袋を廃屋の地下に作った空間に移動させていたのであった。それは、湖の廃屋に住むことになった旧ロンジン王国の人々をサツマイモが収穫できるだけの間、養うには十分だったのである。
『阿久津。お前の転移って便利だな。今度ハイム村まで連れて行ってくれよ。父上やボナとロナにも会いたいんだよ』
そう言って阿久津を睨むシャールカに
『神の力は乱用するわけにはいかないのです』
と言って消えたのだった。
『逃げやがった!』
シャールカの声がモスビス王宮に轟いた。
新しい小説書き始めました。
ジュアル=ラィシカーラクセンの冒険=異世界転生?した自家用パイロットの数奇な人生=
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文明の栄えた世界が欲しい神様によってコピーした世界が出来た。そして、その世界では一人の自家用パイロットの記憶が国王の息子に組み込まれた。だが、運命のいたずらで追われる身になってしまう。コピーされた世界は、滑走路が謎の遺跡と化しており、ターミナルはダンジョンと化していた。




