第10話 神殿の秘密
『さて、ついにこの日が来てしまったか・・・』
ノイマンは一人つぶやいた。代々、村長に伝わる、この村の秘密。それは、異世界からの召喚をするときに必要な装備をそろえ、必要な知識を召喚者に与えることである。ノイマンには、それがいつから伝わるのかすら知らなかったが、それを実行する日が来てしまったのである。
ノイマンは自宅の床にある絨毯をめくった。この部屋は代々、村長の個人用の部屋として使われ、他のものが使用することは禁止されていた。それは、この地下につながる入り口があるからである。ナイフで1枚石板をはがすと、そこに光り輝く四角い板に1~9までのボタンがついたものが埋め込まれていた。そして、その脇には青いボタンがついている。そして、その下には、4つ横に並んだ四角い突起物があった。
村長は、恐る恐る手を伸ばす。
『これが言い伝えの・・・』
ノイマンは記憶を頼りに操作する。
4のボタンを押す
すると4つ横に並んだ、四角い突起物の1つが光りだす。
『おお~!!』
ノイマンも詳しいころは知らないらしい。何故光るのもわからないが突然光りだした突起物に驚いている。
1のボタンを押す
4つ横に並んだ、四角い突起物がもう1つ光りだした。
更に、
6のボタンを押す
9のボタンを押す
4つの突起物全てが光りだす。
青のボタンを押したとき・・・
周辺の石板が突如消失し、目のまえに空間が広がった。そしてその先にあったのは、怪しく光る剣であった。そしてその脇には、1枚の紙、そこには
=召喚者を呼ぶために=
この剣を召喚の資格を持つものに持たせ、神殿に入ること。神殿は、この剣を持つものを感知し、神殿の防御機能は停止する。これを持たずに神殿に入れば、防御機能によりその者は消失するようになっている。
召喚者が神殿に入った後は、周囲1000mは立ち入ってはならない。召喚時に地形の大幅な変動が発生するためである。
召喚者は、神殿の最深部にある寝台にこの剣を置けばよい。
さすれば、地形の変形が起こり、召喚されたものが空から現れる。
召喚されたものは、空に浮く乗り物に乗っている。召喚したものはこの剣をその乗り物に向け、緑色の部分を押す必要がある。さすれば、召喚者は地上に降りてくるだろう。
なお、神殿内には、召喚者しか読むことができない書がある。これを召喚者に渡し、読んでもらうことが必要である。
と記載されていた。ノイマンは意味が解らなかったが、柄の部分が緑色になっているこの剣と、その脇にあった紙を現れた空間から取り出した。
と途端に空間は消えてしまった。
剣と紙を抱えながら、呆然としていたノイマンであったが、自分で外した石板を元に戻すと、絨毯を元に戻した。
『誰か、セイン殿を呼んできてくれ』
・・・
ノイマンの部屋には、ノイマンの他、セイン、ロック、シャールカが来ていた。
皆、目のまえに置かれた剣をみて目を点している。
『これは何でしょうか』
セインがノイマンに向かって剣を指さしながら問うと、
『これが、この村に伝わる秘宝。じゃが、わしも見るのは始めてじゃ。そして、この紙が脇にあった』
紙をセインに渡す。
=召喚者を呼ぶために= と冒頭に書かれた紙を読んだセインは一言。
『これは剣ではないようです。見た目からしても、剣としての役割は果たしそうにありません』
確かに剣と書いてありながら、刃の部分がなく、筒状の棒のようである。手元は剣のような部分があるが、緑色の部分があるだけで、あとは手を握る部分でしかない。
『おそらく、この剣は、魔物と戦うことはできないのでしょう。なので、神殿までは、ロックとシャールカに守ってもらうしかないようです。そして、神殿に入るとき、私がこれを持たなければいけないということです』
『そして、神殿の外には周囲1000m以内にいるのは危険ということなのでしょう。その理由はわかりませんが・・・』
・・・
村の西のはずれには、多くの村民が来ていた。昨日の宴会が始まる際にあったノイマンの説明が気になっていたのだ。
そして、ノイマン、セイン、ロック、シャールカと4人がやってきた
『皆の者。これからセイン殿たちは神殿に向かう、儀式が始まると周囲1000mにいると消失の危険があるので、決して近寄らないように』
明かにいつもと口調が異なるノイマンの説明に皆が硬直する。その間にセインたちは森の中に消えて行った。
『無事につけばよいが・・・』
ノイマンはつぶやいた。
・・・
魔物が出ると思われた森は、意外にも三つ目ネズミ1匹出てこなかった。昨日のオーガを討伐したせいかもしれない。神殿前の開けた場所に出たとき、一同は目を疑った。
『なんでこんなにいるんだ』
神殿の入り口手前に三つ目ネズミ、三つ目ウサギ、ミツツノ、オークがいる。その数、合わせて100匹ほど。
『セインは秘宝を守りなさい。ロックと私で魔物を蹴散らすのでその隙に神殿に入ってください』
シャールカが叫ぶと魔物は襲ってくるのが同時であった。
セインの前をロックとシャールカが走り、寄ってくる魔物を剣と槍で払っていった。とにかく、神殿にたどり着かなくては・・・。
魔物の攻撃で、全身傷だらけになりながら、何とかセインを守って神殿にたどり着いた。
と同時に神殿の入り口が光りだした。何故か、魔物は逃げ出しはじめ、セイン、ロック、シャールカ以外はいなくなった。
『さあ、入ろう』
セインは秘宝を抱え神殿の中に入った。
・・・
そこは、謎の空間であった。3人が入った途端、神殿の入り口は閉まり、建物全体が上昇し始めた。
『この神殿は空を飛ぶのか!!』
3人の声がそろった。
神殿は50mほど上昇した後停止。側面の壁がなくなった。いやなくなったように見えただけで、壁自体は存在したが、何故か外がそのまま見えた。
『一体これは・・・』
3人ともこの状態を唖然としていたが、
『セイン、秘宝を寝台に』
シャールカがセインに声をかけたことで、セインとロックも我に返った。
セインが抱えていた秘宝を寝台に置くと・・・。
空から聞いたことがない音が聞こえてきた。そして、建物の中に謎の声が響いた。
『じゅりえっと あるふぁー ふぉー わん しっくす ないなー』
<<なんじゃこりゃー>>
セイン、ロック、シャールカの声が揃った。
JA4169は実在するBeechcraft A36(ボナンザ)です。
次回の投稿は12/5です。
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