第46話 ビスマルク
馬車は、ほどなくして、アンクス ペイに到着し、城門の兵士に敬礼され、中に入っていった。
『フリーパスってやつだね』
セインは馬車から外を見ながらいうと
『当然でしょう。ビスマルク卿の馬車を止める阿呆はこの国にはいないですよ』
シルダは当然と言わんばかりに答えた。
『この馬車ってビスマルクさんのものなのか?勝手に使って大丈夫なのか?』
波高がシルダに確認すると
『ちゃーんと許可とってるから大丈夫!!』
腰に手を当てて胸をそらせた。
『女性らしくないな』
反らせた胸の付近を見ながら波高はつぶやいた。
・・・
王宮に到着した3人は、そのままビスマルクの執務室に向かった。まあ、当然、ビスマルクも気が付いているはずなので問題ないだろう・・・。
『セイン王子とウェブハイトさんを連れてきました』
シルダがビスマルクの執務室の前で叫ぶと、
『入ってくれ』
中からビスマルクと思われる声がした。
3人が中に入ると、ビスマルク以外に見覚えのある人物がいた、そうアンクス王である。
『よく来た。』
そういうと、自らテーブルにある椅子に座った。
『皆さん。まずは座ってください』
ビスマルクに勧められるまま、3人は椅子に座る。座った直後に、メイドたちがお茶とお菓子を持ってきた。どうやら、待ち構えていたらしい・・・。
『魔法剣の持ち主とは会えたのかね』
いきなりアンクス王が話始めた。
・・・
『・・・ふむふむ。無事に準備が整ったのだな』
波高の説明に納得するアンクス王とビスマルク。シルダには、馬車の中で説明しているので、無反応だ。
『具体的な作戦会議をするので、シルダを連れて行くのだな』
『はい。最終的な日程調整や4か所の瘴気発生個所の確認を行います』
ビスマルクの問いに波高が答える。いつの間にか波高が全体の指揮ととっていたが、誰も気にもしない。
『今日はここで休んで、明日帰るとよい』
アンクス王の一言で王宮に泊まることになった。
話はもう終わったはずなのだが、何故か、ビスマルクが何か言いたそうである。
『私も連れて行ってもらうことは出来ないだろうか・・・』
ビスマルクの発言に、その場にいた全員の声がそろった
<<ええええええええええええ~!!>>
声の理由はアンクス王と波高達で少し違っていた。
波高、セインの両名はただ、驚いただけであったが、
シルダは、
(この人が王宮の外に興味を持つなんて・・・)
いままで、王宮の政治以外の姿を見たことがなかったビスマルクの発言に驚き、
アンクス王は、ビスマルクに出て行かれると王宮を取り仕切るものがいなくなるので驚いていたのであった。何せ、ビスマルク抜きでは、何をしたらいいのか、ほとんどアンクス王は解っていないので・・・ダメダメ王であった。
・・・
ビスマルクの親衛隊には、引き続き訓練を続けてもらうように依頼して、翌朝、ビスマルクの馬車で機体に戻った。
『魔物は出ませんでした!!』
JA4169を守っていた兵士たちからの報告を受ける。
『警備ありがとうございました』
そういいながら、機体に異常がないか見て回る。大丈夫そうだ・・・。
『ほう。これが空馬車か・・・』
『お前は出かけられては困る』
JA4169を興味深々で見ているビスマルクにアンクス王が釘を刺す。波高は外部点検を行ったのち、貨物室に保管していた携行缶に入ったAVGAS100を燃料タンクに入れる。水抜き確認をして、エンジンオイルを確認してからランナップに入る。エンジンスタートの前に、周りの兵士、アンクス王、ビスマルク、セイン、シルダに少し離れてもらう。
コールドスタートであったこともあり、簡単にエンジンはかかった。エンジンを掛けた状態で点検を行っていく。特に問題はなさそうだ。5分後、オイルのゲージがグリーンに入ったを確認して一旦エンジンを切る。波高は機体の外に出ると、目の前の騒音に唖然としたままのアンクス王とビスマルクのところに向かった。
『これから、一旦中央基地に戻った後、討伐基地に向かいます。準備を終わらせて再びここに来ます。』
『わかった。待っている』
波高の言葉に、アンクス王が答える。
『ジルダ。乘ってくれ』
『え。どこから・・・』
飛行機に乗ったことがないシルダに間違ってフラップに乗られて困るので、後部座席を片側倒して、貨物室から、後部座席に座ってもらい、シートベルトを着ける。
『これって・・』
シートベルトを見て心配しているシルダに
『ちょっと見ててください』
といってショルダー部をゆっくりを引っ張ってみる。その後、一旦、戻した後、強く引っ張ってみる。今度はロックされて出てこない。
『今のなに・・・』
戸惑うジルダに波高は、かまわず、シートベルトをセットする。
『ゆっくりかがんでみて』
『こんな感じ・・・』
波高の言葉に反応するように、シルダはゆっくり体を前に動かす。当然ながら、シートベルトはロックしない。
『一旦戻って』
『少し早く前に移動してみて』
波高に言われるままジルダが体を動かそうとすると、シートベルトがシルダを拘束した。
『何これ・・・?!』
訳が分からないと言わんばかりのシルダに対し、
『このベルトは、衝撃がかかった時だけロックするようになっている』
波高は説明した。
『安全のためのものだからその原理はあまり気にしないでくれ・・・』
『魔法?』
波高の説明にシルダは理解が追い付ていない。
『気にしなくても大丈夫ですよ』
セインがいった。
(そういえば、セインは何も説明してないのにシートベルトしていたなあ・・・)
・・・
その後、波高、セインが操縦席に座り、左席の小窓から、
『今から出発します。また後日!!』
というと、エンジンのスタータを回す。ホットスタートなので、ミクスチャーを絞ってセルを回し、かかったところで、ミクスチャーを元に戻す。
その後、手を振ってからJA4169をタクシーさせ、滑走路端に移動。
『みんな見てるよ』
セインがアンクス王たちの方を指さした。
『では。離陸します』
フラップをアプローチにした状態で、スロットルを入れていく、わずかに上昇したところで、水平飛行をし、車輪が浮いた状態で、80㏏を超えたことを確認して上昇を始める。
離陸後、アンクス王たちの周りを1周した後、進路を西にとった。
・・・
波高は後部座席を確認すると、硬直しているジルダを確認した。
『ジルダ!大丈夫?』
『なんとか・・・』
波高の声に辛うじて返事があった。
・・・
中央基地には朝二と昼一のちょうど間(12時30分)に到着した。阿久津、ロック、シャールカは既に格納庫前で待っていた。




