第19話 王都ローマン
今年最後の投降になると思います。来年もよろしくお願いいたします。
『陛下!!』
ローマン王国の王宮走るミグがいた。さすがに70歳のミグに王宮は広すぎた。目指すのはローマン国王であるセントの執務室である。
『さっき空を何かとんでいったな』
ミグが駆け込んできたのを見計らって、セントは声をかけた。警備をする兵には、入り口を開けさせて・・・。
『はあはあ・・・はい』
『神殿の方に行ったようだが・・・』
『はあはあ・・・おそらく』
ミグはあまりに急いできたので、セントの問いに答えるのがやっとであった。
『それほど慌ててきたのだ、何か報告があるのだろう』
セントの問いにやっと呼吸を整えたミグは
『ハイム村に派遣した兵から伝令が来ました』
『ほう』
『セイン様たちは神殿にたどり着き、召喚に成功されたそうです。その時、神殿の周辺が大きく変化し、見たこともない形になったそうです』
『それが地震の原因だったのだな』
『はい』
『セインたちはどうした。無事なのか』
『無事なようなのですが、ハイム村長の話では、“とうばつきち”というところ行ってしまわれたそうで・・・』
『あの、ものすごい音を出しながら飛んでいた鳥と何か関係あるのか』
『はい。異世界からの召喚者があの鳥にのっていたそうです。そして、セイン様たちも、その鳥に乗られて“とうばつきち”なるところに向かわれたそうです』
『その“とうばつきち”なるものはどこにあるのだ』
『わかりません。南の方らしいです』
『であれば、さきほどの鳥は南から北に飛んで行ったので、神殿に戻ってきたのではないのか?』
『おそらく』
『伝令に伝えよ。ハイム村に戻りセインを見つけ次第、セイン及び異世界からの召喚者を王宮にお連れするように』
『仰せのままに』
走っていこうとするミグに
『走らなくてもよい』
セントの声が響いた。
(セインは召喚の成功した)
ローマン王国にも秘密の言い伝えがあった。
(まだセインには話していなかったが、異世界からの召喚者が来たら説明するしかあるまい・・・)
セントは、執務室の奥にある、国王のみが知る隠し部屋の入り口を見つめていた・・・。
・・・
(これは、報告しなければ・・・)
やっとのことでローマンにたどりつた彼は、冒険者のように見えたが、その正体はロンジン国モスビス防衛部隊に所属するエミールであった。隊長から命を受け、ローマンに謎の鳥について調査するように言われたのだが、兵士のままで他国に行くのは都合が悪かったので、できたばかりの冒険者になってローマンまで旅をしてきたのだった。そして、ついた途端、上空を南から北に移動する鳥のようなものを発見したのである。エミールはこれが、謎の鳥であると直感した。情報を得るため、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは、カウンターと居酒屋のようなテーブルと椅子があるエリアに分かれていた。エミールは、たまたまテーブルに座っていた体格のいい男に近づいた。
『はじめまして、他国から冒険者として旅をしているものです。ちょっといいですか』
テーブルに座っていた男は、立ち上がりエミールを睨み、
『このアルバン様に何の用だ』
腰にさしたショートソードが揺れている。
『いや、見たことがない変な鳥が飛んでいきましたが・・・』
エミールはアルバンに臆することなく話を始める。
『おう、数日前にも見たやつがある。飛んで行った方向が逆らしい。ここでも話題になっているが、誰もなんだか知らねえ・・・。』
アルバンは見かけと違って、親切な男であった。エミールを、田舎から出てきたばかりの冒険者と見たようだ。
『ローマンに滞在するなら、カウンターで手続きをしな』
アルバンはそれだけ言うと、何か用事があったのか、ギルドを出て行ってしまった。
エミールはギルドにいた他の連中にも同様の質問をしてみたが、誰も鳥の正体を知らなかった。
(ここには情報がないようだ・・・)
エミールは冒険者ギルドを出て行った・・・。
・・・
ローマンの宿に入ったエミールはどうするべきか悩んでいた。商人ギルドに頼めば、手紙をロンジンに送ることはできるだろう。だが、途中に中身を見られる危険がある。ロンジンが鳥のことについて調査していることは公開されていないので、露見しないようにすべきとエミールは判断した。もう少し、ローマンに留まって、情報を探すしかなかったのだった。まだ、鳥の正体がわからないのだから・・・。
・・・
大山脈の南峠を移動する一行があった。ロシジア王国の使者である。使者としてローマンに行ってくれるものが見つからず、ロシジア王ロイズは、娘のリシューを無理やり使者にし、近衛兵を護衛につけて送り出していた。
『せめて馬車が通れる程度であれば・・・』
リシューはため息をつきながら、南峠を歩いていた。
『峠を越せば、馬車を確保してございます』
近衛兵に言われて仕方なく山道を歩いていた。
その時、護衛の兵が、空で光るものを発見した。
『あれは何だ?』
皆が護衛の兵が指をさす方を見ると、見たこともない鳥のようなものが空にいた。
『あれが、ローマン王国に問いただす鳥でしょうか・・・』
リシューは不吉なものを見るような、できれば関わりたくないような気がしてならなかった。
しばらく、歩くのをやめ、鳥のようなものを見ていると、それは、ローマンに向かって北上していってしまった。
『ローマン王国に行きましょう。あれがなんであるか確認しなければなりません』
リシューは仕方なく、峠道を歩いて行った・・・。
・・・
謎の鳥はローマンの王都でも多数目撃されてしまっていた。王都民といえども、王宮に問いただすわけにはいかなかったので、冒険者ギルドに情報がないか聞きに来るものが現れていた。
走ってきたと思われる若者が、冒険者ギルドにはいるなり、カウンターにやってきて、
『はあ、はあ・・・さっき見た鳥のようなものなのですが・・・』
カウンターの女性はうんざりしていた。
(これで何人目だろう・・・)
『冒険者ギルドでも謎の鳥が何であるのか判りません』
もう、何回も同じ回答をしている。彼女自身はギルド内にいたので、鳥は見ていない。
新種の魔物情報も来ていない。その可能性はあるのだが・・・。
カウンターでのやり取りをテーブルで、エールを飲みながら聞いている男がいた。ロシジン国のエミールである。情報収集しようにも、行くところがないので、冒険者ギルドで飲んだくれるふりをしていたのである。
(王都内に情報はなさそうだな・・・)




