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第20話 ローマンへ

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

ハイム村の村長宅では・・・

『防具くらい身につけないと危険』

『こんなの着て歩けないよ』


セインと波高のやり取りである。ここからローマンまでは陸路を歩いていくしかない。

派遣されてきたコルノーたちも全て歩いてきたため、誰も乗り物がなかった。


『ブリトンの街からは馬車が用意できると思うのですが・・・』


コルノーも弱気である。波高はこの世界の魔物は、神殿こと中央基地からハイム村の間で出会ったものしか知らなかった。それも、セインたち3人に守られながら移動していたため、ほとんど魔物を見ていない。何せ、倒すとすぐにロックがアイテムボックスに収納してしまったから・・・。


結局、ハイム村にあった革鎧だけをつけ、万一用に短剣を腰につけた。短剣と言っても、刃の長さが30cmくらいあるので、波高にとっては触ったこともない大型ナイフにしか見えなかった。途中の橋はまだできていないと思われるため、歩いていくしか方法がないという事実もあったのだ。先頭にコルノー、その後ろにセインが続き、波高の両隣にロックとシャールカがつき、最後尾をコルノーの部下たちがついていくことになった。

『無事にローマンに着くことを祈っておりますじゃ』

ノイマンの言葉に見送られ、一向はブリトンの街に向かって街道を進んでいった。

4日もあればブリトンに着くと思われたが・・・。

 1日目は良かった、途中、オークが出てきたが、難なく討伐してロックのアイテムボックスに収納された。夕食は、オーク肉の丸焼きとなった・・・。ロックが持っていたテントは3人が限界であった。が、女性であるシャールカをテントの外にするわけにもいかず、結局、シャールカのみがテントに入ることになった。

 『野宿か・・・』

波高には初めての経験であった。アウトドアは飛行機の操縦以外あまりしていなかったので、キャンプなどしたこともなく、ましてや魔物が出るかもしれない森で、テントもない中で夜を過ごすのは恐怖であった。

 2日目以降は、明らかに寝不足と筋肉痛の波高のため、歩く速度が遅くなっていた。

(これはえらいことになってしまった・・・)

波高は早く街につてほしいと願いつつ、筋肉痛と戦っていたのであった。


・・・


3日目の昼二(午後3時)、セインとロックにとって見覚えのある川が見えてきた。対岸に橋の建設資材が置かれているが、まだ工事はされていなかった。

『やはり・・・』

セインは渋い顔であった。できれば、川を渡ってから今日の野営とすべきなのだろうが、そこは、ミツツノと戦った地である。あのミツツノは討伐したが、あそこで野営する気にはなれなかった。

『ちょっと早いが、ここで野営しよう』

セインが提案する。ロックはセインの意図がよくわかった。ロックとしても、気が進まないので、賛成である。一方、早くローマンにたどり着きたいコルノーたちは不満であったが、セインの提案なので、だれも反論できない。

そんな中、シャールカが

『じゃ、ちょっと川で魚をとってくるよ』

と一人川に行ってしまった。


・・・


1時間後、どうやったのかわからないが、槍で着いたと思われる魚を多数抱えてシャールカが戻ってきた。

『大漁、大漁!!』

と一人ご機嫌である。

以前は、魚を捕りに来ていたそうで、勝手知ったる川だったそうだ。

1匹づつさばいて、櫛にさして焼いていく・・・。

魔物肉が続いていたので、波高はこの魚に大喜びであった。

それを見ていた他のメンバーは

(ウェブハイトは魚が好きらしい・・・)

と思うのだった。

一方、波高は、(ごはんが食べたい~)と思いつつ、ぐっと我慢するしかなかった。この世界に米があるのかすら判らないので・・・。


・・・


翌朝、川の浅瀬を渡り、ブリトンの街を目指した。すると、反対側から兵士らしき人が歩いてくる。向こうも気がつたのが、こちらに走ってきた。

『隊長~!!』

そう、ハイムの村について事情を聴いた直後、伝令をしてローマンに向かわせた兵士であった。

『無事だったか』

先頭を歩いていたコルノーが答える。伝令の話を聞くためもあって、休憩をとることにした。

『陛下からのご命令を連絡いたします。セイン王子及び異世界からの召喚者を王宮にお連れするようにとのことでした』

『しかと聞いた』

伝令に対しコルノーが答えた。このあたりは軍としての規律なのだろう。伝令もコルノーも直立不動の姿勢で敬礼している。

 と次の瞬間、2人とも姿勢を崩し、

『お疲れ様』

とコルノーが伝令に話しかける。伝令も、

『皆さま、ご無事でよかったです』

と普通の会話に戻っていた。

『お迎えの馬車がブリトンまで来ております』

『わかった』

コルノーが安堵の顔を浮かべた。そう、波高の体力が心配だったのである。

『ウェブハイトさん。明日にはブリトンの街につけるはずです。ここで一泊してから馬車に乗りましょう』

コルノーの説明に、波高はもちろん、セイン、ロック、シャールカもほっとしていた。


・・・


休憩の後、伝令が

『先に行って準備をしてまいります』

と言って、ブリトンの街に駆けて行った。途中、三つ目ウサギを狩りながら、1泊し、翌日の昼にはブリトンの街が見えるところでくることが出来た。

(どうせなら、馬車で迎えに来てくれても・・・)

筋肉痛の脚が限界に近い波高であった。


・・・


ブリトンの街に到着した。途中、波高が期待した馬車のお迎えは来なかった・・・。城壁の門までくると、ブリトンの街の代表が待っていた。

『ようこそブリトンの街へ』

不気味なほどの愛想笑いに満ちた初老の男であった。屋敷で晩餐などと言っていたが、疲労のため、丁重にお断りしていただき、街の代表(実は貴族らしい)が使っている屋敷に案内された。

波高はメイドに案内され、連れてこられた部屋に入るなり、ベットに倒れた。

『ご、御用があれば、いつでもお呼びください』

メイドが顔を引きつらせながらいうと、部屋の扉を閉めて行った。

(疲れた~!!足が痛い。)

長旅の疲れか、そのまま夢の中に行ってしまった・・・。


・・・


セインたちは、街の代表に礼を言ったのち、セインの部屋に集合していた。

『ウェブハイトさんは、そっとしておいた方がよいだろう・・・。』

『体力はないみたいだな~』

『異世界ではあまり歩くことはないようだな』

セイン、ロック、シャールカはそれぞれの意見をいう。あの様子では、夕食に出てくるかも怪しいと3人は見ている。

『お疲れのところ申し判りませんが、明日には、用意させていただいた馬車に皆さま乗っていただき、ローマンに向かいたいと考えております』

さすが軍人だけあって、コルノーは疲労の顔を見せない。部下とは先ほど馬車の手配状況を確認してあった。


・・・


 波高はメイドに起こされ、夕食の席にやってきた。中世の貴族の食事そのままの豪華な装飾の部屋、テーブル、椅子、そして、この世界に来て初めて見る豪華な食事・・・。疲労などどこかに忘れて急いでテーブルに着いた。

『改めまして、ブリトンの街を代表して皆さまを歓迎いたします』

街の代表をしているブリトン=フォン=アルバンという貴族らしい・・・。爵位はあるのだろうが波高には興味はなかった。ただ、目の前にある食事には興味120%の状態だが、あいにく波高はテーブルマナーというものとは無縁な生活であったので、どうしてよいのかわからなかった。そこで、一緒にここまで来た3人、とりわけロックやシャールカの動きをまねるべく、目を凝らしていた。

(ウェブハイトがさっきからこっちばかり見ている・・・)

ロックとシャールカは気になりながらも、気が付かないふりをしていた・・・。


・・・


 翌朝、波高は部屋の中で考えていた。

(このままローマンに行けば、この国の国王に会えるだろう。そこで、アンクス王国への紹介状を貰ってアンクス国王に会いに行こう。きっと何かがあるに違いない・・・)

ドアを叩く音がした、しばらくしてメイドが入ってきて

『ウェブハイト様。朝食の準備が出来ました』

とのこと。メイドに連れられて食堂に向かった。



 朝食後、用意されていた馬車に乗り込む。波高は、ようやく脚の筋肉痛から解放されるのを喜んでいた。屋敷の主、ブリトン=フォン=アルバンに見送られ、馬車はローマンに向かう。

『ローマンまではどれくらいかかる予定なの』

シャールカがセインに向かった話始めた。

『3日くらい・・・』

この国の移動はだいたいでしか時間が読めないものらしい・・・。

『ローマンには先ぶれが向かってくれたので、父上やミグが準備をしてくれていると思う』

『準備・・・?』

セインの説明に、波高がつぶやく。

『まず、父であるローマン国王に謁見してもらう』

セインの言葉にハイム村からブリトンまで、延々と歩いてきた波高は不機嫌になる・・・。その姿にロック、シャールカは驚いていた。

『私はこの国の国民ではないよね。あなた方によってこの世界に召喚されてきただけのはずです』

『・・・』

『瘴気を封印することにしても、この世界の都合なのではないですか?』

波高の言葉に何も言わなくなる3人。波高にとって、この世界は迷惑この上ない災難でしかないことは3人も理解していた。この国民にとって国王に謁見できることは名誉であっても、波高にとって異世界の権力者でしかないということを忘れていたのだ。

『では、どうしたらいい』

セインが訪ねる。

『謁見などという面倒なことはしたくない』

と波高はいうと、続けて、

『今のところ、元の世界に戻る方法はわからない。なので、ここで過ごすしかない状況だと理解している』

『ここで生きるためには、魔物の発生を抑えないと暮らせない状況であることは感じている』

3人が首を縦に振っている。

『魔物を発生させないようにするには、瘴気を抑える必要があると理解している』

『今までの出来事から、この大陸の瘴気は5か所から発生するらしく、5か所同時に封印することで、瘴気の地上への発生を防ぐことが出来るらしい』

3人が頷く。

『しかし、瘴気の発生個所は、大陸北の森しか確認されていない』

波高が3人の顔を見渡す。3人とも真剣だ。

『残りの4か所の所在を調べなければならない。その情報があるとすれば、初代アンクス王とかかわりが深い、アンクス王国に行くしかないと思う』

『だが、行ってどうする』

ロックが顔を波高に向け、つぶやいた。

『おそらく、アンクス国王は何か初代王の情報をもっていると推定している』

『・・・』

『なので、アンクス国王に会って、その内容を確認したい』

『ハイム村で捕らえたアンクス王国兵を逃がしたのもそのためか?』

シャールカの問いに

『そうだ。奴は、ビスマルクというものの指示で動いていたと言っていた』

『ビスマルクはアンクス王国の宰相ですよ』

話をじっと聞いていたコルノーが叫んだ。

『らしいね。なので、こちらの意向は先方に伝わっていると思われる』

『・・・』

『国王が身元不明なものに会うわけにもいかないだろうから、ローマン国には、紹介状を書いてほしいと思っている』

『それは、私から父上に話しておこう』

セインはそういうのが精いっぱいであった。

『そして、ロックにはついてきてもらう必要がある』

波高の一言にセインとシャールカが不機嫌になる

『なんでロックだけなんだ』

セインは思わず声が大きくなった。コルノーがその声に驚いている。

『セインやシャールカが要らないと言っているわけではない。だが、ロックは絶対についてきてもらう必要がある』

『アイテムボックスがあるから~だよね♪』

ロックは冷静であった。


・・・


ローマンまで移動する馬車内では、この先どうするかずっと議論をしていた。最終的には波高の主張を3人が呑む形になった・・・というより、呑まざるを得なかったのである。

とにかく、国王に謁見という形式が波高には嫌だったのである。しかし、波高にしか初代アンクス王の残した文字が読めず、討伐基地も波高しか装置の使い方がわからないのだから・・・。

 そして波高は別のことをこの時に考えていた。

(馬車って尻が痛くなる・・・)

そう、道も舗装もされていなければ、馬車にサスペンションもないこの世界の馬車は、乗り心地が悪かった。

(機内に置いといた座布団を持ってくればよかった・・・)


2022/3/14 誤記修正

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