第39話 ボンネヒル
3日後、クロードのところに行くと、セインとロックの剣、シャールカの槍は出来上がっていた。
『気合を入れて作らせてもらった!!』
クロードは自信たっぷりにいう。
セイン、ロック、シャールカは、刃先を見ながら納得の顔をしている。持った加減なども確認していたが
『使いやすい』
『素晴らしい~』
『見事な剣先だ』
3人とも出来に納得しているようだ。
『それと召喚者様にはこれを・・・』
クロードが波高に刃物が沢山ついた道具を渡す。波高は出来を確認して、
『よく出来てます。ありがとうございます。』
といって受け取った。とりあえず、ロックのアイテムボックスに入れてもらう。
(まだ、自分もアイテムボックスを持っていることは秘密にしておこう・・・)
『新しい剣での訓練を兼ねて、ボンネヒルに行こうと思うのだが・・・』
波高の発言に
『どこですか』
『初めて聞くとこだけど~』
『いつの間に調べたんですか?』
『どうして知ってるのですか?』
セイン、ロック、シャールカ、プレーンはそれぞれの反応をした。
『昨日、冒険者ギルドに行って、訓練にちょうどよさそうなところを調べてきたんだ』
『ボンネヒルのことは、プレーンから聞いていて気になったしね』
とりあえず、4人は納得したので、そのままボンネヒルに向かった。
・・・
波高は昨日冒険者ギルドに行っていない。プレーンから洞窟の話を聞いたとき、その入り口を確認したかったのと・・・そう、アンクス王宮で見つけた本、何故か表紙に
<Cessna172取扱い説明書>
と書いてあったあの本の中身を確認したのだった。本の中身は、まぎれもなく、セスナ172P型の飛行規程内容であったが、最初のページに以下の紙が挟まれていた。
ボンネヒルの洞窟にセスナ172P型を1機隠しておいた。北の瘴気発生地点である森のすぐ脇につながるアイシア村に向かう洞窟に置いたアイテムボックスの中にある。通常4名しか乗れない機体であるが、貨物スペースに1人入れるように細工してあるので、5名まで乗れるようにしてある。
この書を召喚者が手にしたとき、私は復活しているはずだ。中央基地で待っている。
初代 アンクス王
この記述が正しければ、波高は、ボンネヒルにあるセスナ172P型を見つけて、初代アンクス王が待っている中央基地に行かなくてはならないことになる。
初代 アンクス王は今もこの世界にいるのか???
実際にボンネヒルに行ってみるしかない。プレーンの話から、アイシア村とボンネヒルを繋ぐ洞窟が存在するのは間違いないみたいだから、その洞窟にいってセスナ172Pが入っているアイテムボックスを見つけなければならない・・・。
・・・
波高の事情を知らない4名は、大した疑問も持たずにボンネヒルに向かっていた。
『ボンネヒルは、魔物狩りに適したところなんですよ』
プレーンはいう。セイン、ロック、シャールカはその説明を黙って聞いていた。
『インガスの冒険者が最も行く狩場です・・・』
プレーンの説明が続いた。
・・・
ボンネヒルに到着すると、オーガが待ち構えていたよう現れた。
『早速オーガとは・・・』
セインがつぶやくと
『剣の試し切り~♪』
と言って、ロックがオーガに向かって突進していった。
オーガもロックに向かって走り始める・・・。衝突する直前、左にはねたロックは右手に持った剣でオーガの右腕に切りつけた。つぎの瞬間、オーガの右腕は胴体から離れ地面に落下していた。
『すごい』
その姿を見ていたセインは驚いている。
ロックは、そのまま、オーガの背後をとると、飛び上がって背中から切りつけた。
オーガは自分に起きていたことが理解できていなかったらしい・・・そのまま前に倒れこんで絶命した。
『この剣は素晴らしい』
ロックは剣を見ながらつぶやいている。
『今までと動きが違って、やたら早かったけど・・・』
シャールカの一言に、
『何故か、この剣を持ったら体が軽くなったんだ。体が勝手に動く。まるで剣に誘導されたみたいに・・・』
とロックがよくわからないことを言う。
『まさか・・・』
波高、プレーン、シャールカが口をそろえて言おうとしたとき、
セインに別のオーガが襲い掛かった。
『え!』
驚いたセインであったが、とっさに剣を抜くと、体が右に跳ね、空中でオーガに向きを変えたところで斬撃を放つ・・・。
『・・・倒しちゃった』
セインは首と胴体が切り離されたオーガ見てつぶやいた。
本人は何も意識した覚えはない。にもかかわらず、剣を抜いた途端に体が勝手に動いた・・・何故?
『どうやら普通の剣ではないみたいですね』
プレーンがロックとセインを見ながら話しかけた。
その後、オーガ、オーク、デザードなどが現れたが、ロックとセインの剣は、たやすく魔物を討伐していく・・・。
『すごい剣だ』
セインは思わず叫んだ。
『私の槍の試しができないでしょうが・・・』
シャールカの一言により、セインとロックは剣を一旦収めた。直後にオーガが現れたので、セインとロックはシャールカに “どうぞ”と手で示した。
無言で頷いたシャールカは槍を手にしてオーガに向かう。その1撃はオーガの心臓を貫き、1撃で仕留めてしまった。
『シャールカの槍も強くなってない?』
波高はシャールカに確認すると、
『勝手に体が動いたような感じで倒してしまったよ』
とあまり実感のない様子である。
(クロードが用意した剣と修繕したシャールカの槍に何か細工をしたことは間違いなさそうだ・・・不思議な力が込められているようだ)
・・・
『プレーンの実力も見ておきたいな』
波高はプレーンの持つ魔物剣を指さしながらいうと、セイン、ロック、シャールカの3人も頷いた。
『そうですよね』
プレーンも納得したとのとき、
前方からオークが10匹、突進してきた。
『ちょうどいい』
とプレーンはいうと、魔物剣をオークの群れに向かって放った。謎の光が三日月を描いてオーガに向かって飛んでいく。
『あっ!!』
プレーン以外の波高たち4人が言ったつぎの瞬間、10匹のオークの胴体は、上下別れていた・・・。
『すごい』
『すっけ~!!』
『怖~い』
とセイン、ロック、シャールカが声を上げた。波高は何故か無言・・・
(ファンタジーの世界そのまま・・・)
謎の事象をファンタジーの世界だからで済まそうとしていた。
・・・
討伐した魔物はロックのアイテムボックスに収納した。既に常識はずれの量である。
『プレーンが洞窟から出てきたところに連れて行ってくれ』
波高はプレーンに向かっていった。
『でも、入ることは出来なかったけど・・・』
プレーンが答えるも、波高はプレーンを見続ける・・・。
『わかったよ。連れて行くから』
波高の意思が変わらないと見たプレーンはあきらめたようにいった。
・・・
『ここです』
プレーンが波高たちを連れてきたところは、ボンネヒルを見渡しても、ちょっと周りから見えない隠れた部分だった。北側に、崖のような壁の部分があり、その部分を隠すように木が茂っていた。そして、崖には石板のような金属の板が出来ていた。
『なんか似たようなものを見なかったっけ~』
ロックは東峠にあった石板を思い出していた。
『似ているような、違うような・・・』
セインとシャールカは妙な言い方をしている。
波高は見た瞬間、確信を持った。
(これは自動ドアだ)
そう、エレベータの入り口のような構造になっていたのである。おまけに、入り口の左側にボタンを隠しておいたと思わるステンレスのような金属の蓋部分があった。
『おそらくここを開けると・・・』
波高はセインたちを無視して金属の蓋を開ける。
そこに、予想通りボタンがあった。波高はそれを押すと・・・。
石板は横に動き出し、洞窟の入り口が見えてきた。
『入ろう』
波高は唖然とする4人に言った。
・・・
何に入ると、予想通り、討伐基地の通路と同様の構造になっていた。ドアは4人が波高のあと追って中に入った途端に閉まった。
閉まったドアに慌てる4人、
『大丈夫だよ・・・たぶん』
波高は4人にいう。
『ウェブハイトさん。まるで知っていたようですが・・・』
セインが訪ねてくる。
『見た瞬間わかったよ。ここは、討伐基地と同じように作られてみたいだ』
波高にも、何故、このようなものがこの世界にあるのかは謎であったが・・・。
『プレーンさんはこの通路を歩いてきたのでしょう』
波高はプレーンに確認する。
『はい。間違いないです』
波高は左右の壁を見ながら進んでいく。3日歩けば、アイシア村に着くのだろうが、そこまで行く気はない。
きっとどこかに隠し部屋が・・・と思ったとたん、それは、すぐ左側にあった。自動で開かないようにボタンがある。波高がボタンを押すとドアが開いた。
<<ええええええ~>>
セインたち4名はまたまた驚愕している。
(そろそろ、自動ドアにもなれてもいいんじゃないかなあ・・・)
波高は中に入っていく。
そこには、
<<なんじゃこりゃー>>
セインたち声が後ろから聞こえる中
(やっぱり・・・)
と思っている波高がいた。
そう、セスナ172P型があった。
『ウェブハイトさんの乗っていた空飛ぶ馬車とはちょっと形が違うみたいだけど、これもそうなの?』
シャールカが聞いてきた。
『そうだよ。機種が違うのだけど、これも飛行機だ』
『きしゅ?』
波高の説明に???がいっぱいのセインたち4名であった。
・・・
左席のドアを開け、中を覗いてみる。VOR2機に無線機が2機トランスポンダはC型のようだ。何故かDMEもついている。セスナ172Pとしては問題ない装備である。そして無線機のつまみ部にキーがぶら下がっていた。マスタースイッチを入れると、無線機とトランスポンダの電源が入った。フラップを動作させてみると、普通に動く。操縦桿を握って動かすと、エルロンも正常に動く。その後、外部点検をするも、全て正常。ライト類も問題なく、よじ登って、左右の主翼にあるタンクにはAVGAS100が満タン状態であった。カウリングは外せなかったがオイルも問題ない。
(恐らく飛べるだろう、でもどうやってここから出すんだ?)
この部屋にはこの機体を出すだけの出入り口はなかった。
ふと床を見ると、何か妙なものがあった。
これは・・・アイテムボックスであった。
波高は、セインを呼ぶと、アイテムボックスを指さした。
『これは、セインが受け取るといい』
セインは“???”と顔に浮かべながらも手に取ろうとすると、それは忽然と消えた。
『え?』
セインは驚く。
『これで、セインもアイテムボックス持ちだ。開いてごらん』
波高に促されるまでもなく、セインには、なんとなくアイテムボックスが体の一部になった感触があった。そしてアイテムボックスを開こうと思ったとたん、セインの脇に謎の空間が発生した。
『これがアイテムボックス?』
セインはまだ驚いている。
脇で見ていたロックが、
『同じものみたいですね~』
と言い始める。
月の瞬間、セインの顔がほころんだ。
『こんなすごいものを貰ってよかったの?』
『他の人に渡す方法を知らないから、一生セインのものです。たぶん』
セインの問いに波高が答える。
『で、早速ですが、この飛行機をアイテムボックスにしまってください』
<<ええええええ~>>
『どうやって?』
セインが真面目に聞いてくる。
『飛行機を掴むようなイメージをもってアイテムボックスの中に入れてみてください』
とだけ波高はいう。
『えい!』
セインは、そんなことできるわけがないと思いながらやってみると、目のまえの飛行機は消えていた・・・。
『うそ・・・』
『アイテムボックスの中身を確認してみて』
ロックがいうと
セインの脳内にアイテムボックス内を漂う飛行機があった。
『あるみたい・・・』
セインは起きている出来事を理解しきれないでいた・・・。
他にこの空間には何もないことを確認して再び通路に戻る。ドアは自動で開いた。洞窟を出口に向かって歩き出すと、先ほどの部屋のドアは自動で閉まり元の壁に戻った。
『討伐基地と同じです』
という波高の説明に、セイン、ロック、シャールカは納得したが、プレーンは
『討伐基地って何ですか?』
とつぶやいた。
・・・
洞窟の出口からボンネヒルに出た波高達。波高は
『一旦インガスに戻りましょう。ここでの準備は終わったようです。プレーンにも討伐基地に来てもらいます』
というと、歩き出した。
セイン、ロック、シャールカは黙ってついて行っている。プレーンは
(討伐基地ってなあに?)
という疑問を持ったままあとについて行った。
何故か出てきたセスナ172P




