48 公爵令嬢はチョコレートを作る
さて、パルプを発酵させて1週間、更にそれを魔法で乾燥させて水分を抜き、水蒸気でカカオ豆を殺菌後、焙煎が終わり、いよいよチョコレート作りに取り掛かる。
ついに始まる気の遠くなる工程、意を決していざ出陣!
まず始めに、焙煎したカカオ豆から外皮と胚芽を取って、カカオニブと呼ばれる状態にする。
量が多いので、リッカにも手伝ってもらった。
次に、カカオニブをすり潰していくんだけど、俺の時はこれをフードプロセッサーでやった。
でも、この世界にはそんな物ないからコーヒーミルでやろうとしたんだけど、コーヒー豆より硬くてそのままだと挽けなかったから、ちょっと砕いてから入れていった。
小さく砕いたカカオニブを温めながら更に粉々にしていくんだけど、俺の時これを湯煎しながらすり鉢で砕いてたから、めちゃくちゃ大変だった。
なのでもう、錬金魔法で少しでも楽をしよう。
手動のボールミルを作って、火属性魔法で温めながら潰すことにした。
超うるさい。
カカオニブの油分は50%以上、続けていくと段々とペースト状になっていく。
すり鉢の時よりは時間が短かったけど、それでも結構時間がかかった。
こうして出来上がったペースト状のものがカカオマスと呼ばれるもの。
このカカオマスを二つに分けて、一つは圧搾してココアバターとココアケーキに分ける。
チョコレートに使うのはココアバターの方。
ココアケーキは粉砕してココアパウダーにすれば、砂糖やミルクと混ぜてホットココアにしたり焼き菓子に使ったりできる。
二つに分けたカカオマスのもう一方に、ココアバターと砂糖を入れてよく混ぜ合わせて、チョコレートドゥと呼ばれる状態にする。
甘さの確認としてちょっと味見。ワクワク。
…まだ苦い、さっき結構砂糖入れたと思ったんだけど、足りないか。
砂糖を追加、味見、の繰り返し。
うん、いい感じ。
はぁ〜、これだよこれ、私の求めているものとはまだまだ程遠いけど、だいぶチョコレート感が出てきたよ〜。
リッカはまだダメ、せっかくだしちゃんとした完成品を食べさせてあげるから。
文句は言わないで、完成品を私より先に食べていいから。
よし、納得してくれた。
とは言っても、この時点ではまだザラつきがあって滑らかな舌触りじゃないから、更に細かく潰していく。
さあ、ここからが地獄の始まり。
味を整えたチョコレートドゥを精錬していく。
本来この工程、お店では半日から3日間程かける工程なんだと!
出来るか、そんなもん。
なので、大幅に時間を短縮して50分(地球時間で約84分)。
そして、精錬用のコンチェと呼ばれる機械も錬金魔法で作ったよ。
もちろん自動は無理だから手動の物を。
リッカと交代しながら、ただひたすらずーっと混ぜて混ぜて混ぜて混ぜて、次の工程へ。
テンパリングと呼ばれる、溶解温度、下降温度、調整温度の順にチョコレートの温度を変えていって、ココアバターを結晶化させていく工程。
スイートチョコやミルクチョコ等種類で温度が違うらしいんだけど、俺が作った時の物は50度、28度、31度だった。
この日のために予め作っていたものがこちら、温度計。
作ってたんならもっと他の事で使ってろとか言うの無しね。
火属性魔法で温度を調節させて、テンパリングができたら、型にチョコレートを流し込んで、固まるまで放置。
あぁ、固まるのが楽しみだなぁ…
そして、固まったチョコレートを型から取り出したら、完成!
つ、ついに出来た!
チョコレートが完成した‼︎
わ、分かってるって、リッカから食べていいから、ほら。
パクっ
「なっ………」
…おーい、リッカー?
リッカも固まった。
じゃあ次は私の番ね。
あぁ、この瞬間をどれだけ待ち望んだ事やら…
パクっ
っっっっっっキターーーーーーーーーーー!
な、なんて美味しいのっ!
はぁぁ、今日の苦労が全て報われたわっ!
「なんて美味しい食べ物なんですか‼︎
こんなに美味しい食べ物、生まれて初めて食べました!
はぁぁ、今日の苦労が全て報われたわっ!」
…リッカがやっと起動したようだ。
でも分かるわっ、この美味しさ、意識がなくなってしまいそうな程だって事も納得よ!
「このチョコレート、結構多めに作ったけど、お父様やお母様には一つずつだけ味見してもらって、残りは私達で食べましょう!」
「えっ、いいのですか⁉︎」
「いいじゃない、この位。
私達がこんなに頑張ったんだから、これくらい許される行為だわ!
いいこと教えてあげましょう、このチョコレート、3日間ほど寝かせると、カカオの風味が増して更に美味しくなるのよ!」
「ええぇっっ⁉︎
こ、これ以上美味しくなってしまうんですかぁっ⁉︎
わ、私、食べたら気絶してしまうかもしれません…」
「楽しみよねぇっ、うふふふふふふふ。」
「お父様、お母様。
私、カカオで凄いものが作れたんです!
是非食べてみてください!」
「この小さな黒い粒がそうなのかい?」
「はい、チョコレートと言います、食べるとビックリしますよ!」
「へえ、これがあの大きな木の実で出来た食べ物なのね。
では、頂くわ。」
パクっ
「こ…これは…
なんて美味しさなんだ⁉︎」
「この香り、この口溶け、そしてこの味…
非の打ち所が全くないほど素晴らしいわ!」
「フラン!このチョコレートはもうないのか⁉︎」
「あの大量のカカオから、たったこれだけしか作れなかったの⁉︎」
「全部使ったわけではありませんが、コレが完成するまでに結構試作として食べてしまったので…」
「あぁ、なんて事だ!
たった一粒しか食べられなかっただなんて…」
「ねえ、もう一度このチョコレートを作ってくれない?」
「作れますが、工程がかなり大変で、時間もかなりかかってしまうんですよ。」
「そんな…
あぁ、こんな事なら私も一緒にチョコレート作りに参加していればよかった…」
「母も手伝いますから、もう一度、いえ、何度でもチョコレートを作りましょう?」
ちょっとリッカ、言わないでよ?
なんでそんな険しい顔をするの?
「申し訳ございません!旦那様!奥様!
実はまだ、私チョコレートを持っております!
お嬢様が、二人でとても苦労して作ったのだから、一つずつお二人に食べていただいて、残りは二人で分けましょうと!」
「なんで言っちゃうの⁉︎」
お、お父様、お母様…今まで見たことのない顔してらっしゃいますよ…
「なぁ、フラン…
だったらなぜ最初からそう言わないのだね?」
「魔法の訓練で家中の不用品を母に燃やさせたり、実験で母の大好きな庭を破壊したり、そういったことは怒りはしても許しています。
でも、自己保身の為に嘘をつく事は、何があっても許しませんよ…」
私の分のチョコレートを半分持ってかれた、ツライ…
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