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60 公爵令嬢は領地を改めて見つめる

お祭りが終わって、私は本格的に領地経営に目を向けることにした。


現在、フィアンマ男爵領は、大きさは国内でも下から数えるほどに小さい領地だが、経済的にはかなり豊かな地域になっていた。


漁業、船舶輸送業、観光業、塩やビールの製造業等、その種類も実績も国内でも有数の領地となりつつある。


ただ、良いことばかりでなく、問題点も多い。




まずは、領民の識字率。


フィアンマ公爵領では学童院があったため、識字率はどんどん上がっていったのだけど、ここの領民は字が読める人が圧倒的に少ない。



次に問題なのが、医者がいない。


そもそも、医者の絶対数というのがこの世界には少なく、王都や公爵領でも医者にかかる事ができたのは貴族や大商家の人達くらいで、他の人達はろくな治療を受ける事が出来ていなかった。


ここ男爵領でも、怪我や病気になった場合の治療法というのは、おまじない等気休めにもならない方法だったという。



最後に、税金。


ここでは計算のできる人も殆どいなかったので、今まで人頭税で徴収だったのだけど、これでは働いていない家族の多い家では負担が大きすぎる。


更に、現在男爵領では大まかに5つの地区に分かれていて、領全体では収入が物凄く増えはしたものの、各地で収益の差にばらつきもある。




この事について、アデンとケンにどう対策をする事が一番良いと思うか尋ねてみた。


「そうですね…

各地区で収益の差があるのに、今のままの税制徴収ではいけませんね。

各地区ごとに、税率に差をつけて徴収するのはいかがでしょうか?」


「そうね、もしそうした場合、例えばケンは税の高い地区、アデンは税の低い地区だった場合、ケンはアデンに対してどう思う?」


「ちょっと不満がありますね。

もし手取りが同じ場合だった時、自分の方が沢山税をとられるって事ですよね?」


「むう、成る程…」


「ケンは何か思いつく事はある?

税以外の事でもいいわよ。」


「やはり、医者がいないというのは問題があると思います。

どこからか、こちらの男爵領へ派遣していただけるとありがたいのですが。」


「医者はこの国にはどこも少なくて、おそらく派遣して頂こうにも、そちらの領主からお許しが頂けないと思うわ。」


「た、確かにそうですね…」


ふたりとも黙ってしまった。




「では、私の案を言うわ。

今現在、この男爵領の領民は仕事があり、労働可能者の定職率は9割を超えているわ。

ただ、中には働きたくても働く事が出来ない人もいるの。

誰だかわかる?」


「育児中の母親ですか?」


「そう、他にも、障害や老化の体力不足で働けない人や、その人を介助している家族もいるわよね。

なので、私がまず作ろうと思うのは、幼児学童育児施設と老人・障害者介助施設。

幼児学童育児施設は、男爵邸の託児所とフィアンマ公爵領の学童院を足したようなもの。

そうね、こども園とでも呼ぼうかしら。

各地区ごとにこのこども園を創って、育児中のお母さんから子供達を預かれば、お母さん達は仕事に行けるし、子供達は読み書きや計算を学ぶ事ができるわ。」


「成る程、これなら領民の識字率も必然的に上がりますね。」


「老人・障害者介助施設も同じように、朝介助の必要な方を迎えに行き、仕事時間中は施設で生活介助やリハビリ、交流やレクリエーションなんかしながら過ごしてもらって、夕方には家族のもとへ送り届ける。

その間は、介助をしていた家族は仕事ができるし、介助が必要な方達は生活に刺激が生まれる。

すぐに全てが上手く行くとは限らないけど、やってみる価値はあると思うの。」


「そうですね、介助が必要な方にとって他者との交流は中々難しいですから、これをきっかけに人生の楽しみを少しでも増やしてもらえると良いですね。」


「次に、医者対策なんだけど、各地区から識字力があり医学と薬学に興味のある人物を2人ずつ抜粋し、フィアンマ公爵領の医者と薬師の元で修行を積んできてもらうわ。

その他にも、領民全員で自身の健康にもっと関心を持ってもらうために、予防医学と健康維持について各地区に定期的に私が講演に向かうわ。」


「予防医学とは、フラン様が学童院で教えていたと言う座学の事ですか?」


「ええ、座学だけではなくて、健康に良い簡単な体操を教えたりもしようと思ってるわ。

自分たちで健康を意識するだけで、病気や怪我の数はぐっと少なくなるもの。」


但し、私に体操は難しいから、実演は他の人に見本になってもらうけど。


「でも、領民が皆元気でしたら、医者や薬師はそんなに必要ないのでは?」


「いくら健康に気を遣っていたとしても、病気や怪我をゼロにする事は出来ないわよ。

だから、医者が定期的に領民の健康を管理しつつ治療の対応をしてもらい、薬師には医師への薬の提供や患者への処方、薬の販売をしてもらう予定でいるわ。」


「確かに、突発的な怪我や病気は防ぎようがありませんから、医者や薬は必要ですね…」


「それに、私が理想としているのは、医者にかかった際の治療費と処方箋代を、領民から頂かないようにしていきたいと思っているの。」


「そ、そんな事が出来るのですか⁉︎」


「もちろん、必要最低限の治療と薬は、という条件付きのものだけど。

高度な医療を求める際は、自費で対応してもらうわよ。

そうする事で、医者や薬に対する敷居を低くしてもらって、早期の治療で身体への負担や治療後の生活のリスク、それに医者や薬師自身の負担を減らしていきたいと思っているの。」


「でも、そうするには税収がかなり大きくなって、領民の負担が増えますよね。

健康な領民は不満に思わないのでしょうか?」


「逆の立場で考えてご覧なさい。

もし今現在健康だったとしても、万が一の時が起きた時保証がしっかりあると思うと、普段から安心して暮らす事が出来るでしょう?」


「そう言われれば、そうですね…」


「で、最後に、さっき話に出た税なんだけど、領民には所得税と住民税、各地区のギルドには法人税という仕組みを採用したいと思うの。」


「住民税というのは、人頭税とは違うのですか?」


「住民税を簡単に言うと、一世帯あたりの収入に比例した金額の税を、世帯人数分払ってもらうの。

例えば、一世帯の合計月収が金貨2枚分の7人家族と、月収が金貨3枚分の単身者、前者の方が収入に対して支払う一世帯当たりの税の割合が多いのはおかしいと思わない?」


「そうですね、確かにそれだと前者の家族は負担が大きいですね。」


「だから、年に一回、一世帯の合計収入に応じて家族一人当たりの収める税を決める累進課税方式で、領民の税を徴収するの。

もちろん、いきなり税の計算を領民にさせるのは無理だから、暫くは財務部門で領民個人の税を計算するよう仕向けるわ。」


「先程から疑問だったのですが、領民からは住民税と所得税の二重で税を徴収するのですか?」


「住民税は、フィアンマ男爵領に(すま)う領民全員が支払う義務のある税、所得税は、働く者から領収する税の事よ。」


「それでは、労働者は損をするのではないのですか?」


「そんな事ないわよ。

就業中に起きた事故や仕事が原因の病気で万が一のことがあった場合、本人やご家族に見舞金を支給したり、失業した場合に再就職の斡旋をしたりと、勤めている者達への補償をしっかりとするもの。」


「成る程、では、法人税というのは?」


「各地区にギルドが出来たでしょ?

そのギルドに登録している施設や工場、商店から税を徴収して、資金の融資や事業拡大の際の補助の為に使用するのよ。」


「とても良い案だとは思いますが、これらを実行するには、領民の知識をかなりつける必要がありますな。」


「ええそうね。

なのでまずは、こども園の創立からね。

大人達の中にも、勉強をしたいと仰る方はきっといらっしゃると思うから、2日に一度仕事が終わる夕暮れ時から一時間ほど、希望者へ塾を開きましょう。

私も講師として教えますが、私一人だと勿論足りないので、こども園の保育教師と同時に講師も募集致しましょう。」


「あの、一つお願いしたい事があるですが、宜しいでしょうか?」


「ええいいわよアデン、仰って。」


「以前から何度も申し上げておりました、財務関係の強化をお願い頂きたいのですが…」


「そういえばそうだった。

この財政改革をするついでに、領の財務部門を大幅に拡大するわ。

でないと、この税金関係の計画案、アデンとケンだけじゃ回せないでしょ?」


「「絶対に無理でございます!」」


「ここも早急に対策していきましょう。」



さて、かなり手探りに進めていくけど、上手く行くかな…?

社会全般大の苦手だもんで、内政関係で読みにくいところやツッコミ所が多いかもしれません。

何となくこんな事したいんだろなーって感じで読んでいただけるとありがたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] いやー、作中の世界観だと子供は兎も角、介護が必要な老人や障害者って殆どいないと思うんですよね。 姥捨山とか、医者がいない事によってそもそも介護が必要になる程まで寿命自体が伸びてないとかで。 …
[気になる点] ジャンクフード関係ない料理チートとか知識チート()のNAISEIになりつつありませんかね
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