第49話 瘴気発生個所上空調査
まずは目標の補足から・・・
翌日、朝食をとったのち、ロックのアイテムボックスにあったブイ、そう瘴気封印装置を稼働させるときに瘴気発生個所に入れておかないといけないブイをセイン、シャールカ、プレーン、シルダに渡す。各自がアイテムボックスを持っているので渡し忘れがないように今のうちに渡しておいたのだった。ちなみに、余ったアイテムボックスは阿久津が自分用に使っているが、何も入れるものがないはず・・・。
格納庫から2機の機体を昇降機で上げ、セスナ172から点検を行う。燃料は昇降する前に満タンにしているので問題ない。
『水抜き確認までいるのかねえ』
燃料タンクの水抜きチェックをしながら、波高がつぶやいた。格納庫にしまっているので、屋外に駐機している場合に比べ、水が入り込む可能性は格段に低いはず・・・。
『万一があってからでは遅いですから・・・』
この飛行機を操縦する阿久津は大真面目に波高にいった。整備士としての正論である。
同乗者を入れ替えようということで、セスナ172には、シャールカとプレーンが乗っている。阿久津を含めた3人を乗せた機体は先に中央基地に向かって離陸していった。
『さあて、こっちも行きましょう』
波高がセイン、ロックにいう。燃料は満タン、外部点検とエンジンランナップを行って、セスナ172から遅れること30分後、中央基地に向かって離陸した。
・・・
『こっちの方が楽・・・』
セインが後席でつぶやいている。セインもロックも操縦席に興味がないのか、後席で詰まらなさそうだ。飛行自体は何事もなく、9500ftで巡行。たぶん途中でセスナ172を追い抜いているのだが、よくわからなかった。
・・・
中央基地に降りてみると、やはりセスナ172はまだついていなかった。早々にJA4169を格納庫にしまい、燃料を満タンにしておく。
小型機の事故のニュースで、エアラインの元パイロットとかういのが
『1時間の飛行なのに燃料満タンで離陸するのが非常識』
などと言っていたが、小型機は屋外駐機時に水が燃料タンクに入りにくくするために、燃料は満タンで地上駐機するのが常識なのだ。エアラインの機体は、小型機に比べると構造的に燃料タンクに水が浸入する心配がない。燃料も飛行時の重量に効いてくるので、飛行予定時間+45分くいらいしか入れないらしい。だから、急に着陸できない事態が発生すると大変なことになるらしい・・・。
神殿で、セスナ172の到着を待っていると、
『セスナ172です。もうすぐ到着します』
阿久津から無線連絡が入った。
『了解、ランウェイ イズ クリアー』
とだけ波高は無線で返した。幸い、滑走路に魔物などは来ていない。
・・・
みんな揃った後、格納庫脇にテントを張る。どうやら、この周辺に魔物は出ないらしい。ロックのアイテムボックスに入っている貯肉を使って夕食を作る。
『ねえ。テントの中より格納庫の中で寝たほうが安全じゃない?』
シャールカの一言で、皆、格納庫内に移動してしまったため、せっかくのテントは空っぽになってしまった。
・・・
翌朝、セスナ172を格納庫から出して阿久津に点検をしてもらう。シルダの担当する南東から開始する。何せ、シルダには、この後、アンクス ペイに行ってもらう必要があるから、先になったのである。
ジルダと阿久津が後席に、操縦席に波高が座る形で、中央基地を離陸、大山脈の南東付近にある瘴気発生個所を探す。
『そろそろレーダーで探してくれ』
『了解』
波高の指示に阿久津が答える。
阿久津が持っているレーダーに瘴気発生個所と思われる赤い点が示された。
『もう少し南西、2kmくらい』
阿久津の情報をもとにセスナ172を移動させていく。
やや、目標の右側を飛び、波高が地上を確認すると、山の山頂付近に真っ黒な塊が見えた。
『発見した。いまから、その周辺を旋回する』
波高はそういうと、フラップを下げ、速度を落とす。バンク60°で瘴気の周りを左旋回し始めた。昔やったことのある、マイクミッションの時の飛行である。速度と角度を間違えると失速するので、これを阿久津にはさせるわけにはいかなかったのだ。
『シルダ。見えるか』
波高の問いに
『・・・』
返事がない、波高が後席を確認すると、60°バンクにビビッているシルダがいた。
『ちゃんと下をみろ!!』
波高はシルダに怒鳴る。シルダは恐る恐る下を見始めた。
『周辺の地形を記憶しておいてくれ。そして、周辺に部隊の待機場所になりそうな場所も探しておく・・・』
瘴気発生個所を5周したところで、
『確認した。もう大丈夫』
とシルダがいったことで、ミッション終了として、中央基地に戻る。結局2時間くらいのフライトとなった。
飛行後、阿久津から
『60°バンクは慣れないと怖いですよ』
と波高にいう、飛行訓練で普通にする角度なので、それほどではないと思ったのだが、初めてでは怖かったらしい・・・。
『実は、私も怖かったです』
阿久津も妙なことをいう。
『訓練で60°バンクくらいしているだろうが』
と波高がいうと、
『あんな低速でしたことない』
(マイクミッション以外は100ktくらいだもんね・・・)
どうやら、阿久津はマイクミッションに参加した経験はないらしい。
・・・
午後は、ジルダの代わりにプレーンを乗せて北の森に向かう。燃料は満タンにしたので、問題はないが、あまり遅くなると日没になる。
離陸後、9000ftで大山脈を超え、高度を1000ftまで落として森の上空に達したところで、阿久津にレーダーで確認してもらう。瘴気発生個所は森に上からもよく見えた。
その地点は、森のアンクス王国側にあり、アイシアの村跡からそれほど離れていなかった。
『プレーン。アイシアの村との位置関係を確認して覚えておいてくれ』
波高の指示に、
『ほぼ西にまっすぐだね。わかりやすい』
アイシアの村跡に部隊を置いてタイミング待ちになるだろう・・・。
確認を終え、中央基地に藻だった時には、夕日が輝いている状態だった。
・・・
『決行日の前日に、セスナ172でアイシア村の上空を飛行させることにしよう』
決行日がわからないと厳しいというプレーンの要求に波高が答えた。
『それって、私が飛ぶんですよね』
阿久津が妙なことを言っている。
『当然』
波高が答える。
・・・
翌日は、JA4169でシルダとプレーンをアンクス ペイに送る。もちろん、携行缶に燃料も入れてだ。アンクス ペイの西にある滑走路に降りてシルダとプレーンを降ろす。小屋の見張りが驚いて出てきたが、事情を話すと馬車を用意してくれた。
『じゃ、よろしくな』
『了解』
『頑張ります』
波高の一言に、シルダとプレーンがそれぞれ返事をする。
(そういや、何時の間にか私が指示しているなあ・・・)
波高は今更にして思っていた。
携行缶の燃料をタンクに補充した後、波高はJA4169で一人中央基地に戻った。
・・・
『ハイム村に行って食料貰ってきた』
シャールカが楽しそうにいう。よく言見ると豪華な食事が並んでいた。
『まあ、美味しそうだな。』
波高はほっとして食事に加わる。
『明日は、セイン、ロックの場所確認だ』
そういうと、波高は早々に食事を切り上げ、ちょっと早く眠りについた。
その姿にセインとロックが何か言いたそうである。
『疲れているんじゃないかな』
阿久津は、セイン、ロック、シャールカにそっと言った。
・・・
翌朝、セインと阿久津を乗せ、セスナ172で南西に向かう、南峠から近いところにあったが、地形の関係で、魔物たちはローマン王国側に降りていくようだ。
『大丈夫。これならコルノーたちとも相談していくことが出来そう』
セインの言葉を受けて、波高は、機体を中央基地に向けた。
・・・
午後は、ロックを乗せて北東の地点へ向かう。こちらも、東峠からほど近いところだったこともあり、
『よくわかった~♪』
というロックの言葉を受けて上空確認を終了。
この日は、残り全員でハイム村に移動。ノイマンの家にお世話になった。
・・・
翌朝、
『セント王、ミグによろしく』
波高がセインとロックに話しかける。
『報告したあと、アンクス王国からの部隊を待って南西の地点にむかうよ』
セインは、淡々と答える。10歳だったはずだが・・・ありえないとどしっかりしている。今回の経験が年齢以上に彼を成長させているだろう。
『私もミグのじっちゃんに報告した後、アンクス王国の部隊と共に北東の地点に向かいますよ~♪』
ロックはなんだかんだ言ってもどうにかなるだろう。言葉は不安だが・・・。
『決行日にはセスナ172が上空を飛行するからそれで判断してくれ。前日に北の森に飛ぶので間違わないようにね』
『わかった』
『わかったよう~♪』
波高の説明にセインとロックが答える。
セインとロックが、ローマン王国が用意した馬車でローマンを目指して移動していくのを見送った後、波高はシャールカと阿久津と共に中央基地に戻った。
・・・
『久々に使ったよ』
波高がけん銃を手に持ってつぶやいた。目の前にはオークが頭と胸を打たれて倒れている。
『ナイス!今日はオークの丸焼きだ!!』
シャールカは気にもしていない。今日の食料を確保したことで上機嫌である。
『やっぱり怖い』
阿久津はぶつぶつなにか言っている。
中央基地に到着後、セスナ172を格納庫から出して、北西に向かう。ロンジン国に近いこともあり、一番危険だと思っている地点である。シャールカには言えないが・・・。
西峠のちょっと北にその地点はあった。場所を確認したのち、
『もう大丈夫』
というシャールカの言葉を受けて、波高はセスナ172を中央基地に向けた。
・・・
飛行後、3人でハイム村に戻る。先ほどのオークを渡した後、ノイマンの家で宴となった。
翌日、シャールカは一人、ローマンに向かう。ここで、アンクス王国の部隊と合流するためだ。
『セインとロックが話をしているはずだから、王宮にいけばよい』
といわれ、ノイマンが用意した馬に乗ってブリトンの街に向かう。おそらくだが、ブリトンでセインたちに追いつくだろう。あの馬車なので探すのは容易だと思う・・・たぶん。
『頼んだよ!!』
『任せなさい』
波高の言葉に元気よく答える馬上のシャールカ。その姿はファンタジーに出てくる女騎士そのものである。
・・・
各地に向かった各部隊がそれぞれ到着するのに半月かかるため、しばらく、波高と阿久津の2人はハイム村にお世話になることにした。
小型機は、燃料を満タンにして駐機しているのが普通です。エアラインの機体は、行先に合わせて、必要な分だけ都度入れるので、満タンということはほとんどないです。
エアラインのパイロットの方は、小型機で昔訓練していたはずなのですが、航空大学校などは格納庫付で、整備士さんが問題なく準備してくれるので、小型機オーナーの常識を知らない人は多いようです。




