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第7話 ブリトンの街

結局、ブリトンの街まで歩きながら、1週間かけてブリトンの街に到着した。初日にあれほど怖かったテントの中も、疲労が勝ったのか2日目からは爆睡であった。途中出てきた三つ目ウサギや集団で襲ってきた三つ目ネズミもショートソードで切り倒し、連日、丸焼きにして食べていた。

『ロックはどこで、魔物の解体を覚えたんだ?』

『初めは、倒したら、街のギルドに持って行って解体してもらっていたら、商人ギルドのおっさんに解体場に連れてかれてしごかれたんですよ~』

 平然と答えるロックだが、セインは危ないものを聞いたような気がしてしまった・・・。

『おい、おっさんは親切で教えてくれただけだ。別に何もされてないです。私の体は汚されてませんよ~!!』

(この発言自体が危険な気がするんだが・・・こいつ男だろ、確か・・・)


・・・


ブリトンの街は、人の高さくらいの塀に囲まれていた。かなり急いで作ったらしく、その作りは、土手を作ってから、外側を壁状に削り、レンガを積んだものであった。

(こんな作りで大丈夫なのか・・・)

街の入り口には門があり、兵士のようなものがいたが、人の出入りに対しては何も言わない。

『魔物が来た時に門を閉めるための兵士だからね』

ロックがセインに説明する。魔物が街に入らなければよいので、人は通っても何も言わないらしい。


『久しぶりに宿に泊まろう。ベットで寝れるぞ!!』

セインは久しぶりの街にほっとしていた。

『その前に・・・』

ロックがセインの右腕を掴む。

『商人ギルドに行って魔物を換金しよう!!』

問答無用で、商人ギルドに向かうロックと、右腕を掴まれて連れられているセインであった・・・。


・・・


商人ギルドは街の北側にある市場に併設されるように存在した。商人ギルドで引き取られた食材などは、市場で販売する必要があるからである。

ロックは商人ギルドの近くに来ると、建物の陰に隠れるようにしたのち、アイテムボックスから大きな袋を取り出した。そして、その中に、食べきれなかった魔物たち・・・途中、討伐し続けた魔物をすべて放り込んだ。なんでこんなところで面倒なことをしているのかと言わんばかりにロックを見ているセインに対して、

『ギルドの中で、いきなりアイテムボックスから出したらまずいでしょ~』

そう、この世界ではあるはずののないものを見せるわけにはいかないのだから・・・。

 普通なら、とても持てるはずの無いような大きい袋に詰まった魔物を無理やりロックが担いで、ギルドに入る

『換金してくれ~!!』

いきなりロックは叫ぶ。その声に中にいた人が一斉に振り返った。

『買取はこちらの窓口にどうぞ』

30代くらいと思われる女性職員らしき人が、カウンターから声をかけてきた。

『ちょっと重くて・・・』

カウンターの奥から、職員と思われる数人の男たちが現れた。

『お前たち、どうやってこんだけの量を持ってきたんだ?』

恐らく数人の男な中で最年長と思われる人物が話しかけてきた。と同時に、職員が袋ごとカウンターに運び込み、袋を開ける。

『三つ目ネズミ20匹』

『三つ目ウサギ30匹』

どういうわけか、さっき討伐したかような状態である・・・。

『なんかよくわからんが、上等な魔物だ。すぐ引き取り査定するから待っていろ』

最年長と思われる男はそういうと、袋ごと魔物をカウンターの奥に持って行った。


・・・


結局、三つ目ネズミが20匹 小銀貨20枚、三つ目ウサギが30匹 小銀貨60枚となった。カウンターの女性から、買取代金として銀貨8枚を受け取ったが、ロックは金額に不満であった。

『なんでこんなに安いんだ!!』

『それはですねえ。この量だと、バーゲンセールをしないと売れないんですよ。ちょっと市場でだぶついているので・・・』

カウンターの女性が事情を説明してくれた。ブリトンの街は、ローマンのように大きくないため、多くの魔物肉が入ると売れ残ってしまうらしい・・・。


・・・

商人ギルドで教えてもらった宿に向かう。魔物が出るようになってから、通行量が多少減ったらしく、今もやっている宿は2件しかないらしい。一様、両方の宿の前まで来てみたが・・・

『どちらも似た感じですねえ~』

『どっちでもいいよ。早くベッドで休みたい!!』

セインはテントでの宿泊が堪えたらしい。。。


たまたま見ていた方に入ってみた

『2人なんですが・・・』

中に入ると、7歳くらいの女の子がカウンターにいた。

『ようこそ、ブリトンの朝へ』

<ブリトンの朝>という名の宿であった。ちなみに、もう一軒は<ローマンの宿ブリトン>というらしい。

『食事付きですと銀貨8枚、食事無しだと銀貨6枚になります』

地方なので物価は安いらしい。先ほど商人ギルドで買い取ってもらった代金が、そのままなくなる。食事付きで依頼すると、鍵を1つ渡された。

『2階になります』

セインとロックは2階に上がる。部屋を開けてみると、ベットが2つと洗面があるだけであった。

『さすがに風呂はないらしい』

ロックは言うと、

『今は、とにかくベッドで一休み』

というや、セインはそのままベッドの1つにダイブして・・・

『飯の時間になったら起こしてくれ!!』

といったかと思うと、すぐに寝てしまった。

『やれやれ』

ロックはもう1つのベッドに座って、寝てしまったセインを見る。

(今まで、王宮からほとんど出たことがない生活からいきなりの冒険者で気が張っていたんだろうな・・・)

今頃になって、魔物を入れた袋を返してもらい忘れたことに気が付いたロックであった・・・。


・・・


夕食は何故か、三つ目ウサギの肉料理だった。

『これって・・・』

『多分、本日のお買い得品だったんだろうね~』

但し、宿ではちゃんと料理してくれていたので、野宿していた時の、丸焼きとは比べ物にならないくらい美味しかった。

『どちらまでいかれるのですかな』

厨房から40代くらいの男の人が現れた。カウンターの女の子の父親で、宿の主らしかった。

『魔物が出始めてから、人の往来が減ってしまってね。商人以外はほとんど来ないのですよ』

『冒険者とかは来ないのですか』

セインが訪ねると、

『冒険者ギルドもできて、登録したものもいるが、街に住んで、近くで魔物を狩ってくるだけらしい・・・旅をしている冒険者はほとんど見ないですよ』

『王様は、冒険者が魔物を退治してくれるのを期待しているんでしょうがねえ・・・』

宿の主は、魔物退治に期待できないといわんばかりであった。

『私が、きっと魔物を退治して、魔物のいない世界に戻して見せます』

セインは思わず大声がで叫んでしまった。

『おお、期待していますよ。冒険者殿』

と宿の主は言うが、あきらめている感じが伝わってくる。

『実ハイム村に行こうと思っているのです』

ロックが宿の主に伝えると、

『ハイムの村へは歩いていくしかないですよ』

『ええー!!』

セインとロックの声が揃った。

『街道が魔物の巣になっているようで、街道を通って行った商人は誰も帰ってきませんでした。おやめになった方がいいですよ』

『馬でも買って乗っていけば・・・』

『街の兵士の方によると、途中の橋は落ちていて渡れないそうです。川の浅瀬を徒歩で渡るしかないそうで・・・』

『何故、橋を直さない。』

セインがムッとしながらいうと

『橋のあった近くにミツツノが出るそうです。かなり強いらしく』橋を架ける作業ができないと聞きました』

『明日、冒険者ギルドに行って情報を仕入れようね~』

と何故か明るいロックであった。


・・・


翌日、宿を出て冒険者ギルドに向かう。なんと、冒険者ギルドは商人ギルドの一室であった。昨日の魔物肉の件もあって気が引けたが、他に情報仕入先もないので、商人ギルドに入ると、

『昨日の方ですね』

とカウンターの女性に声をかけられた。

『袋をお返ししてなかったので、とりに来こないか待っていたんです』

と言いながら、昨日、魔物を入れていた袋を返してよこす。

『ああ、どうも』

ロックはバツが悪そうに袋を受け取る。

『あの~この袋、王家の紋が書かれていますが、大事なものではないのですか?』

と言われて、ロックははっとした。

よく見ると、ローマン王家の紋が書かれている。ミグに渡された荷物が入っていた袋をそのまま使ったのだが・・・ちょっとまずい。

『これは、ローマンに行ったとき、王家の方に謁見する機会があり、その方から冒険者に下賜された袋なんです。魔物をたくさん狩ってほしいと言われて・・・』

ロックの言い訳に、

『そうなんですね。やっぱり大切なものなんですね』

と妙に納得している。

『冒険者ギルドはどこですか』

話を変えた方がよいと思ったセインが聞くと、

『この奥の部屋です』

セインとロックはカウンターの女性に軽く会釈して、冒険者ギルドの部屋に入っていった。


・・・


『ここが冒険者ギルドですか・・・』

ロックが扉を開けながら入ると、そこには、事務机が2つと応接セットがあるだけだった。

『おう。ここが冒険者ギルドだ。登録しに来たのか?』

50歳くらいと思われる体つきのよい大男が話しかけてきた。

『いいえ。ローマンで登録は済ませています。ハイム村に行こうと思っているのですが・・・』

ロックが説明しようとすると、

『おお、なんと都合がいい。俺は、ギルドマスターのニックだ。依頼を1件受けてほしい』

大男は嬉しそうに話し出す。

『冒険者ギルドはできたが、登録したのは弱い奴ばかりでな。ハイム村に行く途中の橋が落ちてしまいかけなおさないといけないのだが、魔物が強くて工事ができねえ・・・。商人ギルドからも何とかしてくれと言われていて困っていたんだ。ちょっと討伐してきてくれ』

『いや、橋の工事を待っているほど余裕はないんですが・・・』

ロックが断ろうとすると

『いや、ミツツノと呼んでいる猪の化け物さえ何とかしてくれれば大丈夫だ。あれを討伐しないと、歩いてハイム村にいくこともできねえよ』

とニックはいい、何故かサムズアップしてくる。恰好つけている場合じゃないだろうに・・・。

『なぜマスターがいかないのですか?』

セインは疑問をぶつける。この大男なら、何とかできそうに見えるからだ。

『そりゃ、できるなら何とかしたいんだが・・・』

と事務机から立ち上がると・・・右脚がなかった。正確には、木で作った枝を義足にしていた。

『昔の怪我で、俺は戦うことができない体になっちまったんでな・・・』


・・・


結局、断ることもできず、ハイム村に向かう街道をセインとロックは歩いていた。商人ギルトによると、橋の近くに荷台が放置してあるはずなので、必要なら使ってよいとのことだった。

『ハイム村は遠いですねえ~』

ロックが呑気にいうと、

セインは王国の兵も派遣できない状況が気になるのか、

『早く魔物を追放しないといけない・・・』

とぶつぶつ言いだした。


・・・


2日後、問題の橋のあった付近に到着する。大した川ではないので、歩いてならば渡れそうなのだが、橋は何故か跡形もなく無くなっていた。

街道の両脇には森があり、薄暗い・・・。と何か森の中で光るものがあった。

 

 角を3本は生やした、200㎏はあろうかというでっかい猪が突進してきた。

『猪に3本も角あったけ~?』

冒険者ギルドでミツツノの話を聞いていたので、知っているはずの2人であったが、実際に見ると、その迫力に恐ろしくなった。ショートソードを抜くこともせずに逃げ始めた2人。ミツツノは2人に対して突進していく。

(うまくいった・・・)

2人は途中で2手に判れ、何故か、また合流して逃げていく・・・。ミツツノがその後を追いかけていくと、突然、ミツツノの地面がなくなっていた。事前の作っておいた落とし穴である。穴の中には木で作った針の山を置き、穴は見えないように、小枝とその葉っぱで隠しておいた。こんな簡単な仕掛けで何とかなるとは思えなかったが、とりあえず試してみたら、大成功だった。

 ミツツノは見事に穴に落ち、針の山に刺さって絶命していた。


『討伐の証明がいるよな』

セインがいう。

『でも。穴からどうやって運ぶ?』

『それは大丈夫ですよ~』

ロックはそういうと、針の刺さったままのミツツノをそのままアイテムボックスに入れた。

『なるほど』

セインが感心していると、

『それより、穴を埋めておかないとまずいですよ』

『なんで』

セインがわからないといった顔をしていると、

『街道にこんな穴があったら危ないでしょ~』

ロックおとセインは、せっかく作った穴を必死に埋めることになった。


・・・


橋の近くに放置されていた台車を拾い、2日掛かってブリトンの街に戻ってきた。もちろん、台車は空である。街の入り口が近くなったところで街道を外れ、木の陰に隠れると、

『では、そろそろ出しますかね』

とロックは行って、アイテムボックスからミツツノを取り出す。その後、針を取り除いてから、台車を引いて街道に戻ると、城壁の門についた。門を守る兵士に挨拶しようとすると、

『ミツツノを仕留めた・・・!!すげえ!!』

と驚いた兵が声を上げる。北側の門はほとんど人がいないので、特に人が寄ってくる状況にはならなかったが・・・。

『これでハイム村への橋が架けれるはずですよ』

セインは兵に一言話した。驚いたままの兵をそのまま、商人ギルドに2人は向かった。


・・・


商人ギルドの前に着いたところで、ロックが中に入る。カウンターには、先日の女性がいたが、軽く会釈しただけで、奥の冒険者ギルドに入ると

『ミツツノ討伐しました~』

と叫んだ。

『本当か?』

ニックは驚いていた。5日後なので、大体結果が出るだろうと思っていたが、まさか、討伐してきたと言われると思わなかった。

『証拠は?』

『そのまま、台車に載せてもってきましたんで、確認してください~』

ロックの後を、義足の右足を何とか動かして後についていくニックであった。


・・・


台車に乗せたミツツノをニックに確認してもらった後、そのまま、商人ギルドに引き取ってもらった。針の跡があったため、使えない部分もあったが、それでもかなりの肉になったようで金貨3枚になった。更に、冒険者ギルドから討伐報酬として金貨1枚が出たのである。ローマンを出発したとき、ロックが金貨を100枚くらい持っていたので、金に困っていたわけではなかったが・・・。台車もそのまま、商人ギルドに引き取ってもらった。元の持ち主に返すとのことだった。

『さて、今日はここで一泊して明日にはハイム村に出発しよう』

2人は再び<ブリトンの朝>に向かった。


・・・


宿につくと、カウンターには前と同じ女の子がいた。

『無事帰ってきたんですね』

『討伐してきましたよ~』

とロックが言うと、

『リット。お仕事!!』

と厨房から声がかかる。宿の主の声だ。

リットというらしいカウンターの女の子は、

『だって・・・』

とちょっと不満そうであった。

『で、2人と泊まりたいんだけど・・・』

『食事付きですと銀貨8枚、食事無しだと銀貨6枚になります』

リットは仕事を忘れてはいなかった。

 この日の夕食は、ミツツノの肉料理であった・・・。

2022/3/16 誤記修正

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