89 公爵令嬢はお茶会を開く
長期休暇も終わったことで、溜まりまくった仕事を全力で消化していた。
いくらアデン達が代行してくれていたとはいっても、領主の承認や私が確認しておかなきゃならないものも沢山あるので、完全に任せ切りにはできない。
お呼ばれしているお茶会や夜会も山ほどある。
厳選するにしても、全く行かないわけにはいかないし、ロナウド王子の婚約者として招待されているものは、ロナウド王子と一緒に行かなきゃならない。
それに、休暇中に思いついた事が山ほどある。
着せ替えショーで試着した服を、この世界の実用的な形に変えて商品にしたいし、お店にミシンを作りに行かないと。
それと、養蜂所を作って、蜂蜜の安定供給をしたい。
あ、プリンとかの蜂蜜スイーツのレシピを、商業地区のお店に教えに行こうかな。
あと、今年の秋祭りの準備もそろそろ今詰めていかないと。
あー、する事多いなぁ!
「ねぇ、今度フラン主催のお茶会を開く事になったのだけど、どんな催しが良いかしら。」
どうかしら。と言われても、どうして本人抜きでその話が進んでるのですか、お母様。
「仮面舞踏会以降、貴女主催のイベントを何かして欲しいという声が止まないのよ。
責任取ってちょうだい。」
なんちゅう責任転嫁!
それなら再来月に男爵領で秋祭りがあるから、それに呼べばいいじゃんかよ。
「もう、そういうのではなくて、貴族のイベントをして欲しいって言ってるの。
壊さないのであれば公爵家の庭を使って頂いても良いから、来月の開催までに用意しておいて。」
盛大に無茶振りかましてきたな!
そりゃあ夜会やお茶会等の催事は、貴族の力量を測る方法のひとつではあるんだけど、どうしてうちの両親はこうも無理難題を私に持ちかけてくるのだろうか。
こちとらまだ十歳だぞ。
他の大人に出来ない事を、幼女にさせるなよ!
うへぇ、どうしよう……
なーんにも思い浮かばない……
とりあえず気晴らしに仕事をするとしよう。
今は王都に行くために公爵領に寄っていた。
ミシンの使い心地を確認するついでに、ブロッサム商会で情報収集しよう。
うわぁ、金持ち向けのお店なのに、相変わらずお店混んでるなぁ。
アクセサリー系は人気すぎて、店頭にはサンプルが並んでるだけ。
ドレスは、最近ミシンを導入させてから随分と量産出来るようになったみたい。
お針子に聞いたら、使い勝手も良いらしい。
あと、私がデザインした地球の民族衣装風ドレスが結構売れているとのことで、よかったよかった。
ただ、あれだけ売れる気配がないらしい。
うーん、まぁ他のに比べるとデザインが特殊だしねぇ……
結構力作だし、むしろ一番好きなんだけどなぁ。
閃いた!
次のお茶会のアイデア!
でも、これ来月開催となると相当準備するものがある!
急いで準備しないと!!!
準備やらなんやらしてたら、あっという間にお茶会当日になっちゃうもんだ。
かなりギリギリだけど、何とか間に合ってよかったよ。
私とお母様は招待客をお出迎えしている。
その格好は、着物。
そう、リッカやレベッカちゃんに不評だったあの着物を来ている。
髪も、和服に合うように結って、つまみ細工や玉の着いた簪や櫛で飾り付け。
ペンダントやイヤリングは付けず、着物ならではのうなじの色っぽさを演出。
帯や帯締めで色彩コーディネート。
足袋や下駄もしっかり履いてます。
「ようこそ、本日のお茶会へお越しくださりありがとうございます。
招待状でもご案内した通り、皆様の衣装もご用意しております。
これから着付けを致しますので、どうぞこちらへ。」
そう、私とお母様だけでなく、招待客の着物や髪飾り、履物も全部用意したのだ。
全員分の一式作るの大変だったァー。
着付けも、当日スムーズに出来るよう使用人に着付けの練習もめいっぱいさせていたんだよ。
そのおかげで、時間をかけずにお着替え出来たご様子。
元々コルセットでガッチガチに固めているドレスを普段からよく着ている淑女の皆様、着物の締め付けにも特に苦労する事はなさそう。
まぁ、歩き方や所作なんかは、ドレスと全然違うのだけれども。
「このドレス、とても変わった形をしているけど、とても綺麗な模様の布を使ってらっしゃるのね。」
「ミリアン様やフランドール様を見た時、あまりの美しさに見惚れてしまいましたわ。」
「あら、貴女もこのドレス、とてもお似合いですわよ。」
「ご夫人こそ、髪飾りとドレスの色が、髪と瞳の色にとても合っていらっしゃいますわ。」
「このドレスを着られて、私幸せです。」
お店に展示してた時は、誰一人と買ってくれなかったくせによぉ。
やっぱり、着てる人を見て、実際に自分で着てみて、良さがわかって来るのかな。
だとしたら、着物は私の戦略ミスだったわ。
まぁこれで、多少着物の認知度が上がってくれれば。
だがしかし、今回の着物一式は貸し出しだからね。
帰る時にきっちり全部返してもらうよ。
あ、皆様お買い取りですか、ありがとうございまーす。
歩き方を教えて、なれない下駄でゆっくり庭へ案内する。
そこに用意していたのは、日本のお茶会。
ただし、茶道とか本格的なのは面倒なので、お茶屋さんとかによくある『赤い布が被せてある長椅子でお茶とお茶菓子を楽しむ』スタイル。
日除けに大きな番傘を立てて、更に雰囲気を出した。
純洋風の庭に和風のお茶会場……違和感あるけど見逃してね。
本日のお茶は、紅茶ではなく煎茶。
お手製の急須と湯呑みでお茶を飲んで頂く。
お茶請けに用意したのはカステラ。
お皿に敷紙を敷いて、カステラを乗せようじを添える。
……ちょっと会社とかでの接客対応っぽくなっちゃったけど、まぁいっか。
このお茶会全部が、めちゃくちゃ忙しい中で私が一ヶ月かけて作り上げたもの!
情報は俺だけど、それを生かせたのも私の才能!
ホントに頑張ったんだから、皆んな全力で私を褒めて!!
「このお茶、とても色が薄いので味も薄いのかと思っていましたけど、渋味や甘味があって、後味が爽やかですわ。」
「この甘みの強いケーキ、このお茶にとても合いますのね。」
「いつもとは違うお茶会ですけど、厳かでありながら気軽さもある不思議な雰囲気だわ。」
「私も是非、このお茶会をしたいですわ!」
ありがとうございまぁーーーす!!
日本風お茶会は大成功に終わった。
私のお茶会は評判を呼び、着物の認知度も好感度も需要も爆上がり。
そして着付け師の需要も盛大に上がった。





