正義のヒーロー
『俺は皆の笑顔を護りたいからヒーローをやってるんだ。』
そう言って、5歳にもならない私の頭を撫でてくれた正義のヒーローは5年後交通事故で呆気なく死んだ。
『僕は、出来ることなら全ての人間の力になりたいんです。』
そういい、頭を恥ずかしそうに掻きむしっていたメガネの同級生は遠い異国の地で、地雷を踏んで吹き飛んだ。
『私が先輩を守りますから!!』
元気いっぱいにそう意気込みながら言った大学の後輩の女子は、大学の教授に強姦されて殺された。
正義の味方と言う者はどうも生存確率が低いらしく、そして正義の味方になるには、自分の利害意識や、損得感覚を捨て去らなければならず、日に日に数は減る一方だ。そんなものに、自らなる正義の味方というものは本物の馬鹿だと思う
友達を、知り合いを、後輩を失い、私の周りから正義のヒーローは消えた。それはさほど重要な問題では無かったが、正義のヒーローが消えた世界は、とても暇で、とても安全だった。
けれど、今初めて知った事だが、正義のヒーローは誰かがならねばならない時があるらしく、私にとって今がその時だろう。
目の前には積み上がる瓦礫の山。人々は黒い煙に巻かれながら逃げ回り、私はその中でただ1人、目の前の化け物に睨みを効かせていた。
私は空を覆う巨大な化け物を見上げてポツリと呟いた
「俺は正義のヒーローじゃない。」
「けれど」
「俺は俺の正義がある」
「俺は、自分の正義を護るために…生きる。」
「生きてやる」
前の3人程、私はヒーローじみてないのだが、3人よりよっぽどマトモにヒーローしてると俺は思う。やはり、正義のヒーローと言うものは馬鹿ばかりだ。
だが、今はとても悪くないと思う




