第78話 旅立ち
15歳の王子は国から勝手に出歩けない・・・。
『ウェブハイトさんに会えるかも・・・しれない』
セインはそう言うと、ロックを睨んだ。15歳になった彼は、今も王子であることは変わらないが、次期国王として忙しい日々を送っていたのである。そう救国の英雄として・・。
(本当の英雄は、ウェブハイトさんであって私ではない・・・)
瘴気封印作戦中、JA4169と思われる空馬車が南に消えていくが目撃されており、アンクス王国内でもいくつか目撃証言があった。だが、情報伝達が曖昧かつ遅いこの世界では、それらの目撃情報が本当に瘴気封印作戦のときだったのか、イマイチはっきりしない。また、JA4169と同時に飛んできたはずのCessna172は、どこに行ったのかすら不明であった。
(そう・・・阿久津は何処に行ったんだ?)
瘴気封印作戦時、Cessna172を操縦していたのは、阿久津である。セイン、ロック、シャールカにとって、阿久津はウェブハイトと同じ異世界者?らしいというだけで、よく解っていなかった。
「セイン王子。王子はローマンから動けないですからね~♪」
ロックはおどけて言っている。本来なら、セイン王子にこんな態度をとれば、不敬罪で投獄されてもおかしくないのだが、ロックは特別に許されていたのである・・・但し、公の席でないことが条件ではあるが・・・。
『わかっている・・・わかっているが、自分でもう一度、討伐基地に行きたい!』
そう言って右手に拳を作るセイン。ロックはそんな姿に哀れなものを見るような目で
『残念ながら、王子は無理ですね♪』
ロックは諭すように言った。プレーン家の調査団も、セインが行きたがったのを周囲が引き留めたのである。ロックの部屋はともかく、セインが逃亡しないように、厳重に護衛という監視がついていた。
『せめて、コルノーが味方してくれれば・・・』
セインが寂しそうに言う。命がけでセインの護衛をしたコルノーたちは、城の護衛として要職についており、セインの配下ではなくなっていた。もっとも、コルノーたちもセインがローマンを抜け出そうとするのを認めない側にいるので、協力は得られそうにない。
『だから、今回も私が一人で行ってきますよ♪』
何故かロックは嬉しそうである。彼だけであれば、アンクス王国に出かけても何も言われそうにはない。
『ううっ・・・』
返す言葉もないセイン王子だが、
(ロックだけでは不安だ・・・誰か連れて行かないと・・・)
その時、部屋の扉が豪快に開いた
セイン王子とロックが、扉の方を向くと、そこには見覚えのある女性がいた
((シャールカ!!))
『おい!プレーンの家から何か見つかったか!』
シャールカの声が響いた。
・・・
慌てて、シャールカを部屋に入れ、扉を閉めさせ、入り口を警備していた兵士達に誰も入れないように指示したのち、
『いつの間にローマンに来ていた?』
セインは、シャールカを読んだ記憶はない。ロックも何も聞いていない。
『ハイム村まで騎士が来てな・・・プレーンの家を調査することになったという話を聞いたので、こうしてやってきたのだ。ロックなら何か知っているはずだと思ったからな』
どうやら、周りの制止も聞かずに一人で来てしまったらしい。
セインとロックは、頷き合うと
『魔物剣があったと思われるところから、ICレコーダーが見つかった・・・』
シャールカに事情を説明するのだった。
『・・・つまり、プレーンはそのICレコーダーの存在に気がついていなかったと・・・』
ロックの説明を聞きながらシャールカは頷いていた。
『この内容を聞いていたら、インガスに行った理由が解らないからね』
セインが念を押すように言う。ロックとシャールカがそれに頷く。
『そして、それ以上に気になるのは、今も討伐基地が稼働しているらしいこと♪』
そう言って、ICレコーダーが討伐基地の方位を示しているを見せるロック。
『ウェブハイトさんの消息も分かるかもしれない・・・』
セインの言葉に、ロックとシャールカは首を捻る。
((それは無理だろう・・・))
ロックとシャールカは思っていた。
『討伐基地の様子を見てくる必要はあると思うよ』
シャールカが言った。その言葉にちょっと驚くセインとロック
((シャールカが、まともなことを言っている))
『ここにいる3人くらいしか、討伐基地のことは解っていないはずだ・・・』
セインの言葉に頷く、ロックとシャールカ。アンクス王国にさえも、討伐基地のことはちゃんと説明していない。正確な位置を知っているのは、ここにいる3人以外には、プレーンとジルダくらい・・・。プレーンは戦死していたことが判っており、ジルダはアンクス王国に戻った後の消息が全くない・・・。討伐基地のことを相談できるのは、ここにいる3人しかいなかったのである。
『私とロックで、討伐基地に向おう・・・ジルダには連絡がつかないし、プレーンはあの世だし・・・』
シャールカの言葉に悔しそうな顔をするセイン、驚きながらもほほ笑むロックであった。
・・・
『どうして南門から出るのだ?アンクス王国へは東門からだろう・・』
ローマンの南門には、旅の姿になったロックとシャールカがいた。二人とも、フード付きにローブを被っているため、これが、瘴気封印作戦の英雄であるロックとシャールカであることに気が付いていない。そして、魔物が出なくなったローマン王国では、門は開放されており、出入りを誰も見ていない。これは、ローマン以外でもほぼ同じで、国境でさえも、身分証明書の提示程度のみになっていた。そして、ロックとシャールカは、旧冒険者ギルド発行の冒険者カードを持っていたのである。冒険者ギルドは、魔物がいなくなったことから解散となったが、冒険者カードは身分証明書として有効とされたため、未だに国境を通る際には身分証明書として使われていたのである。
『アンクス王国に直接入ったら、警戒されるだろう♪』
ロックはそういいながら歩いていく。そう、つい先日、アンクス王国と合同でプレーンの家を調査したばかりなのだ。なので、ロックとシャールカがアンクス王国に向えば、何かアンクス王国に隠している秘密を掴んだと思われても不思議ではない。いや、消息のしれないジルダが何か探りを入れている可能性も考えなければならないとロックは思っていた。
『だからって、南峠経由で行くとは・・・』
シャールカは、国同士の駆け引きなど興味がないので、アンクス王国に知られようが関係ないと思っていたのだが・・・。
『討伐基地の施設は、俺たちから見て、異常だったよね♪』
『たしかに』
『アンクス王国が討伐基地の存在を知ったら・・・』
『放っておかないね・・・』
『だから、討伐基地のことは言えないんだ♪』
『・・・』
ロックの説明に納得するのしかないシャールカであった。
・・・
一方・・・
『ミグ!』
セイン王子は、宰相であるミグのところに現れた。ロックとは事前に打ち合わせ済みである。
『セイン王子。いかがされましたかな?』
普段、来ることがないセイン王子の訪問に驚きながら
(こりゃロックと何か企んでいるか・・・)
ロックとシャールカがこっそり、南門から出ていったことの報告を受けていたのである。
『ロックとシャールカには、極秘任務を頼んだ・・・』
セインは話始めた。
『・・・ほほう』
ミグはセインの説明を黙って聞いていた。
(この国の国王に話もしないで、私にだけか・・・)
セント王には何も話していないらしい。
『つまり、アンクス王国南部にある遺跡の調査に向かわせたのですか?』
『そうだ』
ミグの問いに答えるセイン王子。ミグは頭を抱えた
(あまりに見え透いていて・・・でも、アンクス王国を刺激しないで調査は必要かもしれん・・・“トウバツキチ”なるものが今も動いているならば、その実態を確認しておいたほうがいい)
そう、ミグは謎の施設“トウバツキチ”というものがあるということは知っていたのである。それが、瘴気封印装置のある施設ということは知らない・・・。アンクス王国にその事実を公開していない以上、状況調査をするには、ロックとシャールカしか考えられなかったのである。
『ではハイム村には、適当に私から連絡をいれておきましょう』
ミグにはそう答えるのかやっとであった。
(もう引退させてほしいのだが・・・当分、無理そうじゃわい・・・)
ミグはため息をついた。
ミグ=ファイン 現在75歳・・・引退出来るのいつの日か?
次回は8/13 9時の予定です。




