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第44話 阿久津の世界

前の話が短かったので・・・。

JA4169の機内で頭を抱えている阿久津に


『知っていることを話してください』


波高はいった。阿久津は黙って頷くと顔を上げ、話始めた。


『この世界は、私が書いていた小説の世界に酷似しています』

『え?』

思わず波高は声を出してしまった。


『趣味で小説を書ていたんです。仕事が暇なときに・・・その時の話のままなんです』

『中央基地も討伐基地も・・・』

『はい。私が小説で書いていたものです』

『つまり、この世界は、阿久津さんの小説の世界?』


波高の問いにしばらくの沈黙ののち、


『わかりません』


とだけ阿久津はいった。


『それは・・・』

『実は、セスナ172で冒険者がここに来るまでしか書いてないのです。そのあと、ヘリの整備が入って忙しくなって・・・』


つまり、阿久津の書いた小説はここまでしか書かれてなく、この先の展開も考えていなかったとのこと。どうして、ここにいるのかわからないらしい・・・ちなみに、阿久津の小説では、最初に召喚されたのもセスナ172だったそうだ。


『似て異なる世界ということ・・・?』

はい。波高の問いに阿久津は力なく答えた。


『ところで、飛行機の操縦は出来るの?』

『セスナ172は出来ます』

波高の問いに阿久津は答えた。ちゃんとしたライセンスは持っていないものの、セスナ172で100h近く訓練をしていたというのである。

((これは使えるかも・・・))

波高の中で作戦がひらめいた瞬間であった。


・・・


阿久津は機体の点検と整備は出来るとのことだったので、2機の簡単な点検を頼んだ波高は、セイン、ロック、シャールカ、プレーンの4名に対して説明を始めた。


『作戦の前準備はもう少しで終わる。そのために阿久津に飛行訓練をさせる』

<ええええええええええ~>

セインが何か言いたそうだ


『セイン。何か言いたそうだが・・・』

『私も操ってみたい・・・』


セインは、自分で飛行機を操縦してみたいらしい・・・。


『残念だが、今は無理だ。1から教えるほど時間の余裕がない』

『そんなに難しいのか?』

『すぐには出来ない』

『アクツは良いのは何故~?』


ロックの問いに


『阿久津はここに来る前に100h程度訓練しているので、ほぼ操縦出来るとみている』

『なるほど』


セインは興味がありそうなのだが、特定操縦技能審査員ではあるが、教育技能証明を持っていない波高は自分には教えきれないと判断していた。異世界なので教育技能証明は要らないのだが・・・。


『飛行訓練の後、セスナ172でアンクス ペイに移動しようと思う』

<ええええええええええ~>

波高以外の4人の声が揃った。。。

『実は、ビスマルクに手紙を送って、アンクス ペイの西にある草原に滑走路を造ってもらうように依頼している』

『いつの間に・・・』

シャールカが首をかしげている。


『6人いるけど、全員?』

『いや。行くのはセインと私の2人で行こうと思う』

セインの問いに波高が答える。


『何故~?』

『ジルダを連れてくる』

ロックの問いに波高が答えた。


 『主要メンバーを連れて討伐基地に2機で移動し、今回の作戦会議をしたい』

『そのまま、アンクス ペイによって行けばいいのでは?』


セインの問いに


『航続距離的に厳しい・・・』

波高は、セスナ172ではアンクス ペイと中央基地を往復できそうだが、JA4169ではギリギリになりそうで危ないとみていた。


『飛べる距離に限界があるのですね~』

『そうなんです』

ロックの質問かどうかも判らない言葉にも答える波高であった。


((また、あの食事ができる・・・))


セイン、ロック、シャールカがにやけていた。プレーンは、その姿を見て


((なんか まずい場所なんだろうか・・・))


などと思っていた。


ちょうど、説明が終わったとき

『点検終わりましたよ』

阿久津がやってきた。


・・・


『直ぐですか』

波高は、阿久津を点検直後にセスナ172に連れていき、TGLをしてもらうことを告げ、有無を言わさず左側の操縦席に座らせる。右には波高が乗り込む。


『早速やりましょう。ATCは要りません。』

『話す先がないですからね』

波高の言葉に阿久津が返す。阿久津は、エンジンスタートさせた後、滑走路の南端までタクシーさせた。無風であるので問題はないが、いまいちラダーの動きが怪しい・・・。


『はい!離陸開始』

波高の声に合わせて、阿久津がミクスチャーを押し込む。

『右脚!!』

波高が叫んだ。慌てて阿久津が右ラダーを踏む。ようやく機体はまっすぐ滑走し始めた。速度がだんだん上がっていく、40、50、55㏏過ぎてもそのまま滑走し、60㏏まで上がってから阿久津は操縦桿を引いた。機体がふわっと浮くような感じで浮き上がる。


『久しぶり?』

『2年ぶりです』

波高は阿久津に聞いてみた。


波高の指示で、500ft上昇した後、左90°旋回、1マイルほど滑走から離れた時点で左90°旋回させて、高度1000ftで安定させる。指示どおりには飛べるようだ。


『では、ここからTGLして下さい』

と波高は言って様子を見る。阿久津はがちがちに操縦桿を握っていた。


『操縦桿は軽~く持ちましょう』

波高がそういうと、思い出したようにトリムをとって操縦桿を軽く触れるくらい修正し始めた。

((これは、慣れれば大丈夫だな。))

セスナは、固定脚なので、フラップの動作のみである。タイミングを確認していたが問題はないようである・・・が、ファイナルでどんどん速度が下がっている。安全を考えれば、60㏏くらいでファイナルアプローチをしてほしいのだが・・・。50㏏を切ったところで波高は

『速度が遅すぎ!!ゴーアランド!!』

と一言言って、ミクスチャーを押し込む。速度が60㏏に回復したところでフラップを上げさせ、トラフィックパターンに入るように波高は伝えた。阿久津の額は汗だらけである。

 その後は、問題なくTGLを6回繰り返し、約1時間の訓練を終え格納庫前に戻ってきた。


・・・


エンジン切ってから、機体外に出ると、セイン、ロック、シャールカがやってきた。


『阿久津さん、汗びっしょりだけど・・・』

『だ・・大丈夫です』

セインが心配そうに阿久津の顔を覗き込んだ。


『久しぶりだったそうだから・・・慣れれば大丈夫だろうから・・・』

波高はそれだけいうと格納庫に入っていった。

((これは追加訓練が必要かも・・・))


・・・


結局、3日間訓練行った。セイン、ロック、シャールカにはハイム村に行ってもらい、毎朝、波高と阿久津が中央基地の格納庫で寝泊まりところに来てもらうようにしてもらい、ロックのアイテムボックスで食事も運んできてもらった。


『本当にここに置いておいていいんですね~』

ロックに届けてもらった食事をテーブルに出してもらった後、速やかにハイム村に帰ってもらった。姿が見えなくなるや、波高は、自分のアイテムボックスに食事を入れる。


『なんで彼らが帰ったあとでしまうんですか?』

阿久津の問いに


『彼らに、私もアイテムボックスを持っていることを伝えていないから・・・』

波高の説明に頷いている阿久津であった。


『さて、始めましょう』

波高は阿久津に言った。


阿久津には、自力で討伐基地たどり着いてもらう必要があるので、VORホーミングの方法に至るまで訓練をした。整備士なので計器の説明はしなくてもわかっているので、実機での操作のみ行った。

((何とか大丈夫だろう・・・))

というレベルまで熱血指導した波高であった。


・・・


中央基地には討伐基地のような宿泊施設はなかった。そのため、事務所に寝泊まりしていた波高と阿久津であったが、訓練後の夜、暇な時間になってから、


『自分が書いた小説のとおりならば、留守中にロンジンの兵士が来ているはずなんだが・・・』

と阿久津が言い始めた。


『で、小説ではどうなったの?』

『謎の男が現れて殺してしまうことになっている』

『えっ?』


阿久津の予想外の答えに絶句する波高であった・・・。

((一応、周辺に変な死体がないか確認した方がよいかな・・・))

まさか本当に発生しているとは思っていない波高であった・・・。


TGL:タッチアンドゴー のことです。

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