おだんご
人間になって初めて知った、感情。
知らないことへの恐怖。
思い通りにならないことへの焦り。
何故か頭や胸がもやもやする。
これが、人間。
ところで、さっきからずっとある腹のあたりの違和感はなんだろう? これも何かの感情……?
腹を撫でていると、何故かぐーっと変な音が鳴った。
「それは空腹だね。人間は食事をしないと生きていけない」
ニャルに教えられる。
食事。確か、ニャルに音読するように言われた本にもそんなことが書いてあった。
「とりあえず、お団子でも食べなよ」
ニャルはそう言って、ピンクと白と緑の丸い玉が串に刺さった物を僕に向ける。
何だろうと思ってそれを眺めていると、もう一つ同じ物を取り出したニャルがそれを口に入れた。
なるほど。これは口に入れるものなのか。
僕も同じように、それを口に入れる。
ーーな、何だこれは!!
僕の口に、歯に、舌に衝撃が走った。
もっちりとした食感。程よい甘さ。なんだこれは! まさか、これが……これが、本に書いてあった「美味しい」という奴……!
「がう! あう! やう!」
「ニャルだよ。何だい?」
「お・だ・ん・ご!」
僕は思わず踊る。
おだんご。おだんご。おだんご!
その名前さえも甘美だ。
「お団子が美味しかった感動は伝わってきたんだけど、流石に僕の名前よりも先に言えるようになられると傷つくなぁ。お団子をあげたのはニャルだよ」
「ギャル!」
「うん、なんだかケバそうだね」
ニャルの名前は、言いにくいと思った。