cry 's must
駅前のイルミネーションはまるで繁殖する微生物のようだ
うっとりと眺めるカップルたちも
目もくれず足早に通り過ぎる人たちも
回転する地球の上で朝が来て夜が来るその間の
ただ泡沫の存在
この身体に棲む細菌たちは誰を祝福するだろう
彼らの記念日はいつだろう
鶏や七面鳥はいつ生まれいつ死んだのだろう
親愛の情を注いだ者以外どうあろうが関係ないと思いながら
友情や愛情を至上のものとして声高に叫んでいる
自分の首をくくる縄を一生懸命一生懸命編んでいる人たちを横目に
チョコレートでコーティングした自尊心に砂糖をまぶして
他人を見下すための血の滲む努力で手に入れた特製のスコップで
自分の墓を一生懸命一生懸命掘っている人たちを尻目に
凍った空気に白い息を吐き
静かな祈りに火を灯す
愛のために死ぬのだ
ただ愛のために
賛美歌のひとつも歌えないままだけれど
誰かのためであって誰のためでもないただ惜しみない神の愛と
見返りを求め合いお互いの必要を確認しあう束縛の作業との間に
そっと線を引く
愛のために死ぬのだ
ただ愛のために




