56.5 国王陛下は公爵令嬢を想う
フランドールがポテチを開発してから一年が経った頃、またもや面白いことが起きた。
フィアンマ公爵領にある学童院でフランドールが先生をしているというのだ。
しかも、ただ字の読み書きを教えるだけでなく、知育玩具を使って勉強しているという。
更には、錬金魔法で体重計を作り、子供達の身長や体重を記録して、健康促進や予防医学までしているときたもんだ。
やはり、儂が目を付けただけの事がある。
体重計は国民の健康のためにも必要となってくるはずだ、早速フランドールに制作依頼を頼もうとしたのだが、教師活動が忙しいのか中々フランドールに会う事ができない。
とても寂しい。
そう思っていたら、なんとアーノルドの奴が体重計を2台も持っていると聞いた。
早速1台徴収した。
いやいや、仕組みを解明して量産出来ればちゃんと返す、そんなに泣かんでもよかろう。
しかし、フランドールはどうしてこんなに精密な機械をたった一人で思いつく事が出来たのだろう。
頭の中をぜひ一度、覗かせて欲しいものだ。
それから、フランドールは新たな授業を取り組んでいるようだ。
なんでも、フランドールの教え方で勉強をした子供達は皆、学習能力が高いというから驚きだ。
そして授業に音楽と運動と農業を取り組んでいるのだそうだ。
特に、音楽と運動は子供の能力向上以外にも、我が国の娯楽の発展に繋げると言っていた。
フランドールというやつは、身体測定といい、音楽や運動の授業といい、子供を通じてこの国の為にどれだけ貢献するつもりなんだ。
実際、学童院で行われたリレー大会というものは非常に大きな盛り上がりを見せ、大人達が行う陸上競技大会にまで発展した。
しかしその日、儂は公務のため他国へ渡らなければならなかった。
悲しかった。
どうしても儂も大会を見たくて、全力を尽くして公務を早期に終わらせ、何とか3日目の決勝大会だけは見入る事が出来た。
今までの人生で一番本気で公務に取り組んだかも知れん。
そしてようやく見ることが出来た陸上競技大会というものは、互いに人間の限界を競い合う本気の戦い。
一切血を流す事なく勝敗を決め、選手も観客も一体になって熱くなる。
なんとも楽しいひと時だった。
あのメダルを貰えた者達の誇らしそうな顔、とても良い笑顔だった。
この大会を開催した陸上競技場の殆どをフランドールが作り、競技の考案もフランドール、スポンサーとの交渉や必要な道具の準備まで何もかもフランドールが主導で行ったと聞いた時は、遂にここまで来たか、と驚き以上に感動すら覚えた。
これ程この国に貢献したのだ、何か褒美を取らせないとな。
そう思っていた矢先、国外から輸入した豆を使った飲み物とお菓子をまた新たに発明していた。
そのどちらも、素晴らしいことこの上ない!
コーヒーという飲み物は、香ばしく芳醇な香りと深く味わいのある苦味、更には眠気を覚ます効果があると言う優れもの。
公務に追われる大臣達にひどく好評で、王宮では儂が嗜好品として飲むより、大臣達の眠気覚ましの薬として飲まれていた事の方が多かった。
というか好評すぎて、公務に追われ疲れていたとき以外は、儂ですら中々飲むチャンスがなかった。
しかしそれ以上に手に入らないのが、チョコレートという甘味。
カリッとした食感かと思えば、口の中に入れた途端とろける舌触り、甘く少しほろ苦いコクのある味と、全身で感じるほどに豊かな香り…
一度食べてしまうと二度と忘れられない、忘れることが出来ない、それがチョコレートの正体だった。
そんな素晴らしく美味しく、希少で手に入れる事が中々出来ないチョコレートを、ロナウドはなぜか食べずに買い込んでおったのを見つけた。
理由を聞いたところ、「フランをお茶会に誘うための準備をしている」のだそうだ。
そういう事なら、儂も協力しようじゃないか。
フランドールの為だ、儂の分のチョコレートもお茶会で使いなさい。
なに、大丈夫だ、別にやせ我慢をしているわけじゃないぞ。
その代わりと言ってはなんだが、また饅頭を作っておくれ。
それで当面を凌いで見せようじゃないか。
い、いや、お前の饅頭が世界で一番美味しいよ、ロナウド。
フランドールの勢いは、止まることを知らない。
フランドールの力がもっと発揮できるところはないだろうか。
そして儂は思いついてしまった。
早速アーノルドとミリアンを呼び出して告げる。
「フランドール嬢に爵位と領地を与えようと思っておる。」
二人とも驚いておったわ。
そりゃ、たった7歳の子供に、功績を讃えたうえでの褒章として、爵位と領地を与えるだなんて、前代未聞だ。
だが、これがもし成人が行った事だとするなら?
全く問題がない。
ただ年齢が若いというだけで、与えられるべきものを与えられないなど、あってはならん。
そして、フランドールの作る領地を見てみたい。
二人を説得し、どうにか褒賞させるよう仕向けた。
そしてフランドールも、男爵位と男爵領を受け取ってくれた。
さあ、どんな領地になるか、楽しみだ。
早速、やり遂げてしまった。
ラーメンという汁麺を作り、男爵領の名物品にしてしまった。
忙しい公務の合間を縫って、アーノルドとラーメンを食べに行った。
海の幸で取れた出汁を使ったスープに、細く切られた麺。
透き通ったスープに顔を近づけると、磯の香りをたっぷり含んだ湯気を顔いっぱいに浴びた。
麺をすすれば、コシのある艶やかな麺と一緒に、あっさりとしていながら深みのあるスープが口いっぱいに注がれる。
息をするように次から次へと麺をすすり、気づけば器は空になっていた。
なんと美味かった事か。
このラーメンの汁は、漁師が捨てていた海藻で作ったそうだ。
フランドール、恐ろしい子!
更には、ラーメンの噂を聞きつけた者達のために宿泊施設を建設、水着という服と海水浴という遊びまで発明していた。
家族で海水浴、本当に楽しかった。
夏のいい思い出になったよ。
しかし儂には公務がある、もう帰らねばならぬ。
ロナウド!週7で通うとか、ズルイぞ!
あ、いや、何でもない、楽しんでくれ。
フランドールと素敵な夏の思い出を作って、その想いを伝えるのだぞ。
そして絶対に嫁にもらっておくれ。
国王陛下はカレーを食べていないので、カレーの食レポはありません。





