第8話 オークと遭遇
翌朝、遅く起きて朝食をとったのち、ブリトンの街を出発した。北門から街道をハイム村に向かう。当然、橋はまだできていないので、徒歩である。街で食料を買い込んでおいたので、道中の食事は大丈夫だろう。アイテムボックスさまさまである。
・・・
橋は、まだ復旧工事に掛かってなく、前来たままであった。ミツツノは討伐したので危険はない・・・はずだった。が、橋の近くに来た時、ミツツノの小型版のようなものが突進してきた。
『まさか、先日の子供~』
『魔物って子供とかいるのか?』
と妙な会話をしている。落とし穴は作ってないので、ショートソードを抜き、構える2人。ミツツノをほぼ同時に左右によけたとき、ショートソードを突き刺したところ、あっけなく討伐成功となった。
『またブリトンに戻るのは面倒だよね~』
『とりあえず、ハイム村に持っていこう』
といいうことで、アイテムボックスに収納する。
・・・
川の浅瀬を見つけてようやく川を渡り、せっかくだから水を補給して、さらに進んでいく。
『商人も行けてなかったようだから、ハイム村がどうなっているかわからないね~』
ロックが心配そうに話し出す。
『他に選択肢もないし、行ってみるしかない』
セインは自分にも言い聞かすように話すのであった。
・・・
川を渡り、更に2日歩いた。何故か、魔物が現れることもなく・・・。
(かえって変な気がするが・・・)
2人が警戒していると、街道の脇に生えている草がカサカサと音を立てる。
(何かいる!!)
『オークだ!!』
ロックが叫ぶ。その瞬間、2足歩行の巨大な豚の化け物が2体現れた。
ショートソードを抜き、盾で防御の姿勢をとる。オークはどう見ても襲ってくる気満々だ。
ほぼ、2体同時に襲ってきたのに対応すべく、盾で殴り掛かってくる腕(前脚?)を防ぎながら、ショートソードで切りつける。さすがに、ミツツノのようにはいかない。オークの攻撃は、何とか盾で防げたものの、それぞれオークの腹部にわずかな傷をつけるのがやっとであった。その後も、殴り掛かってくるオークを盾で防ぎながら切り続け・・・。
すっかりへとへとであった。オークもかなり弱っていたが、致命傷は与えることができないでいたため、何時まで続くかわからない状況だった。そんなとき、
突然、オークに向かって槍が飛んできた。たて続けに2本。それぞれ、1づつオークの胸に刺さった。
『大丈夫か!!』
ばったりと絶命したオークの背後から1人の少女?が現れた。
『助かった~』
『助けていただき、ありがとうございます』
少女に向かって2人が話すと
『オークが完全に気を取られていたから、簡単に仕留められた。ラッキー!!』
と、2人の話を聞いているのかいないのか、話始める。
『私はシャールカ。ハイム村の住人だ。最近、ブリトンから商人が来なくなってしまい、様子を見に行こうとしていたところだ。何か事情を知らないか?』
どうやら、橋が落ちていることを知らないらしい・・・。
『途中の橋が落ちていている・・・』
セインは説明しだすと
『なんと、何時頃復旧しそうなのか?』
『橋の付近にミツツノがいて、工事ができなかったそうだ。討伐してきたからもうすぐ橋の工事も始まるだろう』
『お前たちがミツツノを討伐したのか?』
どうやらシャールカはミツツノを知っているらしい。
『オークごときにあんなに苦戦していたお前たちに倒せるとは思えんが・・・』
あまりに的確な指摘に、ロックはミツツノ討伐の経緯を説明した。
『なるほど、うまくやったな。さて、ハイム村までは、半日も歩けばつく距離だ。この街道を進んできたということはハイム村来るつもりだったのだろう?案内してやるからついてこい!!』
それだけいうと、シャールカは元来た道を引き返し始めた。
『ちょと、このオークをそのままにしておくのはもったいないよ~』
ロックが慌てて、シャールカを止める。
『こんなでかいの2体どうしようというんだ。担げるか訳がないだろうが・・・』
シャールカがむくれて言う。
『ちょっとお願いだから向こうむいてくれる~』
シャールカはロックに背を向ける。
次の瞬間、2体のオークは消えた。正確には、ロックのアイテムボックスの中に収納されたのだが・・・。
気配を感じたのか、シャールカが振り向くと、さっきまであった2体のオークは完全に消えていた。
『お前たち、一体何をした?』
シャールカは胡散臭そうに2人を見ている・・・。明らかに危険人物に認定されたとしか思えない目で見ている。さっきの2本の槍を見ただけでも、かなりの実力者らしいシャールカを敵に回す訳にはいかない・・・。
『これは一種の魔法のようなもので・・・』
ロックが冷や汗をかきながら話し始めると、
『そんなもん。あるはずないだろうが!!』
シャールカが一喝する。その声にセインとロックは硬直した。
(こいつ怖い・・・)
思わぬところで、オーク以上の強敵に遭遇してしまった。
・・・
『つまり、アイテムボックスという、何故かわからない無限の収納があるということか・・・』
2人はシャールカにアイテムボックスの説明をせざるを得なかった。我が身の安全のために・・・。
『どうか、これは内密に・・・』
ロックが頼み込むと。以外な返事が返ってきた。
『ほう、父上に伝わる言い伝えのとおりだな・・・』
『・・・』
セインとロックはこの言葉に呆然としている。
『とにかく村に行こう。これを見せられては、父上に会ってもらわないわけにはいかない』
シャールカが街道を歩き始める。慌てて2人はシャールカの後を追った。