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第61話 ブリトン

ハイム村からローマンに向ったセインたち・・・

『セイン王子がハイム村からローマンに向われる途中で、立ち寄られるのだな』

馬でやってきたと思われる兵士の報告を聞いていた初老の女性は執務室の椅子に座ったままため息をついた。ここは、ブリトンの街の中心にある行政庁舎ともいうべき建物の最上階、街の管理を国王より任されているユーシアの執務室である。彼女は王都で行政官として手腕を認められ、ブリトンの街を任されていた代官に相当する人物である。


『私はセイン様のところに戻ります。明日にはブリトンに到着できると思います』

そういうと、兵士は執務室から出ていった。


(・・・つまり、私の知らないうちに、セイン王子がこの街を通っていたということか・・・)

彼女は、魔物が出て以来、街の防衛と、食料確保のために奔走していた。冒険者ギルドを活用し、商人ギルドで冒険者が持ち込んだ魔物を買い取らせ、街に供給することで、何とか食料は確保できていた。そんな中、セイン王子がローマンからやってきて、ハイム村に向かう街道に掛かっていた橋の修復を邪魔していたミツツノを退治して、更に、ハイム村に行っていたことを王宮の馬車がローマンから来た時に知ったのであった。


(知らなかったとはいえ、セイン王子に危険な討伐をさせてしまったので、私は無事ではあるまい・・・)

瘴気封印作戦のことを知らない彼女は、セイン王子がローマンに戻り次第、ことが発覚し、その責任をとらされると思い込んでいた。ミツツノ退治は既にセント王の知るところにも拘わらず・・・。


『セイン王子の宿を確保しなさい。そして明日の夜、歓迎の宴会をするので準備しなさい』

彼女は、そばにいた部下に指示を出す。言われた部下は


『はい。直ちに準備します!!』

とだけ言って出ていった。


(何とかセイン王子にお許しいただいて、穏便にしていただけなければ・・・)

必死に保身を考えていた。


・・・


『馬車の方がらくだねえ』

『そうかな~♪空馬車もなかなか良かった気もするけど・・・』

ブリトンに向かう馬車の中では、セインとロックが暇を持て余しながら、くつろいでいた。護衛付の馬車のため、中でおとなしくしている以外することもなく、ひたすらローマンに向って移動中である。


『セイン様。明日にはブリトンに到着の予定です』

話掛けてきたのは、キニシアで捕まっていたコルノーである。彼は、ミグが集めた、ローマン軍により救出され、ローマンに戻っていた。そして、ロックからの連絡を受けたミグの指示によりハイム村に向かい、セイン王子の到着を待っていたのである。


『ブリトンのユーシア殿には先ぶれを派遣しておきました』

コルノーの報告を聞いて、セイン王子の顔はゆがむ・・・そう、セイン王子はユーシアが苦手であった。行政手腕が優秀であることは知っていたのだが、その姿が

(怖いおばさん)

としてセイン王子に焼きついていたのである。


『ねえ、ブリトンを素通り出来ないかな・・・』

『手遅れでしょうねえ~♪』

セインの願いは、ロックにあっけなく拒絶されてしまった。


・・・


セインたちがブリトンに到着したところ、門には出迎えの兵士が左右に並び、用意された宿まで道はセインたちの馬車が通るために封鎖されていた。


『ちょっと、度が過ぎる気がするのだけども・・・』

セインは、その歓迎ぶりに困惑していた。

(魔物のせいで、街の人も大変なはず・・・ユーシアは優先するべきものを間違っている)

頭の中で今回の出迎えを過剰な対応と認識していたのであった。


馬車が宿に到着すると、そこにはユーシアが待っていた


『お久しぶりです。セイン殿下』

ユーシアはセインに深々を頭を下げている。


『ユーシア。公式な訪問ではないので、こんな出迎えは不要だよ』

セインはユーシアに向かって言った。セインにしてみれば、軽く意見を一ただだけのつもりだったのだが・・・これを聞いたユーシアはその場に土下座して


『お許しください!! どうか、どうか・・・』

セインがのぞきこむと、ユーシアは顔面蒼白、何かにとりつかれたようになにやらブツブツ言っている。こんな姿のユーシアをセインは見たことがなかった。セインが見ていたユーシアは、いつも自信に溢れた行政官だった。


『明日には、ローマンに向けて出発する。そっとしておいてください』

セインはそういうと土下座するユーシアから逃げるように宿に入っていた。


・・・


(まずい。非常にまずい。セイン様は怒っておられる)

ユーシアは焦っていた。結局、準備していた宴会もセインに断られ、申し開きも出来なくなっていた。

『これで私も終わりだ・・・』

絶望に打ちひしがれるユーリアであった。

2022/3/16 誤記修正

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