申請書類
10時半。
あたしは役所の窓口で、ぼーっと待っていた。
確かに約束は11時だ。だからといって、ギリギリに来るほどバカじゃない。……と思って30分前に来たら、少々お待ちくださいと言われたまま、放置プレイ。役所って、そういうもの、なのかなー。
11時。
物腰の柔らかそうなおばあさん……と言っては失礼か。おばさまがやってきて、あたしに声をかけた。
「生活保護の申請ですね?
まずは面談になります。こちらの面談室へどうぞ。」
面談室、と言われたその部屋は、まるで取調室のようだった。
取調室に入ったことがあるわけじゃないけど。
「お母様を亡くされて、借金があって、持病があって、生活が成り立たない、というわけですね?」
「そうなんです。このままじゃ家賃も払えなくなって、追い出されてしまうのではないかと……。」
「わかりました。あなたの状態でしたら何かしらの支援はできると思いますので、こちらの書類に必要事項をご記入ください。記入が終わったら呼んでいただけますか?」
「は、はぁ……。」
何かしらの支援?
ほんとに?
こんなにあっさり?
そう思いながら、”こちらの書類”を見たら……必要事項、多すぎるんじゃない……?
住所氏名生年月日。そんなことはどうでもいい。んなことより、困窮に至った経緯、持病の発病から今までの生活手段、かかりつけシャーマンの名前。借金の借入先と借入金額。家賃、平均月収etc..
あぁ、ラクしてお金を貰おうなんて、考えが甘かったのかしら。
あたしが書類を書き終わったのは、とっぷり日も暮れようという、17時のことだった。