46 公爵令嬢は農園を作る
陸上競技大会があった後、スポーツギルドなるものが発足した。
各競技表彰台に乗った人達は、貴族や商会のスポンサーが付いて専属の選手兼ハンターになった人が殆どだった。
そして、他領の領主達はフィアンマ公爵領に続けとばかりに陸上競技場を作り始めたそうだ。
ただ、他所の場合グランド整備は土属性魔法で何とかなったとしても、観客席や選手控え室なんかは大工さんに建造してもらわないといけないから、フィアンマ公爵領の時程早くは造れずに冬が来てしまった。
てか、競技場建てたの私だし。
設計図見ながら、建築士さんの意見を聞いて、魔法で一人で建てたんだよ?
たったの5日間で造り上げたんだよ?
大工さんに「俺たちの仕事がなくなるから、今度からはやらなくていいよ」と言われたけど、二度とやるか!
建築資材調達と建設の殆どを私一人でやったこともあって、建設費はビックリするほど安く付いたんだけど、私としては大工さんや資材屋さんの仕事を奪ってまで魔法を使いたいとは思ってなかったからね。
言い出しっぺだったから今回は私が造ったけど、次からは本職の方達にちゃんと任せます、しんどいし。
そして、大会運営費が大黒字になったこともあって建設代と合わせて私自身に報酬がめちゃめちゃ沢山入ってきて、私の懐は暗黒化した。
もしかしたら、今年の長者番付に載るかもしれない。
その予算全部使いきるつもりで、私はある事を計画している。
8月に入り、季節は真冬。
私の計画は着々と進んでいる。
出来れば冬の間に完成させたいと思っていた温室ガラスハウスが完成した。
この温室ハウス、作った場所はフィアンマ公爵領内の農業地区。
結構たくさん建てたんだけど、それでも今後足りるか分からない。
で、この温室ハウス、湿度や気温を一定に保たないといけないから、コストがかなり嵩む。
でも、それすら賄える程の予算が今の私にはあるのだ。
そして、これが上手くいくと今後はそれ以上の利益を得るはず。
この温室ハウスで育てたいのは、カカオ。
元々、カカオはこの国にはなくて、南東隣の国に生えていた。
そこでは、カカオは原住民がパルプと呼ばれる状態のものを食べる事もあるそうだけど、近くにバナナが一緒に生えているので、わざわざカカオを食べることはそんなにないんだと。
このカカオの存在と現状の価値を聞いた時、心が踊ってしまった。
早速カカオの木と苗と種を仕入れて、育てることに。
今回は植物魔法使いのダニエル先生の出番はなし。
カカオはこの国にないものだから、ちゃんと自分たちで育てないと今後に繋がらない。
なんせ、カカオの生息条件てかなり限られていて、上手く育てられるか半分賭けのようなものなのだ。
あと、カカオと一緒に仕入れたのが、エリスリナスという木。
カカオにはシェードツリーと言って日除けの役割をしている木が必要なんだけど、この木は根っこで窒素を固定するバクテリアが育って、カカオの肥料としての役割と、日除けの役割両方を兼ね備えている。
こうして、土壌、気温、湿度、日照時間、水やり等条件をしっかり整えて、育成開始。
上手くいってくれるといいなあ。
カカオの育成と同時並行で、実は南東隣の国の現地の方とカカオの輸入取引をしていた。
もし育成に失敗しても輸入で何とかなればいいと思ったし、カカオの価値の低いうちに仕入れ条件を確定しておけば、今後価値が上がっても安定して取引出来るからね。
という事で、ここは交渉術の得意なブリキッド商会筆頭のお母様に全任せ。
私だって今までブリキッド商会にめちゃくちゃ貢献してるんだから、この位はやってもらわないと。
あと、私はカカオと一緒に別のものも探していた。
そして、同じく南東隣の国の山岳地帯で遂に見つけてしまったのだ、コーヒーの木を。
しかもこのコーヒー、現地の人は実がほぼ無いからと観賞用として扱っているのだそう、キタコレ!
なので、これも現地の方と取引をお願いした。お母様が。
で、コーヒーも育てるのに条件の多い植物なんだけど、これも温室ハウスで育てる事にした。
カカオと同様、結果が出るのは当分先。
暫くは輸入物のカカオ豆とコーヒー豆を使う事になるだろう。
その前にまずは、その豆で作るチョコレートとコーヒーを形にしないと。
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