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第6話 城外にて

セインとロックは北門から出て、ブリトンの街を目指した。城壁の外なので、魔物が出てくる可能性もあったのだが・・・。他国と違い、魔物が少なかったローマン国にいることもあって、周辺の人々も、剣や弓をもっている他は、城内とさして変わらない様子であった。

 セイン。ここら辺で持ってきたものを説明しよう。

何故か、街道から外れて、街道から見えない木の陰に入ると、

 まずは・・・とロックが何もない空間から突然荷物を出し始めた。

(???)

セインは状況が理解できない。この世界には、ファンタジーの世界によくある、魔法というものは存在しない・・・いや存在しないはずだった。そう、家庭教師からも教わっている。が、ロックは、何もない空間から

『これがテント、こっちが食料と水、それと、セインのための剣と盾・・・そして、軍資金だ。』

といって、あたり一面に物を出し始めた。


『ロック、これはどういうこと?』


セインが恐る恐る尋ねると、


『これはアイテムボックスというものです』

と言い出す。

『あいてむぼっくす???』

『これは、アンクス国の南にあるとある遺跡にあったものです。無限の収納といったものです。何故、このようなものがあるのかは解りません。しかし、この中に入れるものは、入れたときの状態のまま維持されます』

『ということは、腐らない?冷めない?』

『そうです。出来立てのスープを入れておけば、何日たっても温かいまま、討伐した魔物を入れておけば、何日経っても討伐したときのままです』

『すごい』

『ですが、これには1つ欠点があります。』

『何?』

『それは、私にしか出し入れ出来ないということです』

『なんで?』

『わかりません。私が念じたときのみ、中に入れたものが取り出せ、外にあったものを収納することができます』

『手に持っていなくても収納できるの?』

『数m以内であれば可能です』


セインの脳内は混乱していた。全くの常識外の出来事である。道理で、ロックがほとんど手ぶらであったわけだ・・・。


『ロック、さっき、あった早々にショートソードを渡されているよ。にも拘わらす、僕の剣と盾というのは・・・』

『さっき渡したのは飾りですから~。あれじゃ三つ目ネズミも倒せませんよ~♪』

『???』

セインは試しに、さっき受け取ったショートソードを出してみようしたが・・・

『あれ、この剣、鞘から出てこない』

『ただの飾りですから・・・』

・・・

『こらロック!!よくもだましたな、許さん!!』

何故かセインは怒りだす。どうやら、馬鹿にされたと思ったらしい。


『セイン。冒険者ギルドに登録するときに剣もないとおかしいでしょ。』

『だからって偽物を渡す必要はなだろうが・・・!!』


・・・


しばしの問答の後、ようやく落ち着いたセインは、ロックに今度は本物のショートソードと盾を渡され、再び街道に戻った。

(そういえば、どうして馬もくれなかったのだろう・・・)

馬車くらいはあるので、馬があれば移動の速さも上がったのである。今更、城に戻るのも面倒であったので、誰かに馬を譲ってもらえばよいと思っていたセインであった・・・。


 誰も相手にしてくれなかった。セインは王宮からほとんど出てなかったので、国民は、顔を見ても王子とわからなかった。ましてや、冒険者の出で立ちなので、わかるはずがなかった。魔物が出る可能性のある街道を通行する人々は、少しでも安全を図るため、できるだけ早く走り抜けようとしていたこともあり、剣と盾だけ持って歩ている2人を乗せようと思うものはなかった。当然、馬を譲ってくれる人などいるはずもなかった。


・・・

日も陰ってきたので、街道から外れて野宿の準備をする。幸い、アイテムボックスの中には、焼き立てのパン、焼き立ての肉、出来立てスープが十分あったので、食事は問題なかった。


『で、ここで寝るわけですが・・・』

とテントを出してロックが中に入る。2人で寝るには十分な広さだ。


セインがロックの方に向きながら

『つかぬことを聞くが、寝ているときに魔物が出たらどうするんだ』

テントに寝転がっていたロックが

『魔物除けの薬をテントに塗っているから、大丈夫~!!』

というや、寝てしまった。

『おい!!』

セインは叫ぶが、ロックは既に夢の中にいっていた・・・。


・・・


翌朝、ロックが起きてみると、セインは横にいた、目に隈を作って・・・。

どうやら怖くてよく寝れなかったらしい。

『たしかに魔物は出なかったが、本当にこのテントは大丈夫なのか?』

とセインが問うと

『買ったとき、商人がそう言っていたので多分・・・』

ロックも始めて使ったらしい・・・。

セインの顔が硬直した。

(これは、とんでもないのと一緒に旅をすることになってしまった・・・)


・・・


朝食は、パンで簡単に済ませ、ブリトンの街を目指す。

『魔物除けの薬というのは本当にあるのか?』

歩き出して、セインが訪ねる。

『聞いたことはある。魔物の内臓を使って作るらしい』

ロックが答える。

『では、各村もその薬で囲えば安全なのか?』

『城壁のない村では、柵にこの薬を塗っているらしい。でも強い魔物には効かないという話も聞いた』

『ええー!』

『では、強い魔物が出た・・・』

『戦うしかないですね~』

(おい、じゃテントも安全じゃないのでは・・・)

『ローマン国では大した魔物はいないらしいから大丈夫らしいですよ~』

 能天気なロックであった。


・・・


街道の途中に小規模な村があった。村を囲うように柵がしてあり、入り口には、簡単な門があった。恐らく、先ほどの<魔物除けの薬>なる物が塗られているのだろう。柵や門はうっすら黒光りしている。

 立ち寄る理由もないので、そのまま通り過ぎてしばらく行くと・・・

 街道の脇から何やらごそごそと音がする。

『三つ目ウサギだ~』

『強いのか?』

『対して強くはない。だが、突進してくるので、まともに突っ込まれる怪我するよ~』

ようは、避けれれば大したことないらしい。

と次の瞬間、3匹の三つ目ウサギが突進してきた。

ロックは右に跳ねて避わす。セインは、驚いたが、左によけたところ、避わすことができた。避けられた三つ目ウサギは立ち止まり、それぞれ反転して、再び突進してきたが、ロックが1匹ずつショートソードで切り倒した。防御力はあまりない魔物らしい。目の前に3匹の絶命した三つ目ウサギを見たセインは、

『これが魔物?』

とまだ現実を理解できていないようであった。

『今晩はウサギの丸焼き~♪』

と言いながらロックはアイテムボックスに三つ目ウサギたちを収納していった。


・・・


『次はセインにもやってもらいますよ~』

ロックは今晩のおかずが手に入ってご機嫌だ。一方、セインは

『王宮で剣の指導は受けたが、今まで魔物どころか、狩りにもいったことがないのだが・・・』

と顔をこわばらせている。

『初めはだれでも初心者だよ。大丈夫~』

と何の根拠があるのかわからないロックの回答に、覚悟を決めるしかなかった。


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