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64 公爵令嬢は男爵領と周りの人を観察する

男爵領主になってから、一年半がたった。


領内はずいぶん発展していき、領民もかなりの人数が増えた。



漁業、塩産業、観光業は相変わらず絶好調。


役場の職員は仕事に慣れてきたものの、どんどん発展していく男爵領での仕事は増える一方で、未だにドタバタ。



領民が大幅に増えた事で、新しくサトウキビ生産と本格的な造船業、養鶏を始めた。


夏が長いこの地域にサトウキビはバッチリハマると思って、川沿いの土地を大きく開拓してサトウキビ畑を作ったところ、大正解。


砂糖だけでなく、搾りかすの繊維で作る紙産業も始めた。


この世界、紙はまだまだ高級品、限りある資源は再利用しなくちゃね。



造船業は元々船舶輸送してた時からやってたんだけど、遂に船大工がこの男爵領へ移住してきたのだ。


造船場を大幅拡大して、海外輸送が出来るほどの大型船造船の取り組みが行われていて、もうすぐ完成するそうだ。



養鶏業も順調、といっても鶏ではなく海鳥の卵なんだけど。


ペリカドロスといって、ペリカンとアホウドリが混ざったような魔獣がこの世界にはいて、性格は比較的温厚。


この鳥の餌、昆布や鰹の出し殻や魚醤のカス、魚の骨、貝や蟹、海老の殻でいいからめっちゃエコ。


しかも、年中結構な量の卵を産んでくれるし、その卵が大きくてめちゃ美味い。


人気のマヨネーズも問題なく作れて、領内では鶏卵より需要が多い。



魚醤、ウスターソース、昆布、鰹節、スルメ、塩、ビールに加えて、現在ボードゲームが男爵領の特産品になっている。


このボードゲーム、王都で今大流行中で、模造品が多く作られているんだけど、フィアンマ男爵領特産、というか私の錬金魔法で作られた金属製のボードゲームを持っている事が貴族のステータスになってしまって、私は連日、ボードゲームを夜な夜な作っている。


貴族相手だし高値で売ってやろうとかなりボッタクリな値を付けてるんだけど、作るだけいくらでも売れてしまう。


そしてどんどん膨らむ私の財布。


…こんなものじゃなくて、もっと自領の為にお金を使ってくれ、貴族たち。




レベッカちゃんは料理だけじゃなくて勉強もよくできる子で、あっという間に読み書き計算を覚えてしまった。


なので、私が領主の仕事が忙しい時、代わりに先生をしてくれてるんだけど、何も問題なかった。


というか、教え方上手かった。


レベッカちゃん、有能すぎる。


専属料理人になった事で、レベッカちゃんは男爵邸に住んでもらうことになった。


そして、一緒に夜中にこっそり実験をして、一緒にリッカに叱られる仲になった。



ロナウド王子、セシル様、ポスカ君3人組は、相変わらず元私の部屋で楽しそうに暮らしている。


この前3段ベッドを作ってあげたら、一番上のベッドの取り合いをしていた。


一応皆んな貴族だから、家族の付き合いや公務の時には実家に帰ってるけど、そうじゃない時はずっとここにいる。


親元離れて寂しくないのか聞いたけど、「「「ここの生活めっちゃ楽しくて、実家に帰ったらホームシックになる」」」と言っていた。


…ホームここなの?



レベッカちゃんと男子3人組は、基本仲良しなんだけど、たまによくわからないバトルをしている事がある。


「俺はフランと一緒に饅頭を開発したんだ!」


「僕はフランさんに初めてプレゼントを差し上げた人物ですよ。」


「僕は学童院でフランちゃん先生と一緒にリレー大会をしたんだからね!」


「私はフランちゃんの着てたドレスで成認式に出たのよ。」


「「「「グヌヌ…」」」」


何を競い合ってるのかよくわからん。


「私のために争わないで!」と冗談で言ってみたら、本当に争いが収まった。


ただ、言うのが恥ずかしいから、もう喧嘩しないでほしい。




アデンとケンは、随分立派な領主代行と領主補佐になっていた。


私に頼らず色々と指示を出したり提案をしたりと、領の運営を任せられる程。



「領主としての仕事の経験は私の方が長いのに、フラン様に劣る事は私のプライドが許せません。」


出会った頃に比べて、アデンは印象がかなり変わった。


元々するべき事は出来ていた人だ、やる気が出れば今まで以上の力を発揮してくれる。


そして、領民が活気付いて仕事がぐんと増えた事で、持ち前の効率性に拍車がかかり、仕事のスピードや性能も目を見張る程に成長していた。


そこに自主性が加わったのだから、見た目も相まって正直私より領主が似合う。



ケンは領主補佐の経験が浅いながら、仕事に遅れを取る事なくついて来てくれている。


私が新しく提案したサトウキビ事業も、発案以外は全てケンが取り組んでくれた。


更には、元々執事見習いなだけあって、凄く良く気付く。


領主としての仕事をしている時の私の世話はケンがしてくれている。


資料の準備や片付け、情報収集は完璧で、ポテチとコーラが欲しいと思うタイミングで何も言わずに差し出してくれる。


私の周り、優秀な人ばかりだ。


恵まれすぎてて、逆に怖い。


男子3人組とも仲が良く、3人を見守りながら一緒になって遊んだり、羽目を外す3人を嗜めたりと、しっかり者の良いお兄ちゃんしてくれている。


たまに例のバトルに参加してる事もあるけど。


「フラン様に一番必要なのは自分だ。」


なぜそう言うことを言って喧嘩を売る?




リッカは相変わらず。


私を叱ったり、注意したり、呆れたり、羽交い締めしたり。


最近は、チョコレートが食べたいと嘆きながら、スルメをもしゃもしゃ食べている。


「フラン様の事を一番よく知っているのは私です。」


だから喧嘩を売るなと言っているだろう!

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで読んできて、主人公が、絶体絶命の危機とかのハラハラドキドキするイベントがないのは、致命的だと思います。書籍化されてる作品って、ほとんどがそういうイベントがありますよね? 私個人として…
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