第59話 GOGO ウエスト(その3)
翌朝、宿の前には馬車の列が出来ていた。
『問題ないかのう~』
『はい。抜かりなく』
マルキスは、街の守備隊長と馬車の脇で視察していた。非番の兵まで動員して、警備をした結果、どうやら問題は発生していないようだった。
『宿の主からの情報だと、誰一人、宿から外に出なかったそうです』
『ほう~。どうしてかの~』
マルキスは頬を擦りながら聞き流す。
『かなり警戒しているようです』
『無理もないのう~』
・・・
朝食のため、アンクス兵が席についたところで、宿の主が
『皆さまおはようございます。馬車は既に宿の前で待機しております。食事がすみましたら、いつでも出発可能でございます。』
朝食は、この宿のいつもの内容であるパンとスープであった。
((早く出て行ってほしいということか・・・))
シルダはパンをスープに浸して食べ始めた・・・。今までの仕事がら、ゆっくり食事をすることはない。周りの兵士も、一般人より明らかに早食いであるが、シルダはそれ以上だった。パンをスープで流し込むと、立ち上がり、その勢いで一気に飲みこんだ。
『食べ終わったら、ただちに出発する。食べ終わったものから荷物をもって馬車に乗り込め!!』
そういうと、そのまま宿の主の前に移動し敬礼すると
『世話になった。マルキス殿にもよろしくお伝えしてくれ』
とだけ言って、宿を出ようとしたが、
『マルキス様は外におられますよ』
宿の主の声を背中で聞いたジルダはその場に一瞬立ち止まってしまった。
『わかった』
振り向いたシルダは、辛うじてそれだけいうと、宿を出て行った。
・・・
宿を出た目のまえに、その老人はいた。
『よく眠れましたかの~』
『はい。野営が数日続きましたので、大変助かりました』
マルキスの問いに体を強張らせながらシルダは答えた。
『ほう、それは良かった。この先、ローマンまでは村しかありませんので、辛抱してくださいのう~』
『大丈夫です』
よく見ると、街の人が遠巻きに馬車を眺めている。
そして、守備兵を思われるものが、馬車に人を近づけないようにしていた。
『警備していただき、ありがとうございます』
『なあに。この街も魔物に困っていましたのでのう~』
シルダ言葉に、あごを擦りながらマルキスはそういうと守備兵に向け
『馬車の出発準備!!』
と怒鳴った。すると、馬車の先にいた兵が道の左右に別れる。そうしているうちに、アンクス兵たちは馬車に乗り込んでいた。
『シルダ殿、ご武運を祈ります』
『ありがとうございます』
守備隊長の言葉にジルダに敬礼しながら答える。
『ローマンに向け出発!!』
シルダの号令で馬車が動き出す。
シルダは、動き出した馬車に飛び乗った。
・・・
『行ってしまいましたなあ』
『問題はこれからじゃのう~』
守備隊長の言葉に、意味ありげな言葉で返したマルキスであった。
マルキスの手から、一羽の鳩が西に向かって飛び立っていった。




