58 公爵令嬢は調味料を作る
結局、インフラ担当だった作業員の人達は全員、ビール作りをする事になった。
最初に作った時短ビールじゃなくちゃんと熟成させたビールは、フィアンマ男爵領の特産品となって他領へ輸出される事になった。
輸入量を大幅に増加した大麦を全部使っても全然足りない程、需要に対して供給が追いつかない。
公爵領のコーヒーやチョコレートのような状態になっている。
整ったインフラと出来る限りの治安対策のおかげもあってか、男爵領への人や物の出入りは半年前の100倍以上になっていた。
日持ちする昆布やスルメも同時に輸出されるようになった。
更に、やっと完成した港では、船による輸送の開始と、技術者を派遣して造船業を行う計画が始まっている。
塩田の方ももうすぐ完成、かなりの大きさに拡大したので、今後の塩精製が楽しみだ。
このように、大きく発展した男爵領の財政はみるみるうちに豊かになり、私のポケットマネーもすっかり元通り。
もう弱小貧乏領地だなんて誰も言わない、小さな楽園とすら呼ばれている。
ただ、私は商品と領地の開発ばかりしていて、領地経営全体の管理は相変わらずアデンとケンに任せっきりになっていて、かなり大変そうにしている。
特に経理の方は、今までアデンの見たことのないような金額が信じられない程の件数で出入りしているので、不備や不正の確認にはすごく時間がかかっているようだ。
文官を増やしてくれと泣き付かれた程だ。
やりたい事が一旦落ち着いたらそっちにも手を出すから、もう暫く二人メインで頑張って。
そして遂に、やっと、やっと熟成した。
魚醤ぉぉぉぉお!
一番最初に手をつけたはずだったのに、一番時間がかかるとは…
とは言っても、まだろ過はし終わってないから完成とは言えない。
樽の蓋を開けると、強烈なナンプラーのような臭いが部屋いっぱいに立ち込めた。
生臭い!!
「ふ、フラン様、本当にこのような臭いの物を食べるのですか⁉︎」
あまりの臭いにリッカが声を荒げている。
「これは調味料よ。
それに、まだ完成品ではないわ。」
これをろ過するのだけど、ろ過している間も臭い…
醤油に慣れ親しんだ俺には、魚醤の臭いは刺激的すぎる…
ろ過が終わって、遂に生魚醤の完成‼︎
あぁ、やっと出来た、待ちわびたよ、魚醤…
ただちょっと、時間と材料の割にはコスパが悪いな。
この搾りかす、煮出したらもうちょっと魚醤取れないかな。
室内だと流石にアレだから、屋外で煮出してみよう。
大量の搾りかすの入った大鍋がグツグツと湧き上がり、強烈な臭いの湯気が辺り一面に広がった。
「領主様、悪臭が漂っておりますが、どうなさったのですか⁉︎」
臭いに気づいた使用人達が駆けつけてきた。
流石にこの臭いはバレるわな。
「くっせー‼︎ なんだよこの臭い⁉︎」
近隣住民の方にも御迷惑をお掛けした、本当に申し訳ございません。
だがしかし、悪臭という対価を払っただけあって、煮出した絞りかすからも魚醤(風味煮汁)が出来た。
これでやっと、魚醤を使った料理が出来るぅ!
長く険しい道のりだった…
でもまあ、魚醤があれば、作れるものがどーんと増えるから、これからどんどん作っていくぞ!
とその前に、先に調味料の種類を増やして、料理の下準備をしていこう。
まずは時間のかかる調味料から作っていこう。
トマトピューレに、人参、タマネギ、ニンニク、ショウガ、昆布、干し椎茸、水を入れて、煮汁が半分になるまで煮込む。
次に、黒胡椒、クローブ、ナツメグ、シナモン、ローリエ、タイム、唐辛子、セージを投入。
焦げ付かないように火加減を調節して18分(地球時間で30分)煮続ける。
ここに、さきほど作った魚醤風味煮汁、酢、砂糖、リンゴを入れて、更に18分煮詰める。
程よいとろみがついたら煮汁を丹念に濾し、瓶に入れて密封、冷暗室で10日間程寝かせたら、ウスターソースの完成!
次に、こっちは鮮度が命の調味料。
卵黄、塩、オリーブオイル、マスタード、酢を用意。
オリーブオイル以外の物をしっかり混ぜ合わせたら、オリーブオイルを少し入れては混ぜ、少し入れては混ぜをただひたすら繰り返す。
ここでオリーブオイルを一度に入れすぎると失敗してしまうので、チビチビ入れながら混ぜていくという只々根気のいる作業を繰り返す。
段々と乳化してきてモッタリしてきたら、オリーブオイルを入れる量を少しずつ増やしていって、全部混ぜ切ったら、マヨネーズの完成!
つ、疲れた…
これで、ジャンクフードに欠かせない調味料、醤油(魚醤だけど)、ソース、マヨネーズが揃った!
さぁ、やっとここから本当の料理が始まる。





