47 公爵令嬢はコーヒーを作る
俺が昔「カカオ豆から作るチョコレートキット」でチョコレートを作ったことがあったんだけど、めっっっっっちゃくちゃ手間が掛かったのを覚えている。
しかも、チョコレート作りに文明を使ってなお非常ぉぉぉに面倒だったのだ、全て手動のこの世界でどれだけの手間と時間が掛かるのか、想像してみたらちょっと目眩がした。
それでも私、チョコレート食べたい!
日本のお菓子の半分はチョコレートで出来ていると言っても良い程、前世はチョコレートが溢れていたんだ。
あの甘くてほろ苦く口溶けのいい味わい、俺の記憶の中だけでもあんなに美味しいんだ、食べる以外の選択肢なんてない‼︎
という訳で、丁度学童院が春休みに入ったところだし、チョコレート作りに取り掛かろう。
まずは、輸入したカカオポット(カカオの実)からパルプと呼ばれる実の部分を取り出して、それをバナナの葉で包んで発酵させる。
発酵箱と呼ばれる箱に入れても出来るそうなんだけど、ただの木箱でいいのかな?
試しにそっちもやってみる。
この状態を1週間。
3日目以降は毎日攪拌。
…発酵出来るまでする事が殆どないし、先にコーヒー作ろう。
コーヒーの実は、現地で精製してもらったものを輸入した。
精製方法は、乾式・湿式両方試してもらってて、より美味しい方で今後精製してもらおうと思っている。
なので、今手元にあるのは2種類の生豆。
まずは生豆の洗浄。
生豆に付いているホコリやシルバースキンと呼ばれる薄皮を、豆を研ぐように洗う。
ここまではいい、ここからが問題。
まず一つ目が焙煎。
焙煎って、コーヒーの味を決めるメチャクチャ大事な工程なんだけど、俺、コーヒーの焙煎した事ないんだよ。
ぶっちゃけ、乾式湿式とか言ってるレベルじゃないくらい重要。
生豆の水分量、陽気、湿度なんかで、焙煎の時間が変わってくる職人技だ。
とりあえず、直火焙煎のやり方は動画で見た事あったから、それっぽくやってみよう。
手網の中に生豆を入れて豆が溢れないように蓋をする。
次に、炎から15センチくらいのところで網をしっかり振りながら炒る。
焼きムラができないように炒ってたら、色が段々茶色くなってくる。
そこから更に炒っていくと、パチパチと弾ける1ハゼと呼ばれる音がしてくる。
更に炒ると、今度はチリチリと鈍い2ハゼと呼ばれる音が聞こえてくる。
ここまで炒ると、コーヒーの香ばしい匂いがしてくる。
この状態からが、焙煎の度合いを決める大事なところらしい。
深く炒る程酸味がなくなり苦味が強くなるんだけど、どこまで炒れば良いのか分からないから、色味で判断。
よく見かける焦げ茶色のコーヒー豆の色になったら、火から下ろして急いで団扇で冷却。
荒熱が取れたら、豆を完全に冷まして焙煎完了。
さて、次の問題点、豆挽き。
豆の大きさの調節や統一性、熱を加えないように砕いていく等、ここも味を決める大事な工程らしい。
そうは言っても、俺基本コーヒーはインスタントかコンビニの100円コーヒーしか飲まなかったから、挽き方のこだわりとかよく分からん。
とりあえず、錬金魔法でコーヒーミルをつくって、ドリップコーヒーでよく見かけるくらいの大きさに砕いてみよう。
最後の問題点、コーヒーの入れ方。
ドリップをした事がない訳じゃないけど、ペーパードリップでポットのお湯を直接適当に入れてただけだから、美味しいコーヒーの入れ方とか全然こだわった事なかった。
…俺、コーヒー割とよく飲んでたはずなんだけど、コーヒーの事何にも知らねぇなぁ。
この世界じゃペーパードリップは難しいし、どうせなら理科の実験みたいで面白そうなサイフォン式でやってみよう。
ろ過布を洗ってしっかり絞って、広げてシワを伸ばしたらろ過器にしっかり取り付ける。
ろ過器の鎖を下にしてロートに入れて、ロート先に鎖を引っ掛けたら準備完了。
予め温めたフラスコに出来上がりの2割程多いお湯をフラスコに入れて、火にかける。
フラスコのお湯が沸いたら、一旦火元から外して、ロートにコーヒー粉を入れて、フラスコにロートをしっかり差し込んだら、火元に戻す。
お湯がロートに上がってきたら、60秒間火にかけてヘラで粉をかき混ぜてお湯を浸透させる。
60秒経ったら、火を切ってもう一度攪拌。
コーヒーが完全に落ちたら、ロートを外してコーヒーをカップに注げば、コーヒーの完成。
出来立てのコーヒーを飲んでみる。
んー、苦い。
でもまあ、コーヒーってこんなもんじゃないのかな。
喫茶店のマスターとかコーヒーにこだわりがある人からすれば、テキトー過ぎて叱られそう。
まあ、この世界にコーヒーを知ってる人いないし、良い香りだから大丈夫だと思う。
後ろで見ていたリッカも、コーヒーの香りを気に入ったようだ。
…最近、作業に集中し過ぎで、リッカの存在すっかり忘れてた。
「リッカ、飲んでみる?」
「良いですか?
是非、戴きます!
この飲み物、とっても良い香りがしますねー。」
ゴクリ。
「…苦いですね。」
「そうね、そういう飲み物なの。
ミルクと砂糖を入れると、飲みやすくなるわよ。」
砂糖とミルクを入れてあげた。
ゴクリ。
「わっ、すごく飲みやすくなりました!
苦味の中にミルクのコクと砂糖の甘みが調和されて、飲み込んだ後味の香ばしさがとても美味しいです!」
良かった、ズブの素人相手なら、適当さも誤魔化せるようだ。
「この飲み物、飲むと眠気が覚める効果があるの。
だから、小さい子供はあまり飲まない方がいいそうよ。」
「…お嬢様、さっき飲んでましたよね。
大丈夫なんですか?」
そういえば。
「…夜眠れなかったら、その時は何か実験でもして時間を潰すから大丈夫よ。」
「全然大丈夫じゃありませんね。」
コーヒーを禁止されてしまった。
とりあえずお母様にもコーヒーを提供。
「あの赤い木の実が、こんなに香ばしく香り豊かな飲み物になるなんて、驚きだわ。
それにこの飲み物、甘いお菓子と相性がとても良いのね。
今度のお茶会で早速使わせて頂くわ。」
お母様も気に入ってくれたようだ。
「これは南東隣の国の方には教えたくないわね。
どうやってコーヒーを独占しようかしら。」
そこまで気に入ってくれたのですか。
この日、コーヒーの存在を知ったお父様と、コーヒーをいたく気に入ったお母様は、夕食後に何杯もコーヒーを飲んでしまい、私とともに夜眠れなくなってしまった。
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