第1話 瘴気の発生
序章は毎日投稿します。その後は、週1回の投稿を予定しています。実験的な作品なので見苦しいところもあると思います。何卒、ご容赦ください。
大陸の北側にある、アンクス王国とロンジン国の国境にある森。昔から人が入ると災いが起こると言われ、森の中心部には人が入ることはなかった。
・・・
アンクス王国の北部にある、アイシア村、すぐ西には、入ると災いがあるという森が広がる、人口140人ほどの村である。
『こんな村で一生暮らすのは嫌だ!!冒険に行くんだ!!』
村の数少ない若者の1人であるペニーは叫んでいた。何もない村、人が入ることを拒んでいるという西に広がる森。森が見渡せる村のはずれにある丘から見えるのは、森、森、森・・・。
村の長老たちからは、子供のころから、森には入らないように言われていた。ペニーがその理由を聞いても、長老の誰も答えなかった。いや、長老たちもその理由を知らなかった・・・。
ある日の早朝、大量の干し肉と水を入れた水筒をもって、ペニーは家を出た。
(俺が、この森を超えてロンジン国への路を切り開けば、アンクス王国とロンジン国の間で交易ができる。そうすれば、村も栄えるはずだ。)
ペニーは一人森に入っていく、ひたすら西に向かえば、ロンジン国に出られるはず・・・であった。
森は、木が生い茂り暗かった。それでも、ところどころ見える日差しを頼りに西に向かっていく、森には、何故か動物がいない。鳥の鳴き声も聞こえない。初日は村でも見たような草が地面に生えていたが、2日目になると1mほどの深緑色した草が生えていた。
(おかしい。木に遮られて草は生えにくいはずだが・・・)
ペニーは不思議に思いながらも西向かって移動していく・・・。
何日か経った時点で木に遮られて空が全く見えなくなった。昼間のはずだが、薄暗い・・・。
更に煤で行くと、足元が地面に沈みだした・・・。
(ここは沼?)
慌てて戻ろうとしたその時、突然、付近の地面が黒くなり、落とし穴にでも落ちるかのようにその黒い地面にペニーは吸い込まれていった・・・。
ペニーが吸い込まれた後、黒い煙のようなものが広がりだした。
・・・
『ペニーがいないぞ!!』
村の人たちは、ペニーが突然いなくなったことに慌てていた。村のくらしに退屈していたペニーはいつか王都にでも行くのではと村の人は思っていたが、それでもいなくなると皆心配した。村中探しても見つからないとわかった後、長老たちは、ペニーの住んでいた家を見に行くことにした。そして、家の中から見つかったロンジン国の地図、森の中に引いてある、謎の線が掛かれているものを発見するのだった・・・。
『まさか・・・』
長老たちの声がハモった。
そして、王都方面に向かうのであれば、必ず通る1本道に向かった形跡がないことから、皆の心配は更に高まった。
『森に入ってしまったのでは・・・』
数日後、村の西のはずれに見たことのない生き物が現れた。豚そっくりな顔をした2mくらいの2足歩の魔物、猪のようだが、3つも頭に角が生えた3mはあろうかという魔物、角が真ん中に生えた熊のような魔物・・・動物がいないはずの森からいろいろな魔物が現れた。
『長老~!!!』
最初に見つけた初老のおじさんは慌てて長老たちのところに駆け込んだ。
『見たこともないような生き物・・・いや魔物が森から現れました~!』
長老を見るなり、おじさんは叫んだ。
・・・
アンクス王国の王城で、この国の宰相であるビスマルクは報告を聞いていた。
15歳も年下の国王・・・といっても50歳なのだが、あまりに弱きというか頼りないので、王族でもあるビスマルクが65歳の老体にも関わらず、国を取り仕切っていたのである。なので、重要な報告も国王ではなく、ビスマルクのみが聞くのがこの国、アンクス王国の常識であった。
『西の森から魔物が出て、アイシアの村を襲い壊滅させたとのことです』
村から逃げてきたという婦人からの連絡を受け、インガスの街の兵士がアイシア村に行った結果、村のあった場所には、建物らしきものは何もなく、数人の村人だったと思われる肉片が散乱していたのである。140人いた村人の大半はどこに行ったのかわからない・・・。
村から逃げてきたという婦人曰く、
『たまたま、馬車でインガスの街に買い物に行く予定で村を出ようとしたとき、魔物の群れが村を襲ってきた。あとはひたすらインガスまで馬車を走らせてきた』
という。
『盗賊とかではなく?』
ビスマルクは報告する兵士に尋ねると、
『村には襲うような財宝もなければ、食料も収穫期前であまりなかったはずで、あんな辺境の村をわざわざ襲うとは思えません。それに、村の西は、動物もいない森ですし・・・』
『まさか、誰かあの森に入っていったのではないのか!!』
ビスマルクは慌てた。アイシア村の西にある森には、ある言い伝えがあった。
(村人に教えたら、逃げ出すだろうから言わなかったが・・・失敗だったろうか・・・)
・・・
王宮にある、国やこの大陸のことを示した資料がある部屋で、資料の保管を担当する老人の姿をしたビスマルクが資料を探していた。
(たしかこのあたりに・・・)
国の北西に広がる森について書かれた書類を探していた。長い間、人に触れることのなかったと思われる書
「大陸北部の森について」
をようやく見つけた老人は、何故か折り目のついているページがあるところを発見した。
(まるでここを読めとばかりに見えるが・・・)
=大陸北部の森について(抜粋)=
・・・
大陸の北に広がる森には大きな沼のような黒い部分がある。ここは異世界と繋がる連絡地点であり、その昔、初代アンクス王が封印したものである。しかし、封印は弱く、この沼のような地点に人が入れば、封印は解かれ、異世界の魔物が大陸に溢れるだろう。
・・・
アンクス王国の王族に伝わる言い伝えに、
「北の森には人を入れてならない。人が入れば大いなる災いが大陸にもたらされる」
というのがあった。ビスマルクはその理由は知らなかったが、先ほどの報告を聞いて、王宮にあるこの資料を探していたのであった。そして、やっと見つけた書を見て愕然とした。
(こんなことであれば、森の入り口に兵を置いて監視しておけばよかった・・・)
これは大変なことになった。
ビスマルクは、ビスマルクに国政を任せっきりの国王の元に走っていった・・・。
・・・
『で、どうすればよいのじゃ』
この国のさっきからひげをなでながら、ビスマルクを見ている初老の男。アンクス=フォン=ミクス この国、アンクス王国の国王である。
『直ちに対策をしないと、大陸中に魔物があふれてしまいます!!』
ビスマルクは叫ぶが、国王は理解できていそうにない。相変わらず、ひげを撫でているばかり・・・。
『ありったけの兵を向けて、魔物を討伐せよ!!』
しばらくの沈黙の後、アンクス王の言い放つ。
『王都に魔物が溢れたら、散歩ができないからのう・・・』
???
ビスマルクはとぼとぼと自分の執務室に戻る。報告によれば、魔物は兵士よりも大きくて強そうだ。恐らくかなわない。この国には、おとぎ話にでてくる魔法もなければ、異世界にあるという、火薬という爆発するようなものもない。現在の兵士が使う、剣と槍では魔物に勝てそうにない・・・たぶん。
・・・
普段は自分の裁量で国を(事実上)治めているビスマルクであるが、王命には逆らえない。最近、ひどくなった歯痛をこらえて指示を出す。王国の兵を集められるだけ集め、魔物の出た、アイシア村に向かわせた。その数1万・・・。
1ヶ月後、兵から連絡がないために様子を見に行かせたビスマルクの部下は、アイシス村のあったあたりに大量の兵の死体を見ることになった・・・。
・・・
1年後、この大陸の全土に魔物は生息するようになった。王都など大きな街は街の周囲を塀で囲い、それ以外の村では木の柵を作って魔物を防ぐようにしたが、柵で防げない魔物に襲われる村が続出、大陸の人々は絶滅の危機が迫っていた。
序章では、飛行機ごと異世界に召喚された“波高 進”は出てきません。第10話の終わりに登場します。