8 公爵令嬢はポテチを食べる
「よ、よかったら皆さんも食べてみてくださいな。」
とりあえず、食べてもらえば何とかなるでしょ。
まず最初に手を出したのは、総料理長のダン。
出来上がったポテチを見た瞬間から、目がギラギラしてた。
いくらこの異様な光景に驚いたとはいえ、料理に対する好奇心には勝てなかったようだ。
パリッ、サクサク……
「な!なんて食感!
ただ薄切りしただけのじゃがいもが、こんな料理になるなんて!!」
そう言って次々とポテチを食べていくダンの様子を見ていたコック達も、皆んな食べていった。
「『油で揚げる』とは知らなかった!
コック歴三十年になる俺だが、こんな調理法は初めてだ!」
「パリッとしたこの食感、他の調理法じゃ再現できない!」
「美味い!美味すぎる!
やめられない、とまらない!」
最後の、お菓子が違うぞ。
そうやって、モリモリとポテチを食べるコックをよそに、私はどんどんポテチを揚げていく。
未だにポカンとして固まっているリッカに、作りたてのポテチを差し出した。
パリッ、サクサク……
「……これは、例の夢で見た男性が作っていたものですか?」
小さな声で囁いてきた。
「そうなの、でも、私はリッカ以外に言うつもりはないから、秘密にして頂ける?」
そう言うと「もちろんですとも!」と同意してくれた。
料理経験のない私が、初めての料理を、未知の調理法で、失敗せずに美味しく作り上げたから、と俺の事を信じたそうだ。
ついでだから、『揚げる』を考えたのはリッカだって事にして、言い訳を考えておいてもらおう。
幼女の私の発案て事より、リッカの発案の方が上手いこと誤魔化せそうな気がしたから、リッカになすりつけた。
案の定、どうやって思い付いたのかとダンに聞かれたから「リッカが考えた」と言っておいた。
「えっ!?ちょっ!?」とか慌ててたけど、頑張れリッカ。
「いや、あの、それはその、つまり……あ、あれです!
お嬢様が『油で煮ると食べ物はどうなるの?』と仰って、上手く説明出来なくて、『では実際にやってみましょう』という流れになったのです。
そう、つまり、これは私が考えたのではなく、お嬢様のアイデアに私が乗っただけなのです。」
下手くそか!
「そうだったのですか!
いやぁ、子供の発想というのは、計り知れませんね。
流石です、お嬢様。」
おや、上手くいってしまった。
何故か私の発案という事になってしまったけど、辻褄合ってるし、まあいっか。
さて、ポテチも出来上がったったし、これからティータイムだ。
明日からもティータイムはポテチにしよう。
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