第47話 2機で討伐基地へ
阿久津の初めてのロングフライト・・・。
『ただいまもどりました』
格納庫前で、エンジンを停止させたとたん、セインはドアを開け叫んだ。
『お帰りなさい』
『お疲れ~♪』
『本当に帰ってきた・・・』
JA4169に乗ったことのあるロックとシャールカが余裕の反応なのに対し、プレーンはまだ、信じられないといった感じである。
『今から、すぐ移動する?』
阿久津がセインに続いて降りてきた波高に聞く。
『今日は、ハイム村に行こう』
波高の発言に
『何かあったの?』
シャールカが心配になったのか問いただした。
『いや。今からだと、セスナ172では日没までに着かない可能性がありそうだ』
『夜は無理なの?』
波高の回答にシャールカが質問する。
『飛べないわけではないが、滑走路が見えないと着陸出来ない』
討伐基地には、滑走路の照明があるかもしれないが、仮にあったとしても、阿久津の技量では危ないと考えたからであった。
・・・
『ちょっと。私を忘れていない!!』
JA4169の中から大きな声があった。
『あっ!!』
思わず波高が声を出す。後部座席にいたジルダのことを忘れていた。どうやら、シートベルトの外し方がわからなくなったらしい。
『今行くから・・・』
慌てて貨物室からJA4169の中に入り、後部座席のジルダにセットしたシートベルトを外す。
『あっ』
あまりにあっけなく外れたシートベルトを見て、今度はジルダが声をあげた。
『簡単だったんですね。この程度のからくりも解らないとは、ビスマルク卿に呆れられるところだった・・・。』
『大丈夫。さすがのビスマルクさんでもここまでは目が届かないはずだよ』
波高はそういうと、ジルダを抱えてJA4169の外に出た。
((重い・・))
波高はジルダを抱きかかえたことを後悔していた。想像以上に重かったのである。声に出すと、何を言われるかわからないので黙っていた。
『ウェブハイトさん。顔が真っ赤ですよ~』
ロックが面白いものを見たと言わんばかりに波高にいう。その声にセイン、シャールカ、プレーンが波高を見る。
『そういう好みなんだ』
『そういう趣味だったんですね~』
『そっちにも興味あるんですね』
セイン、シャールカ、プレーンがそれぞれの反応をする。
『違うわい。重かっただけだ』
思わず、波高が叫ぶと、その腕の中から、
『降ろしてください』
顔を真っ赤にしたジルダの声がした。
・・・
みんなでハイム村に移動しながら、途中、現れたオークをシャールカが仕留め、
『今日の晩飯~!!』
と言いながら、ロックに収納するように指さす。ロックは苦笑いしながら
『丸焼き~?』
などと言っている。
(みんな随分なれたものだ・・・。)
この世界が魔物の存在に適応してきている気がしている波高であった。そんな中、阿久津だけが、慣れないせいかおっかなびっくり周囲を見渡しながら歩いていた。
『さっきのでかい魔物はどこいったんですか?』
アイテムボックスのことを理解していない(らしい)阿久津が妙なことを言っている。
((こいつの小説に出てきていないのだろうか・・・))
波高は、阿久津の発言を聞いて首をかしげていた。
・・・
ハイム村では、昨日もセイン、シャールカ、ロックが来ていたこともあって、あまり気にされなくなっていた。
『遠慮なく泊って行ってほしいのじゃ』
ノイマンも上機嫌である。
『いきなり来ている割には、みんな機嫌がよいような・・・』
『そりゃ、肉がたくさん手に入るからね・・・ご機嫌はいいんじゃない~♪』
波高の独り言にロックが答えた。
『なるほどね』
よく見ると、シャールカが大した先ほど
オークは、村人達によって切り分けられ、各家に運ばれて行っていた。
『余っても、干し肉とかにして保存すればいいからね』
シャールカが村人たちに声を掛けていた。
((オーク肉って干し肉なるのか・・・??))
・・・
『ところで、そちらの御仁は・・・?』
ノイマンがシャールカ確認している。このメンバーの中ではシャールカがノイマン
とって最も話しやすいだろう。
『この人はジルダ。アンクス王国の人』
『ジルダです』
シャールカがノイマンに紹介したのに合わせ、バツがわるそうにしながらジルダがノイマンに頭を下げた。
『ほう。アンクス王国の・・・なんか見たような気が・・・』
ノイマンがスパイであったジルダのことを思い出しそうだったので、シャールカが、
『気のせいよ!!』
と話を打ち切って、ジルダを部屋の奥に連れていく・・・。
((ジルダがスパイだったの忘れてた・・・))
波高の背中に冷たいものが走った・・・。
・・・
食事も終わって、もう寝ようかとしたとき、ノイマンが波高のところにやってきた。セインとロックは早々に寝息をたてている。
『先日、コルノーがやってきての・・・』
『あっ!!』
ノイマンの一言に波高は気がついた。そういえば、近況をだれも伝えていない。おそらくセント王かミグに言われて、コルノーが情報探しにきたものだと思われた。
『何か言ってましたか・・・』
『最近、魔物討伐が軌道になってきているそうでな。陛下とミグ閣下が魔物の封印が必要なのか討論していると言っていたのじゃ。正直、魔物によって食料は問題ないからのう・・・』
魔物が発生した当初は甚大な被害が大陸に発生したはず。だが、冒険者の仕組みによって魔物を討伐するようになった結果、魔物は大陸の人の食料になっていた。つまり、瘴気を封印してしまうと魔物は発生しなくなる。そうすると、魔物の討伐で生計を立て始めた冒険者が失業する・・・。戦闘力のあるものが多数失業する。瘴気を封印した後の世界を心配し始めたらしい・・・。
((そんなこと知らんがな・・・))
翌朝早く移動したい波高は、ノイマンの話を丁重に打ち切って寝ることにした。
・・・
翌朝、早々に起きた波高達は、朝食後、ボナとロナが作ってくれた弁当をもって中央基地に向かっていった。途中、三つ目うさぎを仕留めたが、
『初めのころより、魔物が少ない気がするんだけど・・・』
シャールカが言い始める。
『討伐する人が増えたのかも・・・』
セインが真面目に答える。少し間が空いた後、
『今のうちに封印しないといけない』
セインは自分にいい聞かせるようにつぶやいた。
・・・
格納庫についた一行は、波高がJA4169、阿久津がCessna172の外部点検を始めた。
『おおーい。今日は2機で討伐基地にいくから、誰がどっちの機体に乗るか決めておいてくれ~』
外部点検をしながら、それを待っているセインたちに波高が叫んだ。
セインたちは、じゃんけんを始めたらしい。面倒なので、2機のスペックの違いは説明していない。巡行速度が違うので、Cessna172を先に準備する。JA4169は昨日も飛行しているのであまり心配していない。飛行時間のかかるCessna172を先に出発させる予定である。
『Cessna172に乗る人はこっち着て!!』
Cessna172の脇で阿久津が叫ぶ。
セインとロックが歩き出した。
『Cessna172はセインとロックなんだね。』
阿久津が確認すると
『じゃんけんで負けちゃったから・・・』
どうやら、JA4169の方が人気があったらしい。当然だとは思うが・・・。
『じゃ、先に向かいます。』
『VORを合わせておけば大丈夫だから・・・着陸の高度は、目の感覚でな!』
阿久津の言葉に、波高が返す。さっき、VORの周波数を確認しておいたから、間違うことはないはずだが・・・。正確なQNHが解らないので、着陸時の高度は計器の数字があてにならない前提で訓練したので多分大丈夫だと思うが・・・。
・・・
3人を乗せたCessna172が無事離陸したのを確認してから、格納庫のドアを閉める。
『じゃ、こっちも行こうか』
シャールカ、プレーン、ジルダがJA4169にやってきた。
『なんでこっちはこんなにゆっくりなのよ』
ジルダが波高に聞いてきた。
『Cessna172だと5時間半くらいかかるんだ。これだと4時間で着く』
波高はさらっと言ったが・・・
<<聞いてないよう~!!>>
3人の声が揃った。
『なんでそんなに違うのよ』
ジルダが聞いてくる。
『性能の差だよ。さ、乗った乗った。向こうでCessna172を待たないといけないから』
・・・
Cessna172が離陸した30分後、JA4169は同じように中央基地を離陸した。前回と同じように170°に進路をとり、9000ftまで上昇した。
『Cessna172 、JA4169』
無線機でCessna172を呼び出してみる。出発前に周波数を122.6MHzにしたおいたから、聞こえているはず。
1分後
『こちらセスナ172です』
阿久津から返答がきた。
『現在の高度を教えてください』
『こちらは8000ft、上昇中9000ftで巡行します』
波高の問いに阿久津が答える。Cessna172だと9000ftに上がるのは大変なのだ。30分経っても9000ftに達していない。
『了解。こちら9500ftで巡行します。』
と言って一旦無線をやめる。
『ねえ。今の何?』
無線機交信を知らないジルダが聞いてきた。プレーンとシャールカはボンネヒルから中央基地に飛行したとき、中央基地と交信したのでわかっていたらしい。
『無線というもの。離れたところと会話できる装置。但し、山とかが途中にあると聞こえないし、離れすぎていても聞こえない』
『どれくらいの距離まで話せるの?』
『100kmくらいなら何とか大丈夫そうだよ』
ちゃんと確認していないので、ジルダの質問には適当に答えている波高であった。
(どうせわからんし~)
9000ftで飛んでもよかったのだが、万一を考え、500ft高度を変えた。こうすれば、ぶつかる心配はない。
・・・
機内で、飛行しながら、弁当を食べ、暇なフライトをしていると、前方に湖が見えてきた。ラック湖である。波高は、無線機で
『大きな湖が見えたら無線で連絡してくれ』
と呼びかけると
『Roger』
と阿久津から応答があった。
どうやら、Cessna172を途中で追い抜いていたらしい。周辺を確認した後、降下を開始。
討伐基地の滑走路をローパスして安全を確認した後、南側から着陸。ちょうど4時間のフライトだった。討伐基地の格納庫はエレベータなので、エレベータの上でエンジンを止める。
『着いたよ』
シャールカとジルダに飛行機から降りてもらう。車止めをして、ピトーカバーを掛けた後、基地に入るエレベータに向かう。
『どこに行くのよ』
事情を知らないジルダが聞いてくる。前回来ているシャールカは知らん顔状態である。
エレベータの前でジルダを呼んだところで、エレベータのボタンを押すと、当然ながらドアが開く。
『ちょっと、何で開くのよ!!』
ジルダが騒ぐが面倒なので、
『後で説明するから中に入って』
といって、半ば無理やりエレベータの中に入れ、下の方のボタンを押すと、動き出した。
ジルダは警戒Maxで慌てているが、放っておく。
((いちいち説明するのが面倒くさい!!))
中は、前回来た時のままだった。JA4169が乗っている昇降機を動作させ、格納庫内に移動。そのとき、
『おおきな湖発見』
討伐基地の無線機から、阿久津の声が響いた。
『了解。ちゃんと高度落としてきてね』
『Roger』
波高応答に、阿久津からの回答であった。
・・・
シャールカに
『食堂で何か飲み物でも飲んで待っていて』
といってから波高は再びエレベータで滑走路に移動する。
さっき、JA4169を格納庫に降ろした地点にCessna172を誘導するためだが・・・。
((しまった。早すぎた))
もう一度、討伐基地に戻って、無線機を握る。
『レポート5マイルノース』
というと
『Roger』
と阿久津からの返事があった。
・・・
1時間後、ようやくCessna172が討伐基地に到着した。
昇降機の脇に立って誘導する。さすがに気が付いたようだ。
エンジン停止を確認して、近づく。
『お疲れ様!!』
波高が阿久津を見ると、
『やっと着いた~』
とだけ阿久津は言って気を失ってしまった。
上空で他の小型機を探すのは大変です。特に白や青の機体。




