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第57話 GOGO ウエスト(その2)

 シルダは馬車の中で、退屈していた。ローマンへの連絡は、キニシアの隊長がしてくれたので、シルダとしてはすることがなかった。80名もいるので、毎日野営であるが、途中、魔物が現れてくれるので食料にも困らなかった。


『今日の晩飯発見!!』

御者台にいる見張りの兵士が楽しそうにいう。


『おい!ちゃんと報告せんか!!』

御者台に向かってジルダは叫ぶ。


『オークが10頭、こちら向かってきます。今日はオークのステーキだ!!』

シルダの叫びは、御者台には伝わらないのか、魔物の襲撃を喜んでいる。


『馬車を止めろ。総員下車。数名づつ、オークを囲んで仕留めろ!』

御者台で当番の分隊長が叫ぶ。シルダが何も言わなくても、勝手に親衛隊メンバーは魔物を討伐に掛かっていた。普通であれば、よその国なので問題なのだろうが、魔物を討伐する目的なので、誰も文句を言わない。この大陸に住む人にとって

((神でも悪魔でもいいから、魔物を討伐して))

というのが本音であった。そう、

((魔物いない世界に暮らしたい))

という気持ちが優先されていたのであった。


・・・


『今日中にはタミルの街に着くと思います。タミルでは、マルキスという方が我々を待っていてくれるそうです』

 同じ馬車に乗っていた分隊長の1人がいう。

シルダが馬車から顔を出して前を見ると、城壁に囲われた街が小さく見えた。


『マルキス?』

顔も馬車内に戻したシルダが怪訝な顔をする。


『タミルの代官だそうですが・・・何か不都合でも』

分隊長が心配になったのか、ジルダの顔を覗き込む。


『いや。ちょっと知ったやつなのでな・・・』

シルダは昔のことを思い出していた・・・。


・・・


あれは、2年前、まだ魔物が発生する少し前のことだった。

タミルの絨毯の製法を盗むべく、ビスマルクに命じられてシルダはタミルに潜入していた。どこかの職人に弟子入りして探ればわかるだろうと思っていたのだが・・・。


夜、絨毯を作る装置の構造を記録していると、突然、右手を掴まれた。


『こんな時間になにをしておるのかのう~』

次の瞬間、周囲が突然明るくなり、10名の兵士に取り囲まれていた。そして右手を掴んでいたのは、どう見ても長老という言葉が似あう老人であった。


『マルキス様。他国のスパイかと思いますが・・・』

『だろうのう~』

兵士の一人の問いに老人が答える。シルダも老人に取り押さえられるほど、弱くはなかったはずだが、どういう訳か全く身動きが取れなかった。


『だったらどうする気だ!!』

シルダは叫ぶ。


『どうもせんよ。ビスマルクに言伝をしてもらおうかのう~』

『何?!』

どうやら、アンクス王国のスパイであることまでばれていたらしい。


『タミルの絨毯は、職人が丹精込めて作ったものだ。秘術はない。』

それだけ言うと、ジルダの持ち物を取り上げ、兵士に引き渡す。

((殺される!!))

シルダは直観したが、何故か城壁の外まで兵士に連れてこられると、そのまま釈放された。


『では、ビスマルクにちゃんと伝えておくれ』

老人はそういうと、街の中に消えていった。


・・・


『シルダさん。着きました』

分隊長に起された。どうやら寝てしまっていたらしい・・・。

馬車を降りると、見覚えのある老人が目の前に立っていた。


シルダは覚悟を決めるしかなかった。

『私はシルダ。瘴気封印作戦のためローマンに向かっている』


老人は頷くと、

『この街の代官をしているマルキスです。皆さまを歓迎します』


シルダの顔をもう一度見たマルキスは、

『このような形で再開するとはですなあ~』

とだけ言って引き揚げてしまった。


『どうぞこちらへ』

タミルの守備兵に一行は案内され、数日ぶりの宿に泊まることとなった。

歓迎すると言われながら、特に何もイベントはなく、明日の出発時には、守備兵が馬車を護衛するその連絡のみ受けた。


『あまり、歓迎されていないようですね』

分隊長がつぶやいた。


・・・


食事は、宿の食堂で準備されていた。内容は悪くはなかったが、見慣れないステーキが各自の席に置かれていた。


宿の主と思われるものが挨拶に立ち、

『皆さま、ようこそタミルへ。本日は、皆さまのためにクロテウスのステーキを用意させていただきました。これは、先日、セイン殿下が討伐された魔物です。大変美味ですので、ぜひ、ご堪能ください』


どうやって、保存していたのかわからないが、セインたちがアンクスに向かう途中に立ち寄ったときに捕らえたクロテウスらしい・・・。

((セインは街の人に振舞ったと言っていたが・・・))

シルダはとりあえず一口食べてみた。


((これは旨い!))

周りを見ると、

『こりゃ旨い』

『オークとは比較にならねえ・・・』

『オーガよりも旨い』

兵士たちの評価も同様に良いようだ。


((はて、歓迎されているのか、嫌われているのか・・・))

シルダは一人悩むのであった。


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