第17話 アンクス王
アンクス王ことアンクス=フォン=ミクスは、あること思い出していた。それは、王位継承の時のこと・・・
『ミクス。今からお前が国王だ。王としての務めを果たしてもらわなければならない。』
ミクスの戴冠式が終わり、前王となったミクスの父であるメネスがミクスに話はじめた。ビスマルクなど側近も退室させて、2人だけになっていた。
『我々の先祖、初代王の話はしっておろう』
『はい父上』
『初代王はこの地に降臨された異世界人じゃ』
『はい、幼きころより伺っております』
そう、初代アンクス王が異世界からの召喚者であることは、アンクス王国に代々伝わる内容で、ミクスを何回も聞かされてきた。広く知れ渡った話で、大陸中に知れ渡っている。
『初代王は、魔物に溢れたこの世界を何とかするために尽力し、魔物の発生元である瘴気が地上に出てこないようにした』
『伺っております』
『じゃがな。初代王はこう申されたそうじゃ。いずれ瘴気は地上に出てくる。その時、再び封印することが出来なければ、今まで以上に魔物が溢れる世界になるだろう』
『それは初めて聞きました』
『当然じゃ。代々、国王のみに伝えられる秘伝であるから・・・』
『秘伝!!』
ミクスは硬直した。初代王は未来に発生する災いに備えて、国王に伝承をつたえたらしい・・・。それを引き継がなければならない。
『ミクス。今からいうことをよく聞くのじゃ。』
『はい』
『この大陸には瘴気の発生個所が5か所あるという』
『5か所もあるのですか!!』
『そして、この5か所は大地の奥深くで繋がっておるという』
・・・
『どこかの1か所の瘴気を抑え込もうとすると、他の4か所から瘴気が出てくる仕組みになっておるそうじゃ』
『なんと』
『なので、5か所同時に封印しなければ、瘴気は封印出来ない』
『この大陸で生きるものの魂は体が消滅すると瘴気の世界に帰ろうとする』
『ええ!!つまり、瘴気は生き物の魂?!』
『そうじゃ。だが、5か所の瘴気が発生する箇所のいずれかを通らないと戻れないそうだ』
『では、瘴気は出てくるだけでなく戻っても行く・・・?』
『そうらしい』
『そこで、初代王は、瘴気が入っていけるが、出てこれないようにある結界を張ったそうだ』
『結界?』
『ただ、これは非常に脆いものでできているので、人が生きたまま瘴気に飛び込んだりすると、壊れてしまう・・・』
『なんと。だから、大陸の北の森には入るなという言い伝えがあるのですね』
『そうじゃ。他の4か所は大山脈の山の頂上にあり、人が近寄ることはない上、岩に隠れており、問題ないらしい』
『では、北の森だけが危険なのですね』
『うむ。じゃが、万一、結界が解かれた場合、再び封印するためには、他の4か所にも同時に封印をし直す必要があるのじゃ』
『さらに面倒なのは、その封印は初代アンクス王でなければ読めない文字で、神殿に保管されているというのじゃ』
『なぜ』
『わからん。だが、瘴気を封印する方法は、この大陸のものが知ってはならないものであるらしいのじゃ』
『では、再び魔物が溢れたら・・・』
『ローマン王国には、初代アンクス王を召喚したときの御業があるらしい。だが、その方法は、ローマン国王でも知らないそうだ』
『だが、必要な時が来れば、ローマン王国の王家が召喚をすると言い伝えられておる』
『???』
『ローマン王家に伝わる何かが、必要なときに目覚めるということらしい』
『ひょっとしてローマン王国北部の遺跡?!』
『たぶんそうじゃ』
『実は、この王宮には、国王のみが知らされている部屋がある』
そういうと、メネスは、国王の執務室にある石造を動かした。
すると、暖炉の奥に小部屋があるのが見える。
『よいか。あそこには初代アンクス王でなければ分からない方法で他の4か所の瘴気発生個所がわかる資料があるという。実はわしも見たことがない』
『それは何故?』
『何故か、あの部屋には入れないのだ。何かが入るのを拒んでいる。』
『結界?』
『この世界のものの魂を戻れなくする結界を張って、中に入れなくしてあると言い伝えられている』
『つまり・・・』
『異世界から来たものでなければ入れない場所ということじゃ』
『お前はこの場所を守り、瘴気が発生したときは、ローマン王国が召喚した異世界人をここにお連れして、この言い伝えを話さなければならない』
・・・
アンクス王ことアンクス=フォン=ミクスは、自分が戴冠式の後に、先王から言われた話をさっきまで忘れていたのだった。
(これは大変なことになった。早く、ローマン王国が召喚した異世界からの召喚者をお連れして、言い伝えを説明し、あの秘密の部屋に入ってもらわなければ・・・)
『ビスマルク!!誰かビスマルクを至急呼んでくれ!!』