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第9話 ハイム村

『父上!!』

村に入るなり、シャールカの大声が村中に響き渡った。

『そんなに大声を出さなくてもよい』

1人の老人が、シャールカに話しかけてきた。

『父上、街道の橋が落ちていたようです。そして、この2人が橋の近くにいたミツツノを討伐して・・・』

『シャールカ、話は家の中で聞こう。そちらの2人一緒にきてくだされ』


・・・


セインとロックはシャールカとその父親と思われる老人のあとをついていく。ついた先は、この村で一番大きな家であった。

『さあ、中にはいってくだされ』

いわれるままに家の中に入り、応接室と思われる部屋に連れてこられた。

『よくおいでくだされた、私はこの村、ハイム村の村長をしているノイマンというものじゃ』

(ということは)

『この娘は私の実の娘じゃ。少々お転婆なのでな。村の男たちはだれもかなわん・・・』

(やっぱり・・・)

『父上、そんなことまで言わなくてもよいでしょう』

シャールカが怒ったようにいうが、何故か怖いという感情というよりは、駄々をこねる娘の姿であった・・・。

『そんなことより、この2人は言い伝えの力を持っているようなのです』

『なんじゃと!!』

ノイマンの表情が急に変わる。まるで、何かの予言にが当たったかのような・・・。

『アイテムボックスを持つものがついに来たのじゃ・・・』

ノイマンがつぶやいた。


・・・

『そういうことか・・・ついにこの日が来たのじゃな』

セインはノイマンに知っている事情を話した。

 ・自分が王子であること

 ・王家に伝わる、召喚の話のこと

 ・王命によりハイム村にある遺跡を訪ね、魔物を封印したかつての初代アンクス王の代わりとなるものを異世界から召喚する必要があること


ノイマンは、席を立つとしばらくして1冊の本をもって現れた。

『これを読んでください。私には読めないものなので・・・』

セインは本を受け取り読み始めた・・


 この大地に瘴気の発生は、異世界からの召喚者でなければ封印することができなかった。なぜなら、この大地に元々すんでいる者の魂に反応して瘴気が発生するからだ。なので、この世界以外のものが討伐しない限り、瘴気は発生し続け、永久に封印出来ない。そこで、この世界を作った神は、瘴気を封印する方法をこの世界に残した。だが、その方法は、この世界のものでは理解できない言葉で書かれており、我々には理解できないものであった。

・・・

瘴気を封印するためには、神殿最深部にある召喚の間に行き、そこにある召喚の書に掛かれている儀式を行うことで、瘴気を封印できるものを召喚することができる。

 そして、召喚者がこの世界にいる間のみ開いている討伐基地に導き、その基地の力を召喚者が行使することによって瘴気は封印される。

初代 アンクス王


途中、この世界の成り立ちのようなことがたくさん書かれていたが、最後に初代 アンクス王という署名で終わっている書の最後に書いてある内容が、知りたいことのすべてであった。

『わかりましたかの』

ノイマンはセインの顔を伺っている。


・・・


『つまり、遺跡と読んでいるのは神殿で、その神殿の最深部に異世界からの召喚方法が書かれた書があり、それによって召喚されたものを、とうばつきち なるところにお連れすればよいということなのじゃな』


『その書いてある内容は、その理解で間違いないです。』

『神殿は、おそらく、この村の西にある森の中にある遺跡のことじゃろう。が、討伐基地(とうばつきち)とはどこにあるのじゃ』

『それはわかりません。ですが、今は、召喚にたどり着く必要があります』

セインは言った。この場にいるもの全てが硬直していた・・・。


・・・


ハイム村には宿はないので、ノイマンの家、つまり村長宅に泊めてもらうことにした。

ノイマンからの申し出であるが・・・。

『ロック。さっきのオークを出してくれ』

シャールカがロックに伝える。

『大丈夫だ。この家のものは、アイテムボックスの伝説のこと知っている。なので、誰も問題にしない』

『村の他のものに知れたらどうするの~』

『大丈夫。この村の者はまず、村の外にはでない』

『それに、お前たちが村に来て、父上のところに来たのは、誰でも知っている状態だ。村民になんか説明してやる必要がある』

『商人とかは村にくるのだろうが・・・』

セインが怪訝そうにいうと

『だから、今のうちに村民を集めて、事情を説明しておく必要がある』

『これと、オークを今出すのがどうつながるのか?』

話がいまいち繋がらないセインとロックに対して

『今日、村で宴会を開くことにした。その席で、父上から村民に説明する。そのためには、料理が必要だが、急に食材は集まらない』

『だから、オーク肉を使うのか!!』

『そうだ』

セインとロックはようやくシャールカの意図を理解した。恐らく、村民の協力と口止めが必要ということなのだろう。


・・・


村長宅の調理場はかなり広かった。一旦、料理人に出て行ってもらってから、ロックにオークを出してもらう。

『しかしでかいな しかしちょっと足りないな』

『他になにか持ってないか』

シャールカがロックにいうと

『あと入っているのは、途中で討伐した小型のミツツノくらいか・・・』

『は?ミツツノは200㎏くらいの巨体ではないのか?』

『ミツツノを討伐したあたりにまた出たんだよ~』

『橋のあたりか』

『そうだよ~』

会話を聞いていたセインはロックに対して、

『ミツツノも村民に食べてもらおう』

『でも、大事な非常食~』

『なんとなくだが、遺跡の近くに行けば、調達できる気がする・・・』

『たしかに・・・』

何故かロックとシャールカの口調が揃った。


・・・


本日は、村長のところで宴会という話は、あっという間に村内に広がった。そして、誰一人文句を言うことなく、その準備を始める。どうやら、宴会の開催権限を村長が持って居るらしい。調理場では、オークとミツツノの調理が必死に行われている。


・・・


シャールカには妹が2人いた。ボナとロナという。まだ、5歳と4歳であるため、先ほどの村長とセインたちの話には参加していないが、宴会のための食材探しをすると言って、森に入っていった。

『ないねえ~。ロナはこのあたりにあるって言ってたよね』

『そうよ。ボナ姉さん。ここに美味しいキノコがあったはず・・・』

森は危険だといつも言われていたが、この2人は、シャールカに似たのか、森の中に入ってキノコを探していた。自分たちも食材探しに参加してと思ったからだが、いつもたくさん生えているキノコが見つからない。

『もうちょっと奥にいったらあるかも・・・』

『ボナ姉さん、奥は危ないからだめだって、シャールカ姉さんがいっていた』

そのとき、突然、大きな影が2人を襲う。ボナは何か強い力で殴られ森の奥に飛ばされてしまった。

『ボナ姉さん!!』

ロナは叫んだが、返事はない。大きな影は見えないが、一人で探しに行くわけにもいかないことを本能で理解した。と同時に、一目散に村に走り始めた・・・。


・・・

村長宅にたどり着いたロナは、シャールカを見つけると

『ボナ姉さんが襲われた!!』

といったところで倒れてしまった。恐怖と必死に逃げたことによる体力の限界というところだろうか・・・

『ロナ、ボナはどっちにいったの?』

シャールカは無理やりロナを起こして聞きただす。

『あっち』

ロナの示したのは森の中だった・・・。


シャールカは慌てて槍を持ち、森に向かおうとしたところで、宴会まで待ちぼうけの2人、セインとロックに遭ってしまった。

『シャールカ、何を急に慌ててどうしたの~』

ロックの問いに、

『ボナが森に入って襲われたらしい。助けに行く』

『私たちも一緒に行こう』

セインが同行する旨伝える。

『死んでも知らんぞ』

『神殿の手前で死ぬようなら、意味はないから気にすんな』

当たっているような、何か違うようなセインであった・・・。


・・・


結局、3人で森の中を探し始めたが、広い森なので、検討がつかない。

『あの子たちのことだから、キノコを採りにいったのだろう・・・』

シャールカには、予想できる場所があった。ロナがキノコを採取している場所があるからだ。ある日、そっと後をつけて行って、その場所を知っていた。森は危険だと思ったが、入ってすぐだったこともあり、特に何も言わなかったのだが・・・。

(こんなことだったら、注意しておくべきだった)

後悔の念でいっぱいのシャールカであった。

『ない。キノコがない』

シャールカが突然話し出す。

『ここにキノコがあったんですね』

事情を知らないセインは妙に冷静になっている。

『そう、ここに美味しいキノコが生えるのだが・・・』

何故か、全くキノコはなかった。

とその先にわずかに草が踏まれたあとがあるのをシャールカは見逃さなかった。

『ボナは奥に行ってしまったらしい・・・』

独り言のようにシャールカはいう。3人はそのまま奥に入っていった。


・・・


しばらくすると、開けた場所に出た、そして、その先に例の遺跡、いや神殿を発見した。

『あれが神殿ですね~』

ロックが指さしたとのとき、黒い影が3人を襲った。

3人ともそのまま飛ばされた・・・。

『ボナ!!生きてる!!大丈夫!!』

悲鳴のようなシャールカの声がとどろいた。なんと、飛ばされた先にボナがいたのである。但し、意識はない。

 声が聞こえたためか、何か大きな影が近づいてきた・・・。オーガであった。

『でかい』

セインは思わす声を漏らす。2足歩行の巨大熊とでもいうべきその姿は、なかなか恐ろしいものであった。どうやら、このあたりの主のようである。

『シャールカ。まずは、こいつを倒さないと・・・』

セインがシャールカに話しかける。

シャールカは、何か悟ったかの如く槍を握ると、突然オーガに突進した。

『ゆるさん』

シャールカの怒りの姿であった。


・・・


シャールカの槍はオーガの胸を刺したが、オークと違い、絶命はしなかった。そこで、セインとロックが左右に回り、ショートソードでオーガに切りかかる。正面には、怒り狂ったシャールカが槍を一度抜いて、もう一度突くチャンスをうかがっている。暴れるオーガであったが、3方向からの攻撃には耐えらず、逃げようとしたところで、シャールカの投げた槍は心臓に突き刺さり絶命した。

『ボナ。大丈夫!!』

オーガを倒した途端、ボナに駆け寄り叫びだすシャールカ。

『シャールカ姉さん』

ボナの意識が戻った。多少、怪我はしているようだが、命に別状はないようだ。

『せっかくなので、回収しますよ~』

倒したオーガをロックのアイテムボックスに回収し、シャールカがボナを背負って村に戻った。


・・・


宴会の準備が進む中、村長宅(ノイマンたちの家)では、ボナとロナに説教するノイマンの姿があった。

『2人とも、あれほど、森には行ってはいけないといったじゃろうに』

『すいません』

消えるような声で答えるボナとロナであった。


・・・


『セイン殿、シャールカを連れて行くのじゃ。神殿の探索に役に立つだろう』

ノイマンが様子を見ていたセインに話しかけた。

『でも、危険では?』

『だからじゃ』

それと、後で渡すものがある。今日は宴会なので、明日詳しいことを話す。

(ノイマンは何か事情を知っているのかも・・・)

『わかりました。明日、詳しい話を教えてください』

セインは、少しも戦力を上げる必要があると思ったのだった・・・。


・・・


『皆の者、よく聞いてほしい』

宴会の冒頭でノイマンは話し出した。

『皆も知っている通り、かつて封印されていた魔物が再びあふれ出した。我々は再び現れた魔物を退治しなければならない。今日、ボナが森で魔物に襲われた』

村民がその言葉に騒ぎ出す。

『この村には、特別な役割があるというのは、皆知っているかと思う。この村には、魔物を発生させる瘴気を封印するための神殿を守る役割があった』

『だが、村と神殿の間には森ができてしまい、今、神殿には魔物が住み着いていると思わる』

『そして、瘴気を封印するための冒険者が村にやってきた』

再び村民が騒ぎ出す

『ここにいる、セイン殿である』

村民がセインに注目する。

『皆、この意味がわかると思う。瘴気を封印するための儀式ができるのは限られた冒険者のみだということを・・・。そこで、村の秘宝をセインに託し、神殿に入ってもらうことをここに告げる。そして、言い伝えに基づき、私の娘、シャールカを同行させることとした』

どうやら、ここの村民は、神殿に関して特別な教育がされているらしい。皆、押し黙ってシャールカを見ている。

『今日は、彼らの成功を願ってこの席を設けさせてもらった。彼らを快く送り出してもらいたい。では、初め!!』

宴会が始まった。たくさんの食べものが出される中、村民がいろいろ芸をしている。

『驚いたか』

シャールカがセインに近づいてきた。

『まるで、初めからわかっていたような言い方だったが・・・』

セインが怪訝な顔つきでシャールカを見る。

『そうだ。瘴気が発生し、魔物が現れたときからこの村は今日の日が来ることを予期していた』

厳しい決意に満ちたシャールカがそこにいた・・・。


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