45.5 日本人男性は公爵令嬢と会話する
「こうして面と向かって話し合うのは初めてね。」
「そうだな、そういう意味では初めましてだな。」
「テルユキが私と一緒になって、毎日がとても充実して楽しいわ。
出来ることが増えて、私自身この世界の事をどんどん知ることが出来るんだもの。」
「そうだな、俺も、この世界では経験した事がないものが沢山あって、「わからない」事だらけで今だにワクワクしてるよ。
それに、日本の知識や文化が少しずつこの世界に広がっていくのを見ると、「俺がいる」って実感できるしね。」
「その事なんだけど、ちょっとテルユキでしゃばり過ぎでない?
もう、この国の殆どの方は私をただの6歳児として見ていないわ。
お父様ですら、時折自分より歳上に見えると仰ってたのよ?」
「行動してるのはフランだろ、自業自得だ。」
「そんな事ないわ。
テルユキと一緒になってから、私は叱られる回数が物凄く増えたもの。
貴方、幼少期ずっと叱られてばかりだったでしょう?」
「それはそうだけど、フランだって俺と一緒になる前からよく叱られてたじゃんか。」
「叱られる内容の度合いが全然違うわ。
私、土属性魔法のイメージの勉強だからと言って、全身泥だらけになって遊ぶだなんてはしたない事、今までした事なかったもの。」
「…あれだけ楽しんでてよく言うよ。」
「た、確かに、初めての泥遊びはとっても楽しかったけど…」
「仕方ないだろ、俺の時に出来なかった事がここでは沢山できるんだから、我慢しろと言われる方が無理がある。」
「だからと言って、私が段々公女として対応されなくなるのは、どうかと思うわ。
お兄様や国王様は私のする事を笑って見てくださるけど、女性として見られなくなるのはとても哀しいのよ?」
「多分大丈夫だって、同年代の子達はフランのこと女友達だと思ってるだろ。」
「言い方が適当にも程があるわ…
私の事を対等に見てくださるのは、今やロナウド王子しかいないもの。
貴方が人付き合いが苦手で友達がいらっしゃらなかった事が、私に影響しているとなると、とても不愉快だわ。」
「なっ…
さっきから言いたい放題言いやがって、じゃあ俺も言わせてもらうけど、お前何であんなに運動も音楽も出来ねえんだよ⁉︎
いい笑われ者じゃねえか!」
「し、知らないわよ!
私だって、好きで運動や音楽が苦手になった訳じゃないもの!」
「思うように身体が動かないってだけで、陸上競技の説明があんなに難いとは思わなかったよ。
体育の時の準備体操のストレッチも、めちゃくちゃ身体固過ぎてちっともストレッチになってねぇじゃんか。
人の事言えないけど、俺あそこまで出来なくはなかったぞ。」
「私だって、イメージと体の動きが全く一致してない事に違和感を覚えるくらいビックリしてるわ。
あんな欠点があるだなんて、思っても見なかったのよ。
ま、苦手なこともあるって事は、私も普通の人間だって事よ。」
「出来ることと出来ないことの差が、驚くほどあるのな。」
「さっきから私の出来ない事ばかり指摘してくるけど、人付き合いと芸術センスは私の方があると思うわ。
特に、人間関係に関してはね。」
「…そこは否定出来ねえ。
あと、センスがあるのも認める。
成認式の時のドレスだったり、絵本だったり、陸上競技大会の時のチラシだったり、アレは俺より優れてると思うよ。」
「やっと褒めてくれたわね。」
「別にお前を見下してた訳じゃないから。
多分フランの方が頭もいいしよ。」
「そこはテルユキの知識あってこそよ。」
「いやいや、日本でこんなに賢い幼女なんて、俺見た事ないから。
俺、フランと一緒になって、いや、フランが一緒で良かったと思ってる。」
「…それは私も同じよ、テルユキが一緒で良かったわ。」
目が覚めると、見慣れた広くて高い天井があった。
少しも疲れの溜まっていない身体を起こして、ググッと伸びをした。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう、リッカ。
朝の支度をお願い。」
「かしこまりました。
すでに用意は出来ております。」
専属侍女のリッカロッカといつものやり取りをすませ、顔を洗って、服を着替えて、髪を整えてもらう。
これが私の日常。
そして、今の俺の日常でもある。
あれは夢だったのか。
今まで私と会話をした事はなかった。
と言うか、自分に向かって会話するとか、変な感じするししようとも思わなかった。
お互いの思考が分かるから、する必要もないと思ってた。
でも、改めて会話できて良かったと思う。
要所要所で馬鹿にされてた感は否めないけど。
さて、今日も俺は第二の人生を満喫しようじゃないか。
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