第66話 一人で討伐基地へ
翌朝、ノイマンとハイム村の皆さんに挨拶した後、中央基地に向かった。途中、オークが出てきたが、波高がけん銃を1発放つとオークはどこかに行ってしまった。
『逃がしてしまいましたね』
阿久津が脇で何か言っているが、気にしない。そう、中央基地にも討伐基地にもオーク肉は必要ないからである。
『あっても意味ないだろう』
『・・・』
『必要なら作戦後に狩ればよい』
『なるほど・・・』
どこまで阿久津が理解したのかは解らないが、それ以上の会話は不要とみて、中央基地に向かった。
・・・
管制棟から地下に入り、居住区に向かう。2人しかいないので、昼食は基地の自動機で調達した。波高はうな丼、阿久津は親子丼を選んだが、全く同じ容器に出てきた。
『さすがにメニューごとに違う容器にはならないみたいですね』
阿久津は話すネタがないのか、容器の話をしてきた。
『まあ、そこまで細工する必要はないと思ったのだろう』
所詮、阿久津の空想の世界?らしいので、考えないことにしたのだった。
『今日、この後、討伐基地に移動する』
『一人で?』
阿久津は理由が解らないらしい・・・親子丼を食べるのやめ、波高を覗き込んだ。
『装置の使い方を確認しないといけないからな・・・』
瘴気封印装置の存在は確認したが、その動作は確認できていない。あれだけの装置である。きっと、操作マニュアルがどこかにあるだろうし、できれば、動作確認をしたい。阿久津の空想の世界がベースであれば、細かい設定はないと思われた。
(阿久津の様子から見て、細かいプロットは作ってないだろう・・・多分)
『一人で行く』
波高もうな丼を食べるのを中断して阿久津見ながら答える。
『僕は、何をしていたらいいかな・・・』
『翌朝、朝二(午前10時)に離陸して、9000ftまで上がったのち、122.6MHzで話しかけてくれ。討伐基地で同じ時間に離陸して上空待機して置く』
作戦決行時の連絡通信の確認である。
『了解』
『それと、作戦前日に5ヶ所回るのを忘れずに・・・』
『わかっている』
幸い、AVGAS100は十分あるため、飛行は大丈夫だろう。
・・・
食事後、JA4169を格納庫から出して、阿久津がランナップをする。波高は待っているだけである。波高でもできるのだが、整備士でもある阿久津に任せることにした。
『特に問題ないです』
『了解』
ランナップ完了の連絡を受け、波高はJA4169に乗り込んだ。
念のため、プラップの動作を確認したのち、エンジンスタート。
燃料・・・OK
電圧・・・OK
無線は話す相手がいないので電源は入れておくのみである。
VOR1を112.8MHz(中央基地)
VOR2を112.4MHZ(討伐基地)
にセットして、それぞれ、切り替えできるようにしておく。
出発前に阿久津を確認したところ、管制棟に走っていったのを確認した。おそらく管制塔で無線交信するつもりだろう・・・。JA4169を滑走の端にタクシーしていった。
・・・
『中央基地』
とりあえず、無線で呼びかけてみると
『こちら管制塔』
阿久津の声が返ってきた。
『今から離陸する』
『了解』
スロットを全開にして離陸滑走を始める、73㏏に達したところでローテーション。JA4169は何事もなく離陸した。
そのまま、ストレートアウトで上昇していく。1人だと、300馬力のJA4169は1000ft/分以上の角度で上昇できる。特に問題はない。9000ftで水平飛行に移る。気流も安定しているので、手放しでもほとんどそのまま飛行している。居眠り注意である。眼下にローマンが見えたところで
『JA4169 おーばー ろーまん』
試しに無線で行ってみた。
『了解です』
阿久津から返事が来た。
『では、また明日!!』
といった後、VOR1を112.4MHZ(討伐基地)に切り替え、ホーミングすることにした。
・・・
5時間後、無事、討伐基地に到着。誰もいないので、一人で昇降機を動かしてJA4169を収容する。収容後、燃料を補給して、オイルを確認して・・・。やることがない。食堂にいって焼肉定食を食べ、久しぶり討伐基地にある波高の部屋入ると、わずか数日しかいなかったはずなのに、懐かしい自分の部屋に帰ってきたような気持になった。
(早く寝よう・・・)
5時間のフライトをしたこともあり、ベットに入ると、すぐに睡魔がやってきた。
・・・
朝、目覚ましを朝一(朝5時)にセットしたせいか、多少寝ぼけ状態で食堂へ。卵かけごはんと味噌汁を選択して食べる・・・寂しい・・・波高は日本では1人暮らしであったため、ほぼ、毎日食事は1人だったのだが、こちらの世界に来てからは、いつも誰かがいることが多かったので、一人の朝食は久しぶりであった。昨日は飛行後の疲れもあって気にしなかったのが・・・。
(寂しいものだなあ~)
朝二(10時)には十分時間があったので、基地内にある、瘴気封印装置に行ってみる。前回来た時と何も変わっておらず、誰もいないので、波高の足音が響くのみである。装置前まで来た時、
『あれ?』
思わず声が出た。
そう、操作パネルに1冊のファイルが置いてあったのである。首をかしげながら手に取ってみると、それは、操作マニュアルと、動作チェックマニュアルであった。
パラパラとめくってみると、以下のことが分かった。
・動作確認はSWを入れると、セルフチェックが入り、12時間後に完了する。その後、稼働SWを押すことでシステムが本格稼働する。
・ローマン国内にある“瘴気封印装置試作品”をバックアップシステムとして使うことが出来る。
・5か所のブイは入った状態でないシステムが本格稼働しても封印されない
(ブイの入っている個所しか封印されない)
“瘴気封印装置試作品”は、東峠にあった装置のことだろう。万一、故障していた時は、あれを使えということらしい。今日の飛行から戻った後にSWを入れて、セルフチェックの様子を見ることにした。12時間もかかるのであれば、いる必要もないのだが、途中で何かアラームとかでないか見たほうがよいと波高は考えたのだった。
・・・
朝二(10時)にJA4169で討伐基地を離陸。高度9000ftをにセット。中央基地と122.6MHzの両方を受信できる状態で討伐基地上空をゆっくり旋回していると
『波高さん、聞こえますか~』
阿久津の声は122.6MHzに設定した無線機から聞こえてきた
『聞こえてるよ~』
と返してみる。特に交信は問題ないらしい。
瘴気封印装置のマニュアルのことを阿久津に話すと
『謎ですねえ~』
との返事。明日の朝二(10時)セルフチェックの結果を連絡することにして解散とし、討伐基地に着陸した。
・・・
瘴気封印装置のSWを入れると、装置のランプ類が光りだした。そして、目の前にディスプレイは現れ、
セルフチャック中
という表示がされた。しばらく見ていたが、何も変わらないので、食堂に移動して昼食をとる。食事後、装置に戻っても、表示に変化はなかった。




