86 公爵令嬢は休暇を過ごす 1
私が主催した仮面舞踏会は、大盛況だった。
身分の差をなくす無礼講の場、仮面で仮装してパーティーに参加、という非日常感がかなり受けたらしく、他でも仮面舞踏会をやりたいという声が出ている。
ただ、本場じゃ仮面舞踏会が原因で風紀が乱れたりトラブルが発生したりってのがあるから、節度をもって実行して欲しい。
あと、私が作った化粧品は、正式に商品化する事になった。
そして、小さいながら商会を作った。
その名も、ブロッサム商会。
どこまで桜が好きなんだよ、と言われそうな名前なんだけど、気に入ってしまったんだから仕方ないでしょうが。
取り扱うのは、化粧品とドレス、装飾品。
ちゃんと職人や商人を雇って、材料の仕入れから加工、販売の全工程をしている。
錬金魔法でドバドバ作ったりしてない。
男爵領だと王都から離れすぎて不便なので、いっそ王都に店舗を構えた。
結果、生産が間に合わなくなった。
いつの時代だって、お金を落とすきっかけは女性なんだね。
「フラン様、ここのところ働きすぎではないですか?」
ドレスのデザイン画を描いている私にリッカが声をかけてきた。
うーん、そうは言っても、やりたい事とやらなきゃいけない事がいっぱいあり過ぎるんだもん、仕方ないじゃん。
もちろん、優先順位はしっかり付けてるし、無駄にならなさそうな事をやってるつもりだよ?
「それが全部仕事に繫がってちゃ、お休みになれないじゃないですか。」
リッカだって、休めと言うのに休まないじゃない。
私専属侍女をブラック業種にはしたくないんだけど。
「フラン様が休まないからです!
これじゃあお互いに身体が持ちません!」
大丈夫だって!まだまだ若いし!
「もう一度死ぬおつもりですか?」
脅し文句が恐い恐い!
分かったよ、明日は一日休むから。
あ、駄目だ、明日は商会に出向いたあと、中心街に向かわないといけなかった。
明後日は会合があるし、帰ってすぐに各地区の視察と報告書の確認もある。
あ、新しく出来る商業施設にも行かないと!
「フラン様、お休みする気ありますか?」
ひぃぃぃ!
キリのいい所までしたら、丸一日ちゃんと休むから!
「一週間くらい休んでください。」
そんなに休んでも、する事がないよ。
「では、私も一緒に一週間お休みしますので、ご一緒して頂けますか?」
なるほど、それなら一般的な休日の過ごし方が分かるって訳ね。
私達だけ休むのは駄目だよね、レベッカちゃんにも休みをあげないと。
「私もフランちゃんと一緒に休日を過ごすわ!」
いいよいいよー、3人で一緒に休日を過ごそう!
「チッ」
今、舌打ちが聞こえたんだけど!?
「気のせいでございます。」
……そう言う事にしておこう。
と言う訳で、私達3人は一週間お休みを頂いた。
この世界では一週間が十日あり、各々のやりたい事をやってみようと言う話し合いをして、予定を決める事に。
まずリッカのやりたい事。
ショッピング、食べ歩き、孤児院訪問、チョコ大量買い付け。
ショッピングや食べ歩きは女性らしいなーと思うし、元孤児のリッカには孤児院訪問は実家帰省の様なものだと分かる。
ただ、真夏のこの季節に大量のチョコは溶けちゃうと思うんだけど。
次に、レベッカちゃんのやりたい事。
ウォータースライダー、手芸、オシャレ、狩り。
ウォータースライダーとは、最近リゾート地区に作った施設で、水車で組み上げた海水を使った石製大型滑り台。
今の季節めちゃくちゃ人気で、いつも混み合うほどの大盛況。
手芸、オシャレは女の子らしいし分かる、何故狩り?
「リッカさんに弓習ったから。」
いつの間に教えた?
「弓術は専属侍女の嗜みです。」
前もそんな事言ってたよなぁ!
最後は私。
新作衣装を二人に着せて遊ぶ。
「折角のお休みが、それでは仕事になっていませんか?」
注意する様な言い方しながら、ちょっとウキウキしてないかい?
「やった!どんな衣装!?
今から着ようよ!」
こっちはウキウキを隠すつもりがないらしい。
意見をまとめた結果、王都でショッピングや食べ歩きをして、孤児院訪問。
男爵領へ帰ってきて、ウォータースライダーや狩りをして、後半にのんびり手芸や着せ替えをする事になった。
まずはオシャレをしよう。
ブロッサム商会で絶賛販売中の化粧品を使ってお化粧をして、各々一番お気に入りの服を着用。
折角だと思って、3人お揃いの桜のペンダントを作って渡したところ、リッカ大号泣。
「死んでも大事に致します!」
あぁもう、せっかく化粧したのに、とんでもない顔になっちゃってる。
レベッカちゃん、リッカの顔を見て笑わない!
リッカの顔を作り直して、いざ王都へ!
とは言っても、男爵領から王都までニ日弱かかるから、途中色々な町に寄って休憩を挟みながら食べ歩き。
「私の料理の方が美味しいわ……」
そんな事言っちゃ駄目でしょうが!
「そう言う事は、公の場で仰ってはいけませんよ。」
公でなくても駄目だって、誰にも言わず心の中にとどめておきなさい!
道中、魔物を見かけたとかで、二人がいきなり狩りを始めた。
オシャレしてるのに、何やってんの?
てか、なぜ弓矢を持ち歩いてる?
大型のネズミっぽい魔物を狩った。
それ、どうすんだよ。
「隣の町のハンターギルドで売れますよ。」
持っていくのか!
結局、道中でこう言った事を4回程繰り返して、ニ日で王都にたどり着けなかった。
こう言った予定外の出来事も、長期休暇の醍醐味らしい。
まぁいいけど。





