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第2話 魔物対策会議

 ここは大陸中央にある、ローマン王国、王都ローマンにある王宮の会議室である。

大陸中に生息するようになった様々な魔物をどうにかするため、大陸にある、各国の代表者(一部はその代理)が集まった。ローマン王国は、大陸の中心にあり、周囲を大山脈で囲まれているため、魔物の侵入は少なかった。恐らく、各国と結んでいる街道付近以外は、魔物も山脈を超えて入りにくいらしい・・・。


『魔物は、国ごとに対応してては解決しませんぞ』

会議の冒頭、ローマン王、ローマン=フォン=セントが口火を切る。50歳のこの国王はアンクス王と歳こそ同じだが、なんでも自分でやりたがる熱血漢であった。


『我が国の兵、1万が全滅してしまっている状況を考えると・・・』

全権を任されたアンクス王国のビスマルクが力なく発言する。


『どこぞの馬鹿が、森に入ったらしいと聞いているが・・・』

ロンジン国の元帥であるモスビス=ベルミーヤが、不満そうに言い放つ。5年前にクーデターを起こして国を支配、首都を自分の名前「モスビス」にしてしまった男である。そして、何故か、この会議に自らやってきた。

『魔物を食ってみたら、意外にうまかったぞ』

どうやら、自らの弓と剣で魔物を倒し、食べてみたらしい。

『オークは豚みたいな味、オーガは熊のような味だったわい』


『亡命者がたくさん流入して大変なんですよ。どうしてくれるんですか!!』

と一見関係なさそうなことを言っているのは、南西の国であるロシジア国王、ロンガス=フォン=ロイズである。瘴気の発生個所から遠いせいもあるのか、魔物も多くはないようで、それより、5年前のロンジン国のクーデターにより、兄弟のように親密であった元友好国から来た、たくさんの亡命者に困っていることの方が優先らしい。


『国を捨てるようなやつは知らん!!』

モスビスは、不快感いっぱいとばかりに言い放つ。


『もともとの瘴気の発生は大陸北の森であったが、他からも魔物は発生している可能性がある。そうでないと数が多すぎる。大陸全体の問題だと思ってほしい』

会議に参加している、ロシジア国の皇太子 ローマン=フォン=セスナが言い出す。セスナは部下を大陸各地に調査に向かわせ、魔物の発生数を調べさせている。その結果、大陸北の森からだけ発生しているのでは辻褄があわないらしい。父である国王と違って、大陸全体の心配をしているらしい・・・。


『といっても、大陸の北側の発生が多いのでしょう?』

ロシジア国王が言い返す。自分の息子の発言を台無しにする国王であった・・・。


・・・


丸3日にわたる会議の末、以下のことが決まった


・魔物に対するため、冒険者という職業を養成し、冒険者ギルドを設立、討伐した内容ごとにギルドから褒美をだすようにする。冒険者は各国共通とし、国の往来を自由とする。


・魔物を食料として流通させる。冒険者に討伐させた魔物を引き取る場所を各街のギルド支部に隣接して設置する。


こうして、大陸の各街に冒険者ギルドが設置された。住民からの要望で、人や馬車の護衛、薬草の採取など、街の外が危険になってしまったことでできなくなった作業も、ギルドが受け付けて、冒険者に仕事の斡旋をすることとなった・・・。


莫大な運営費は、ギルド販売することになる魔物の肉による利益、各種住民からの依頼の取次料、各国からの拠出金で賄われることとなった。


・・・


各国の代表が帰国したローマン王国では、王族が集まっていた。

  国王:ローマン=フォン=セント 50歳

  王女:ローマン=フォン=ミント 20歳

  王女:ローマン=フォン=エレス 15歳

  王子:ローマン=フォン=セイン 10歳

王妃は既に亡くなっており、3人の子がこの国の次期国王候補であった。


『魔物って強いって聞いたけど』

ミントが口火を切る。

『各国にはああいったが、わが国は大山脈のおかげで魔物の侵入が少ないから大丈夫』

セント王がつい本音をいうと、

『瘴気が我が国から発生するかもしれないではないですか!!』

セインが顔を膨らませて叫ぶ。10歳とは思えない・・・。


『王宮からでなければ大丈夫ですわね』

エレスは解っているのかいないのか、自分だけは安全と思っているらしい・・・。


『我が国の古い資料によると、異世界から人を召喚する方法があると聞く、アンクス王国の資料では、北の瘴気は初代アンクス王が封印したことになっているが、その初代アンクス王は、わが国の秘術により異世界から召喚されたらしい』

セント王の言葉に、3人の子供は父が乱心したのでは心配し始めた。


『こらこら、そんな変な目で見るな。わしは正気じゃ』

セント王は子供たちの様子に慌てて反応する。


『我が国の北にあるハイム村に遺跡がある。この遺跡の最深部に召喚の秘術を記した書と、まほうじん というものがあると代々言い伝えられている』


(誰の言い伝えだよ!!!)

3人の子供の気持ちが揃った。


『その言い伝えが事実だとして、父上はどうされるおつもりですか?』

セインの10歳とは思えない質問が飛ぶ。


『うむ。瘴気から発生したと思われる魔物は、正直なところ、我々では退治できない。瘴気を再び封印するためには、異世界から秘術を用いて召喚を行うしかあるまい』

セント王は薄くなった髪の毛を触りながら話を始めた。


『ただし、この秘術は王族が行わなければならないと聞いている。そこでだ、セイン、ハイム村の遺跡に行って、秘術を行い、異世界から召喚をしてきてくれ!! たのむ!!』

セント王、予想外の無茶ぶりである。


『父上、王命とあれば、ハイム村に行って秘術について調査はします。ですが、調べてみないと異世界からの召喚などできるかどうかわかりません。』

セインは10歳と思えない回答である。


『むむ、何としても調べて、秘術を行い、異世界から召喚を行うのだ!!』

ムキになって、髪の毛をかきむしりながらセント王が言い放つ。


『父上、わかりました。ハイム村に行ってみます。ですが、私には父上の髪の毛ほどの可能性も感じません』

セインがむっとして言い放つ。

『・・・』

もはや何も言えなくなった他3人であった。



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