第13話 波高の悩み
ちょっと短いです
俺は、熊本空港を離陸して阿蘇に向かって上昇していたはず・・・。が、何故か飛行機ごと異世界に召喚されてしまった。そして、どう見ても、飛行機が来ることを想定していたとしか思えない滑走路と神殿という名の管制塔。そして、どうして存在するのかわからない格納庫・・・。極めつけは、神殿の中にあった、管制方式基準というファイルに書かれてあった内容。ハイムの村で見せてもらった、ノイマンという村長が持っていた本は、波高には読めない文字で書かれていた。
(そういえば、どうして言葉が通じるのだろうか・・・)
オークという魔物の肉を頬張りながら考える・・・。何か、謎の力にもてあそばれているようにしか思えなかった。幸い、燃料はほぼ満タン。4時間30分くらいは飛行できるので、1000km先にあるという討伐基地までは途中、2500mくらいの大山脈があるものの、飛行できるだろう。問題はその後だ。どう考えても、現代日本とは比べようもない環境。セインはこの国の王子らしいが、討伐基地は彼の国ではないらしい。隣にあるアンクス王国は、昔、瘴気を封印した異世界からの召喚者が初代王の国らしい・・・。
(恐らく、アンクス王国には瘴気に関して秘密があるだろう。そして異世界からの召喚者に関する情報も・・・)
とにかく、討伐基地へ飛んでみるしかないな・・・。
・・・
セインがやってきた。
『ウェブハイトさん』
身長155㎝の彼は、なんとまだ10歳であるらしい。その落ち着きといい、言動といい、10歳の姿ではない。日本ではまだ小学生のはずなのだから・・・。
『ウェブハイトさんのいた世界には、瘴気はなかったのですか?』
セインは真面目である。真剣と顔に書いてありそうな感じである。
『そんなものはなかったよ。ライトノベルの世界の話だった』
『ライトノベル?』
『本のことだよ。物語』
『言い伝えにはあったということなのですか』
『実際にはない、本の書かれた仮の世界の話だ。存在はしない』
『・・・』
セインは、この大陸から魔物の存在を消したいらしい。
『神殿に有った書は、とうばつきち に行けば、瘴気を封印する装置があると書かれていたのですよね』
『ああ そうだ』
『私は早く、その とうばつきち に行って、瘴気を封印して魔物の発生を抑えたいです』
波高は不安であった。
『気になることがある。』
『なんでしょう?』
『討伐基地に設置してあると書いてあったが、それ以外なにも記載されてなかった。つまり、装置を動かす条件がわからない・・・』
『ひょっとして、行っただけでは装置は動かず、瘴気も封印できない・・・』
『そうだ』
『ファイルにかかれたことが本当であれば、この大陸に存在する全ての生き物の魂をもとに作られているので、この大陸に生命が存在する限り、瘴気はなくならない。瘴気はなくならないから、封印することが出来ても、いずれ溢れるのではないのか・・・』
波高は思っていることを、セインに伝える。
『ウェブハイトさん。もしそうだとしても、今は、瘴気を封印しなければなりません』
しばらくの沈黙ののち・・・
『でも、私はこの大陸から瘴気を除いて、魔物のいない世界にくらしたいです!!』
セインを見ると、頬に目を水源にした一筋の川が出来ていた・・・。