第62話 火炎瓶もどき
ハイム村をセインたちの翌日出発したシャールカは、のんびり馬を歩かせていた。
(セインのことだから、ブリトンで数日滞在するのだろう)
セインがブリトンから早く脱出したい・・・正確にはユーシアから早く逃げたいと思っていることを知らないシャールカはのんびりと進めていた。
(ブリトンで宴席に連れていかれたりしたら面倒だからなあ)
ハイム村で生まれ育ったシャールカには王宮関係者など面倒でしかなかった・・・セインが王子であるにも関わらず・・・。
どうせ、一番高そうな宿にいるんだろう・・・。そう思ったシャールカは、ブリトンの街に入るときも、門番にセインのことを聞くこともなく、街の中に入っていった。
高そうな宿を見つけ中に入ってみる
受付にいた従業員と思われる男を見つけ、まっすぐ歩いていく。
『セイン王子は居られないか?』
『セイン様は早朝に出発されました』
『・・・???』
予想しない返事に、一瞬シャールカは固まったが、
『ローマンに向ったということか?』
『恐らく』
従業員も正確なことは知らなかったが、出発したとうことは、ローマンに向ったとしか思えない。従業員に一礼したシャールカは馬に乗ってそのままローマンに向った・・・。
・・・
『あんなに慌てなくてもよかったのでは?♪』
馬車の中で、ロックがセインに話しかけている。早起きしたので、少々眠い。
『早くローマンに行って父上に説明しなければいけないと思うんだ』
セインは力強く言ったのに対し、ロックは
(ユーシアから逃げたいだけだろう・・・)
と思っていたので、ジト目でセインを見るのだった。
『ミツツノの集団がくるぞ~』
護衛の兵が大きな声を出す。
せいぜい数頭でしか行動しないはずのミツツノが、20頭近く、どういう訳か、セインの乗った馬車めがけて突進している。
『仲間をやられた仕返しかな?』
セインはミツツノを見ながらつぶやいている。
『セイン様。危ないので隠れていてください』
コルノーは焦っていた。
『そんなこと言っても、隠れるところなんてないし♪』
セインとロックは剣に手をかけてミツツノを迎え撃った。
・・・
(・・・?!馬車がミツツノに襲われている)
馬に乗ったシャールカは、道の前方に泊まっている馬車とその馬車に向かって突進しているミツツノの集団を見つけた。
(セインたちが襲われている!!)
慌てて馬車に向かって馬を走らせるシャールカであった。
・・・
そういえば、波高からいざというときに使えと言われた筒があったな。
シャールカはアイテムボックスから筒を1本取り出し、手に持ってミツツノに向かって行った。中には何か液体が入っているらしい。
『ええい!!』
ミツツノに向かってシャールカは筒を投げた。筒はミツツノの手前に落ちた。落ちたときに筒が壊れたのだろう、何か液が漏れだしている。
(確か火を投げろって言われていたな)
シャールカは慌てて火を探すが、ライターが有るわけでもなく、すぐに火など起こせなかった・・・。
(しまった!!)
ロックは、ミツツノの目を逸らそうと、火をおこし、松明を手にしていた。
(これをミツツノの手前に投げて足止め・・・できたらいいな♪)
普通であれば、突進するミツツノが松明くらいで止まるとは思えなかったが・・・突然後方からやってきた馬上から投げられた何かが上空を通過していく。
『ロック。投げろ!!』
馬の上から聞き覚えのある声がしたとき、ロックは松明をミツツノに向かって投げていていた。
松明が投げられた筒に触れた直後、ものすごい音と共に、火柱が上がった。突進していたミツツノは、驚いたのか先頭が立ち止まろうとたため、後ろから続いていた後続がぶつかり、押し出されるように一部が火柱の中に飛び込んだ状態になった。
・・・
『・・・助かった』
ミツツノは火柱のダメージを受けた後も勢いそのままセインたちの前に現れたが、ダメージを受けていたこともあり、コルノーたちに討伐されていた。
『でもさ、このミツツノ、変なにおいがするよ♪』
『恐らく、筒に入っていた液体が燃えた匂いではないのか・・・』
討伐されたミツツノを見ながら言ったロックの言葉にシャールカが返す。
『これは何をしたの?』
セインがミツツノを指さしながらシャールカに言った。
『ああ、波高が、危なくなったら魔物に投げろっていって渡された。本当は火を用意して、投げるはずだった』
『用意してなかったですよね』
セインはシャールカをジト目で見ている。
『慌てていたんですよ!!』
シャールカは頬を膨らませた。
結果オーライであるが・・・。
『しかし、波高さんは変なものを持っているな・・・』
コルノーは、セインたちの会話を聞きながら、つぶやいた。
波高は、中央基地にあったAVGASを筒に入れてシャールカに渡していたのだった・・・。




